太宰帥大伴の卿の宅に宴してよめる梅の花の歌三十二首
827
春されば木末(こぬれ)隠(かく)れて鶯そ
鳴きて去(い)ぬなる梅が下枝(しづえ)に 小典山氏若麿
春になると、木々の枝先に隠れていた鶯が鳴きながら、梅の下枝を飛び移って行くのが
聞こえる。
828
人毎(ひとごと)に折り挿頭(かざ)しつつ遊べども
いやめづらしき梅の花かも 大判事丹氏麿
皆がそれぞれ梅の花を折って頭にさして遊んでいるけど、梅の花はなんとも愛す
べき花ではないか。
829
梅の花咲きて散りなば櫻花
繼(つ)ぎて咲くべくなりにてあらずや 藥師張氏福子
満開に咲いた梅の花が散ってしまったら、はやくもその後を追うように、桜の花が
咲くようになっているのではないだろうか。