太宰帥大友卿、酒を讃むる歌十三首

 

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 あな醜(みにく)(さか)しらをすと酒飲まぬ 人をよく見れば猿にかも似る

 

  ああなんとみっともなく、馬鹿々々しいことか。「酒など飲めない」などと、利口そうに振舞

  っている人をよくよく見ていると、猿に似ているではないか。

 

  ※ 日本人など黄色人種は、遺伝的に酒が普通に飲める人、飲めるけどもあまり強くない

    人、全く飲めない人が混在しています。

    現代ではこれらのことも科学的に証明されているので、飲めない人に無理に酒を飲ま

    せる行為は、ほとんどなくなりました。

    しかし、このようなことが分からず、しかも酒を飲んで全員が酔っ払うことが、人間関係

    を良くすることだと信じていた古代の人たちには、酒を飲まない人は軟弱だとか、利口

    そうに振舞っていると映ったのですね。

 

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   價(あたひ)無き寶(たから)といふとも一杯(ひとつき)の 濁れる酒にあに益(ま)さめやも

   

    仏法が説く無価の、例えようもない素晴らしい宝と言っても、それがたった一杯の濁り

    酒にまさるだろうか?決してまさりはしない。 

 

    ※ 仏教では無上の法を無価宝珠といい、無価は何にもまして貴いことを意味し、

    ここでも作者は教養の深さを見せつけながらも、酒にかこつけてひねくれて見せます。