反歌
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三輪山を しかも隠すか 雲だにも 情(こころ)あらなも 隠さふべしや
懐かしい三輪山をこのように隠すのか。せめて雲だけでも優しい心があって欲しい。
このように繰り返し隠すということがあるものか。
右二首の歌、山上憶良大夫の類聚歌林(るいじゅうかりん)に曰く、都を近江國に遷す時に三輪
山を御騫(みそこなは)す御歌そ、日本書紀に曰く、六年丙寅の春三月辛酉の朔(ついたち)の己
卯、都を近江に還すといへり。
類聚歌林とは
文武天皇のころから以前の歌をあつめ、作者、歌作の事情を記し、同類歌を分類統一
したもので、山上憶良が編纂したとされる。