一人の老人が駅前のロータリーをバス停へと向かっていた。
ほっそりとした男性で身なりは小奇麗で、品がいい感じがする。
片手に杖を持ちながら、肩からは小型の茶色いショルダーをかけ、一歩一歩ゆっくりとバス停へと歩いていた。
かつてはその駅の階段を颯爽と歩いて通勤していたその男性は今では76歳。
以前のように足は言うことをきかなくなっていた。
音もなく自転車が後ろからやってきて、その老人にぶつかった。
老人は自転車に後ろから押される形で前につんのめりコンクリートに倒れた。
自転車をこいでいたのは制服姿の少年だった。
少年は急いでいたのか、倒れた老人をそのままにして自転車で走り去った。
「すみません」の一言もなしに。
「大丈夫ですか」
駅前にいた数人が心配して近づいてきて、倒れたままでいた老人を支えながら起こして立たせた。
ひざから倒れたのかズボンの右ひざのところが衝撃でさけていた。
擦り傷はあるようだが、幸い骨折はしていなかった。
この年で倒れて骨折などしなかったのは奇跡だとしかいいようがない。
「ありがとうございます。大丈夫です」
老人はお礼を述べるとすぐ近くのタクシー乗り場に向かった。
タクシーに乗りこみ行き先を告げた。
タクシーの運転手は心配そうな顔をしながらも言われた先へと車を走らせた。
(続く)
ほっそりとした男性で身なりは小奇麗で、品がいい感じがする。
片手に杖を持ちながら、肩からは小型の茶色いショルダーをかけ、一歩一歩ゆっくりとバス停へと歩いていた。
かつてはその駅の階段を颯爽と歩いて通勤していたその男性は今では76歳。
以前のように足は言うことをきかなくなっていた。
音もなく自転車が後ろからやってきて、その老人にぶつかった。
老人は自転車に後ろから押される形で前につんのめりコンクリートに倒れた。
自転車をこいでいたのは制服姿の少年だった。
少年は急いでいたのか、倒れた老人をそのままにして自転車で走り去った。
「すみません」の一言もなしに。
「大丈夫ですか」
駅前にいた数人が心配して近づいてきて、倒れたままでいた老人を支えながら起こして立たせた。
ひざから倒れたのかズボンの右ひざのところが衝撃でさけていた。
擦り傷はあるようだが、幸い骨折はしていなかった。
この年で倒れて骨折などしなかったのは奇跡だとしかいいようがない。
「ありがとうございます。大丈夫です」
老人はお礼を述べるとすぐ近くのタクシー乗り場に向かった。
タクシーに乗りこみ行き先を告げた。
タクシーの運転手は心配そうな顔をしながらも言われた先へと車を走らせた。
(続く)