太宰帥大伴の卿の宅に宴してよめる梅の花の歌三十二首

 

   824

  梅の花散らまく惜しみわが園の 竹の林に鶯鳴くも      小監阿氏奥島(おきしま)

 

   梅の花が散ってしまうのを惜しむように、私の庭の竹の林では鶯が鳴いている。

 

  825

   梅の花咲きたる園の青柳を 

        蘰(かづら)にしつつ遊び暮らさな     小監土氏百村(はじしももむら)

 

   梅の花が咲いている庭園の青柳をかずらにして、一日遊び暮らそう。

 

   826 

    うち靡(なび)く春の柳とわが宿の

     梅の花とを如何(いか)にか分(わ)かむ      大典史氏大原

 

    春風になびいている春の柳のたおやかさと、我が家に咲く梅の花の高雅な趣とを、

    どのようにして優劣をつけることができようか。