まとめ
日本酒の復権を目指してもいよいよまとめに入ります。
先の記事で、純米酒を造ることの難しさは理解されたと思いますが、純米酒と本醸造酒
の決定的な違いは、モロミの最終段階にあります。
発酵中のモロミの中で進む主な変化は、米のデンプン →ブドウ糖 →アルコールという
化学的な変化です。
○ 物理的変化と化学的変化
純米酒の場合は、酵母の発酵によって、モロミの中のブドウ糖(日本酒度-)が減り、
所定のアルコール(日本酒度+)ができた時点で、モロミの中の酵母が生きたままで搾
るので、モロミの中で起きるのは、発酵という化学的な変化だけです。
一方の本醸造酒は、モロミの中にブドウ糖(日本酒度-)がまだ充分残っている段階で、
アルコール(日本酒度+)を添加して、強制的に発酵を止めなければなりません。
つまり、発酵による化学的な変化が充分に進まない段階(日本酒の度マイナス数字が
大きい)で、アルコールを加えて発酵を止めるので、最終的には物理的変化によって、
目標とする日本酒度に持って行きモロミを搾ることになります。
○ 頭が痛くなる酒
アルコールを添加して、強制的にモロミの発酵を止めるということは、まだ元気に活動し
ている酵母を、アルコールで殺すということです。
モロミの中の酵母が死ぬと、酵母の自己消化(分解)がはじまる一方、それまでモロミ
の中で順調に進んでいたブドウ糖 →アルコールの反応(発酵)も止まります。
ところが、ブドウ糖 →アルコールの反応は一気に進むのではなく、
ブドウ糖 → ピルビン酸 →アセトアルデヒド → エチルアルコール
という工程を経て進み、酵母が死滅すると、アセトアルデヒドができたところで反応は止
まってしまうため、モロミの中にアセトアルデヒドが蓄積する こととなります。
問題はこのアセトアルデヒドで、モロミの中にこれが増えると、搾った酒に木香様臭とい
う独特の不快な香りが付くだけではなく、酒に弱い人の頭痛の原因ともなるのです。
さすがに最近は聞かなくなりましたが、ひところ「あの○○居酒屋で酒を飲むと頭が痛く
なる」とか、「仲居さんに勧めても飲まない、あの店の酒はやばい」などと言われたのは、
全く根拠のない話ではなかったのです。