FIFAでは、19 才未満の子供が国境を越えて、他国のサッカー協会に登録する場合(移籍する場合)、
- 新たに所属しようとするクラブの所在地と、生活拠点とする自宅住所の距離を50km以内に規定
- 生活拠点とする自宅住所には、その国で労働許可を得て、労働をし、税金を収める親が同居しなければならない
と規定されていて、ヨーロッパ各国のサッカー協会に対して、例外なく遵守するように求めています。つまり、19才未満の選手の、国境を越えた移籍については、両親が仕事の理由で引っ越して、子供もそれについて引っ越しをする場合にしか認めないという内容です。
さて、このFIFAの規定の我々日本人に対する制限はわかりますか?てっとり早く言うと、『19才未満の日本人は、単独でのサッカー留学は認めない = サッカー協会への選手登録ができないので、公式戦への出場ができない』ということになります。スペインでは、独自の規定で、『12才以上、19才未満の子供を対象に・・・』と、このFIFA規定を運用しています。
つまり、中学生、高校生の1年間だけのサッカー留学や、中学を卒業してからの3年間のサッカー留学などは、ホントは協会への選手登録ができないため、してはいけないルールになっています。もちろん、練習と練習試合だけのためのサッカー留学ならありですが。
でも、『中学生になってからスペインに留学した』、『中学を卒業して、高校に行かずにスペインへサッカー留学』って話をよく耳にしませんか?なぜ?できないはずでは?
はい、ホントはできません。
正しい表現は、『できるけれど、結果、できなくなります』です。
理由は、以下のような構造になっているからです。
FIFAは加盟各国のサッカー協会に、ルールの遵守を求めます。各国のサッカー協会はFIFAの依頼を受け、下部組織に同様のルール遵守を通達します。日本に例えると、日本サッカー協会が、東京都サッカー協会や神奈川県サッカー協会に通達をだして、ルールを守るように依頼するのです。
スペインでも同様で、スペインサッカー協会が、各地方のサッカー協会に通達をだして遵守するように依頼します。
毎シーズンごとに、各地方のサッカー協会に所属するチームは自分のチームに所属する選手を協会に届け出て、選手登録を完了させます。
この際、本来なら通達に従い、チーム側もFIFA規定に違反していないかの確認義務が生じますが、子供の頃からチーム間移籍が当たり前の環境で、全てのチームが、子供達全員の協会への登録履歴、親との同居状況、親の生計状況や労働許可証の有無といった内容を把握して、チーム側でスクリーニングして協会に登録の手続きをするのは不可能です。
また、チームにとって、このチェックを厳しくすればするほど、手間がかかるばかりでなく、収入も減るダブルパンチなので、どのチームもルールを守ることに非常に消極的なのです。
そのうえ、仮に協会で登録選手がFIFA規定に違反していることが発覚しても、チームには罰則規定はなく、該当選手の登録が抹消されるだけです。また、協会も登録させないと登録料はもらえませんが、問題になった選手だけを、後から登録抹消すれば、登録料は確保することができます。
カタルーニャ州だけで、FIFA規定に違反しているが、選手登録して公式戦に出場している子供は約4000人いるそうです。協会登録費用が25ユーロ/人 だと年間10万ユーロ(1500万円)を協会は得ていることになります。
毎シーズン、何万人もの選手登録を数名の職員がチェックして、登録作業をしている現実を考えれば、12才から19才未満でも、選手登録できるのが現実で、事実、たくさんの選手や留学斡旋業者が存在します。
でも、待って‼︎‼︎
留学の目的を考えてください。3-5年留学をする中で、最終目的は?
それが、プロになるためなら、15-18才でもっとも上のリーグ、強いチームで活躍しなければなりません。凌ぎを削るリーグ戦です。あなたは、そこで活躍して、みんなの注目を集めるために頑張ってきたのです。
ただ、もちろん、相手も同じです。ある意味、どんな事をしても勝つために全力でむかってきます。
やっとの思いで、あなたはその舞台に立ち、活躍できたとしましょう。最高の気分です。でも、相手チームからは、FIFA規定に違反した、本来、チームにいてはならない選手が活躍して、自分のチームにダメージを与えたのです。いわば、反則です。
当然、相手チームは協会に無効試合を訴え、あなたは、選手登録を抹消されて、誰かがプロ契約してくれるまで、または、労働許可証をとって、働く場所をみつけ、税金を収めるまで、スペインではプレーできなくなります。
だから、『できるけれど、できなくなる』というのが、正しい表現なんです。
留学を検討するときは、ホントによくわかっていて、助けてくれるかたに相談ください。駆け込み寺で、やれることは、ホントに限られるので、始めが肝心ですよ!