$縮まらない『何か』を僕らは知っている-OMOIDE OVER DRIVE
OMOIDE OVER DRIVE/七尾旅人 (1998)

ヘッドフォン戦闘機


人を愛すことは こんなにも簡単なんだ こんなにも簡単なんだ
君と出会ってから 僕はもうずっと優しくなった僕はもうずっと優しくなった
ぎゅっと君を抱きしめたい そっと君にくちづけたい 世界がそっぽ向いても
ずっと傍にいて欲しい 杏の様に痛ましい 記憶を2度ずつ犯そう
拘泥 そんなんじゃないよ 君以外を撃つ
今 2人は戦闘機になる

人を壊すことは こんなにも簡単なんだ こんなにも簡単なんだ
君と出会ってから 僕はもうずっと素直になった 僕はもうずっと素直になった
ぎゅっと君を抱きしめたい そっと君にくちづけたい 世界が そっぽ向いても
ずっと傍にいて欲しい 杏の様に痛ましい 記憶を2度ずつ犯そう
拘泥 そんなんじゃないよ 君以外を撃つ
今 2人は戦闘機に...

ぎゅっと君を抱きしめて そっと君にくちづけて 廃墟を羊水にひたそう
ずっとのびる荒野を 真っ赤にする朝日を 照り返しながら飛ぼう
熱狂 かけがえのない今日 掃き溜めから 僕ら飛びたった
戦闘機だ
熱狂 胎盤を裂いて今日 世界の終りすら 僕ら焼き尽くす
戦闘機だ
熱狂 唇から今日 綺麗な花  ダ..リダリギイィィザジイィィ..
戦闘機ザ――― ・・・・
熱狂 終わらない今日 不自然から産み捨てられた
戦闘機だ

人を愛すことは こんなにも簡単なんだ こんなにも簡単なんだ


$縮まらない『何か』を僕らは知っている


活動初期の3枚のマキシ・シングルは今では(2004年8月)かなり入手困難なものの、どれも苦労して手に入れる甲斐のある傑作ばかり。とても10代半ばの少年が作りだしたとは思えない才気のほとばしりと、10代半ばの少年だからこそ作りだすことの出来た繊細さが同居している。98年の1stシングル『オモヒデ オーヴァ ドライブ』は、どの曲もギターの弾き語りに最小限のピアノや弦楽が加えられた簡素なサウンドだが、それがゆえに、「うた」そのものの凄さが際立っている。4曲すべてが名曲。初期の代表作である“八月”が収められているのは、このシングルのみ。
東京という磁場がもたらす混乱とアパシーをそのまま内面化したかのような、ヘヴィでささくれだったサウンドが印象的な2ndシングル『おはよう・・・!ボンデェジ・サイボーグ』、そして、ロックというよりはジャズやシャンソン、ソウルに彼自身のルーツがあることを明示し、その才能の凄みを見せつけた3rdシングル『鉄曜日の夜→蘭曜日の朝』――その後の2枚のシングルも、出来れば、手に入れたい。
(THE ESSENTIAL GUIDE 2004 あなたのライフを変えるかもしれない300枚のレコード)