太宰帥大伴の卿の宅に宴してよめる梅の花の歌三十二首

 

  815

   正月(むつき)立ち春の來(きた)らば斯(か)くしこそ 

                 梅を招(を)きつつ樂(たの)しき終(を)へめ     大貮紀卿

 

   正月になって春が来たらば、このように、梅の花を招き寄せて、充分楽しみましょうよ

  

   816

   梅の花今咲ける如(ごと)散り過ぎず

                                 わが家(へ)の園(その)にありこせぬかも    小貮小野大夫

 

     梅の花が今こんなに満開に咲いているように、いつまでも散らずに私の家の庭に咲き

   続けてほしいものだ、

 

   817

   梅の花咲きたる園の青柳(あおやぎ)

                蘰(かずら)にすべく成りにけらずや      小貮粟田大夫

 

   梅の花が咲いたこの庭の青柳は、寡(かずら)にして頭に飾れるほど充分芽吹いて

   いるではないですか