太宰帥大友卿、酒を讃むる歌十三首
342
言はむ為便(すべ)せむ為便(すべ)知らず極(きはま)りて 貴きものは酒にしあるらし
口では言いようがなく、態度でも示しようがなくても、結局は酒に頼るしかないようだ
※ なかなか解釈の難しい歌ですが、自分ではそれなりの教養も実力もあると思っている
のに、れを認めてくれない社会に対する不満を、酒でも飲んでうっぷんを晴らそう、という
ところでしょうか。
343
なかなかに人とあらずは酒壺(さかつぼ)に 成りにてしかも酒に染(し)みなむ
中途半端に人間でいるよりも、いっその事酒壺にでもなって、ずっと酒浸りでいたい
ものだ
※ 相変わらず世の中を斜めに見た歌ですが、大変な酒好きが死に際に、「自分
が死んだら焼窯の傍に埋めてくれ。数百年もすればそれが土に戻り、やがては酒壺
に焼かれて酒が満たされることだろう」と、子供に言い残したと言う中国の故事を基に
したもので、作者の教養の深さを見せつける歌です。
と言えるでしょうか。