ブログネタ:元カレ・元カノの話

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目覚めてあたしが鯖トラの猫だと確認する、そんな朝がある。

夢から覚めて、失ったはずの彼と一緒の時を過ごしている。そうだったはずの朝らしい。

また夢から覚めて、彼の部屋でもなく、同居人を暖めているのが鯖トラの猫だとわかって、これは夢かと思っている。

そのまま目を閉じてもう一度夢に戻ろうとする事もある。

そっとあたしを抱きしめて、鯖トラの猫が一番の猫だからこれが現実で構わない。と囁くこともある。



こころは全部彼にあげてしまったから、こころの入っていた場所に穴があいたままだ。
絆創膏で塞いであるけれど、不用意にめくるとまだ血が流れる。乾かない分思い出は鮮やかだ。

まるでさっき別れてきたみたいに、ぐらぐらと動揺して涙が止まらなくなることがある。

時間がたって、暮らしている環境もかわり、彼とのことも知らないひとにかこまれて、突然の涙も理由を知られることもなくなった。


そんな過去よりも大切な現実があるとわかっていて、あたりまえに暮らしながら、「普段の同居人」のスイッチの切れる眠りの時に、抑えられない気持ちをふきだしている。忘れきれないときを繰り返している。




きっと誰だってそうだろう。どうにもならないことに押し流されながら笑った分だけ、泣いた分だけの熱い思い出を持っているのだもの。猫だってそうだもの。

あたしは、夜の風に同居人の胸の穴がひゅるひゅるとならないように、絆創膏の隙間をふさいで、ふわふわの背中を押し付けて寄り添っている。