日本酒はようやく暗黒の100年を抜け出そうとしています

   

  ○ 日本酒完全復権の問題点

   ① 大手メーカーの怠慢

    ② 吟醸酒を日本酒の頂点に据える

    さすがに最近は少しづつ変わり始めましたが、それでも、蔵元を始め、流通関係者、

    消費者の間では「吟醸酒こそが究極の日本酒だ」と思っている人がたくさんいます。

    それは毎年の、日本酒の出来栄えを競う場ともいえる「全国新酒鑑評会」でも、その

    出品酒が、実質的に吟醸酒に限られていることにも表れています。

    

    ○ 吟醸酒の誕生

    昭和の初期のころ、全国清酒品評会の中から忽然として現れた吟醸酒は、それまで

    の日本酒にはなかった素晴らしい香りと、クセのない飲み易さで、多くの関係者を驚

    かせましたが、この酒がブームとなって、消費者にもてはやされるようになったのは、

    半世紀も後の、昭和も終わりのころです。

    それまではあまり人気がなく、一般にはほとんど知られていなかった全国新酒鑑評会

    が一気に注目を集める様になったのは、出品酒に金賞、銀賞などを張り付けて、一般

    にも公開をするようになってからです。

    鑑評会への関心の高まりとともに、全国の蔵元が金賞をとるために懸命な努力をする

    中から、吟醸酒の品質はますます良くなり、究極の日本酒と言われるまでになったの

    です。

 

    ○ 吟醸酒は日本酒の中の一つのタイプ

     ところが、原料の米を極限にまで磨く、選び抜かれた酵母を低温で純粋に発酵させ

     るなど、純粋性を追及する吟醸酒は、突き詰めれば突き詰めるほど、ある一点に

     収束する運命にあり、できる酒は、どれも似たようと言うよりも、全く同じ色、香り、味

     になってしまい、技術的にも限界に達しています。

    ということは、吟醸酒を究極の日本酒と決めつけると、将来、現在以上の日本酒が

    生まれる可能性は「限りなく0」と言うことになります

    2000年もの歴史を持つ米の酒(日本酒)は、時代と共にその造り方は変わり、当然

    その味や香りも変わって、それぞれの時代の人々を楽しませながら、将来的にはまだ

    まだ変わる可能性を秘める、世界的に見ても極めて特異な酒と言えます。

    したがって、吟醸という酒は、多様な可能性を持つ日本酒の、あくまでも一つのタイプ

    と見なければなりません。