池邊王(いけべのおほきみ)の宴(うたげ)に誦(うた)ふ歌一首

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   松の葉に月は移(ゆつ)りぬ黄葉(もみじば)の過ぐれや君が逢はぬ夜の多き

 

   松の葉に月は移っていったけど、あなたは黄葉の葉のように散ってしまったわけでも

   ないのに、あなたに逢わない夜が多いことだ

 

     ※ 松 : 松と待つを掛けている

     月は移(ゆつる): 月の影が移って行くようすを、そのように表現する

     黄葉(もみじば) : 過ぐの枕詞

     過ぐれや : 散ったからか? 散ったはずもないのに

 

     なかなか解釈が難しい歌ですが、

     逢えると楽しみにしていた月見の宴に来なかった女性への、恨み節ともとれますが