太宰帥大友卿、酒を讃むる歌十三首
344
あな醜(みにく)賢(さか)しらをすと酒飲まぬ 人をよく見れば猿にかも似る
ああなんとみっともなく、馬鹿々々しいことか。「酒など飲めない」などと、利口そうに振舞
っている人をよくよく見ていると、猿に似ているではないか。
※ 日本人など黄色人種は、遺伝的に酒が普通に飲める人、飲めるけどもあまり強くない
人、全く飲めない人が混在しています。
現代ではこれらのことも科学的に証明されているので、飲めない人に無理に酒を飲ま
せる行為は、ほとんどなくなりました。
しかし、このようなことが分からず、しかも酒を飲んで全員が酔っ払うことが、人間関係
を良くすることだと信じていた古代の人たちには、酒を飲まない人は軟弱だとか、利口
そうに振舞っていると映ったのですね。
345
價(あたひ)無き寶(たから)といふとも一杯(ひとつき)の 濁れる酒にあに益(ま)さめやも
仏法が説く無価の、例えようもない素晴らしい宝と言っても、それがたった一杯の濁り
酒にまさるだろうか?決してまさりはしない。
※ 仏教では無上の法を無価宝珠といい、無価は何にもまして貴いことを意味し、
ここでも作者は教養の深さを見せつけながらも、酒にかこつけてひねくれて見せます。