3月4日付・読売社説(2)

[ツアーバス]「『安全』に影を落とす規制緩和」

 格安料金で人気を集めるツアーバスの安全は大丈夫か。春の観光シーズンに入るのを前に、運行態勢の点検を徹底する必要がある。大阪府吹田市で先月半ば、スキー客を乗せた大型バスがコンクリート柱に激突し、乗務員1人が死亡、26人が負傷した。バスは長野県のスキー場から大阪市内に戻る途中だった。21歳の運転手は警察の調べに、「今月は1日休んだだけで、睡眠は連日5時間程度しかなく、居眠り運転していた」と供述した。勤務先の長野県のバス会社が当日も徹夜運転させていた。長距離や夜間運転で交代の運転手を置くよう定めた国土交通省令や、長時間や連続の勤務を禁じた厚生労働省告示などに違反していた疑いがある。事故の背後に、2000年の道路運送法改正による規制緩和の“影”がのぞく。貸し切りバス事業は免許制から許可制になり、新規参入が相次いだ。事業者は一昨年3月時点で、5年前の1・6倍の3700業者に増えた。7割以上を10台以下の零細業者が占める。この会社も新規参入組で、家族経営に近かった。一方、全体の営業収入は16%減った。自由化で運賃は半減し、しわ寄せから運転手の過重労働が横行している。中でもスキーバスは、今年の暖冬が追い打ちをかけた。規制緩和には、利用者のサービス向上というプラス面もあるが、安全が置き去りにされてはならない。一昨年、全国の労働基準監督署が実施したバス事業者への立ち入り調査では、半数近くで、労働基準法違反の長時間運転などが見つかった。運転手らの労働組合が2年前、高速道路のサービスエリアでバス運転手に行ったアンケートでは、75%が居眠り運転を経験していた。事故多発の直接の責任は、無理な運行スケジュールを組んでいるバス会社にある。同時に、バスツアーを企画する旅行会社も、運行実態を確認すべきだ。悪質業者を淘汰(とうた)するには、行政の監督の強化と、厳格な処分が必要だ。事故を起こしたバス会社は、労働基準監督署から長時間運転の通報を受け、国交省の運輸支局が監査に入っていた。 国交省は昨年2月、監査手法を見直した。新規業者に開業後6か月以内の早期監査を実施する。行政処分を受けた業者の改善状況を調べる。抜き打ち監査もする。今年1月からは運輸支局の監査担当官を全国で30人増員した。しかし、どこまで実効を上げたのか疑問だ。労務管理を監督する厚労省との連携を強化し、安全の徹底へ果断な手を打たねばならない。

2007年3月4日1時32分 読売新聞)

確かにおっしゃるとおりです。バス会社の労働条件が激化、旅行会社が出来るだけ安い会社に手配、収益が悪化し、過重労働しなければ稼げない(会社も従業員も)。自動車運送業界というのは出来るだけ稼動させてお金を貰ってナンボの世界です。そのしわ寄せが高速路線バスにも及び、減便・廃止も首都圏~関西間などで相次いでいます。広島では高速バスの火災が相次ぎ、全国調査の結果、整備不良が多いことや長期使用の車で目立つことも前に取り上げました。路線バスも過重労働が当たり前です。
トラック・タクシーも然り。
でもこの社説は大手旅行会社の読売旅行を子会社に持ち(同社の子会社が読売観光バス。読売新聞の孫会社。大半の業務が読売旅行の企画・実施する会員募集ツアー)、紙面や日曜日の折込チラシで集客(読者サービス)。また、JTBやHIS、阪急交通社などの広告を全面広告として出してくれる大手広告主に配慮して旅行会社はとりあえずきちんと注意しろ、ということに留めています。どうせなら犯罪の幇助で摘発されることも覚悟すべきだなどと書いて欲しかったです。
JTB(店舗も海外旅行の主催もツアーバスの主催も子会社丸投げ)の子会社、JTBサンアンドサンやHISの子会社、オリオンツアーがツアーバスの元締めです。JTBはJR東日本などJRグループと関係が深いのですからサンアンドサンはJRバス関東・東北などJRバス各社と合併してJR高速バス利用ツアーに切り替えなさい。HISは九州産業交通(熊本市)という路線・貸切バス会社が子会社なのですからオリオンツアーと合併させ、下請けの中小も統合させて(ついでにクリスタル観光も合併)正式な路線バスにしましょう。浜松町バスターミナル、栄(名古屋市中区)バスターミナル、OCATなどは利用させてくれるはずです。

一方で大手バス会社がツアーバスに手を染めて「既存の高速路線バスが伸び悩んでいる分ツアーバスにすれば客がいる時だけ稼動すればよいし、余っている車の有効活用になる」という認識を持ち始めています。実際、そうした会社も存在します。路線バスは定時に定められたルート(迂回も認められているが)を期日を指定しない限り毎日運行しなければならず(それを怠って間引き運転だと指摘されたケースも多い)そうした意味では理解できます。でもこれは既得権、独占・寡占企業の社風に甘えたツケです。
既存の事業者の枠を超えて連携する九州の事例(SUNQパス)を勉強しましょう。