$縮まらない『何か』を僕らは知っている-cacophony
cacophony/Dhal (2004)

ヘッドフォンalgebra/ダル

1. hydrophobia
2. modify
3. -344281
4. algebra
5. sad6
6. looking at the point where eyes are crossing
7. Nu G.D. evol
8. Sagarmatha
9. scene××
10. toe
11. she didn't want to drink anything with spangles in
12. elephantro


 ダウニーのフロントマンである青木ロビン、若命優仁(eksperimentoj)の二人のヴォーカリストと、トラック・メイキングにDJ Geru-seeによる3人で結成された新プロジェクトが、このダルだ。この1stアルバムに収められている楽曲は、そもそもは、この夏(2004年)に公開予定の映画『ラブドガン』のサウンド・トラックとして制作されたもの。しかし、実際の映像がなくとも、本作だけで十二分に楽しめる。繊細なサウンド・テクスチュアと、硬質な打ち込みのビート、中性的な妖しさを持つ二人の声、その三者が織り成す共鳴音はとても幻想的で、目をつぶれば瞼の裏に次々と色美しい情景が浮かび上がってくる。感情の起伏が極力押さえられたメロディは、まるで真っ黒な海にみる凪のごとく、不穏で抗い難い魅力を生み出している。ギリシャ神話「オデュッセウス」にも描かれる、伝説の妖魔セイレーン――甘美な歌声と囁きの言葉で、人を海へと誘い込み、その命を奪ったという彼女達が、もし現代にも存在していたとしたら、きっとこんな音楽を奏でているんじゃないだろうか。本作の、ファンタジックな音響は、そんな夢想をも呼び起こす。ヘッド・ミュージックとして一人静かに楽しむのもいいが、ギラギラと太陽が照りつける夏、束の間の逃避を求めるチルアウト・ミュージックとしても、きっと最適な一枚になるはず。(唐沢真佐子)


$縮まらない『何か』を僕らは知っている-Dhal