和久井映見さん出演ドラマ 今回は主演女優になった1994年から、1998年の「殴る女」の男女対等版といえる2000年の「Friends」、岸谷共演3部作の最後である2001年の「世界で一番熱い夏」、2002年の「First lLove」、NHKドラマ初主演の「抱きしめたい」~2003年「恋文」までを「ヒロイン時代」として出演データ・レビュー、そして今見ることができるメディアを紹介する。


私見や私事なども時には入るがお気になさらないようにw


ドラマ編 第一部 1988年~1993年

ドラマ編 第二部 1994年~2003年 ヒロイン時代

ドラマ編 第三部 2004年~2010年 主役から脇役までこなすユーティリティープレイヤー

ドラマ編 第四部 2011年~       母親役ときどきヒロイン

 

映画編 1989年~

歌手編 1990年~1997年 その後(ドラマでの)歌唱

ナレーション・舞台 1997年~

ラジオ番組 1990年~1996年 、ゲスト出演 1990年~

 

トーク番組等 2017年~

 

CM 1988年~


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第二回  ヒロイン時代  1994年~2003年


【凡例】


1.和久井さんの役(主役・ヒロイン・準主役・脇役・端役の別)


2.相手役


3.父母役


4.視聴可能メディア


5. 備考


について示す。


掲載順は、テレビ局、番組名、連続・単発、1、2、3、4、レビュー


【テレビ局略号】


NTV:日本テレビ、CX:フジテレビ、ANB:テレビ朝日



()表示は故人

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1994年


CX  夏子の酒 連続 1.主演 佐伯夏子 2.萩原聖人 3.(高松英郎)、中井貴一(亡兄) 4.DVD


夏子の酒DVD BOX/若村麻由美
¥20,790
Amazon.co.jp


連続ドラマ初主演作。 1年かけた撮影は同局では「北の国から」以来。 「北の・・・」ほうはCSで何度も再放送(今もやってる)されているのにこちらはというより和久井さん主演作をなぜかやらない。

漫画原作の作品のヒロインとしては「動物のお医者さん」と並んで和久井映見さんの代表作である。


作品のほうは、


「コピーライターとして会心の作を作り上げた夏子だが、それは実家の造り酒屋の酒をイメージしたものでクライアントのそれではない。工場見学でそれをはっきりと感じた夏子は、帰省したときに幻の酒米の種を発見し銘酒の復活を志す兄の笑顔を思い浮かべたが、兄は過労がたたって他界した。


兄の意思を継ぐために退職して実家に戻り、幾多の苦難を乗り越えて酒米を育て上げ、杜氏や蔵人たちとともに幻の銘酒を復活させるのであった。」


自分で選んだコピーライターの仕事への疑問、打ち込むべき仕事をかつては避けていた実家に見つけたときの使命感や「やるべきこと」への探究心、そういったものを各段階における山場山場で、和久井さんはその表情やまなざしで夏子の気持ちを見事に表現していた。


一度決めたことはどんなにつらくても、その対象者を説得し、またその人たちに害はないのだと示すとともに、農薬の一斉空中散布が行われたときには身を挺して苗を守ったこと、夜を徹して台風の被害から稲を守り抜いたことなど感動的なエピソードは枚挙に暇がない。


また共演者も、和久井さんと同年輩の若手も、中井、若村真由美(兄の妻役)、石黒賢(取引先の酒卸業)といった中堅や、高松、下條正巳(杜氏)、平泉成(酒米つくりに反対する農家のまとめ役:「すてきな片想い」では人事部長役)などベテランにいたるまでそれぞれがその持ち場で個性を発揮していた見ごたえのあるドラマだった。


ラストシーン、亡き兄との茶会のような場の夢で、幻の酒を酌み交わす着物姿の和久井さんはとても美しかった。


和久井さんとしてははじめてのサクセスストーリーであり、内容的にはこれぞNHK朝ドラで作るべきものだったが、原作が小説でない(「連続テレビ小説」だから)ためにその機会を逸した作品。


その秋の朝ドラ主演に、NHKは和久井さんを強く推したのに脚本家のきまぐれで別の人を主役に立ててドラマとしては失敗作になったことを後年、脚本家自身が反省していたことは既に述べたとおり。





TBS 21歳の別離 単発 1.主演 中堀由希子役 2.筒井道隆 3.新克敏、沢田亜矢子 4.TBSオンデマンド


https://tod.tbs.co.jp/episode/9139



日本で初めて国外ドナーからの骨髄移植手術を受けた女性の短い生涯を描いた実話ベースのドラマ。


彼女は知り合った同じ骨髄性白血病の患者の死を知り、彼の意思を継ぐためにドナー登録推進活動に勤しむことになるが。


亡くなる役は「夏の嵐」について二度目である。実話ベースと言えば「夏子の酒」もそうだといえるが設定がまったく異なる(事実では、夏子に相当するのが男性)。


若い女性が髪を失うたとえようのない悲しみや、短い生命、そして迫りくる痛みを薬で抑える毎日という境遇にもめげず明るく精一杯生きる女性の姿を生き生きと映し出した和久井さんの演技には涙せずにはいられない。


和久井さんはこの作品で初めてウエディングドレス姿を演じた(このときはまだ可愛いという印象が強かったが、やがて「バージンロード」「殴る女」と着用機会も増えて、究極の悲劇のヒロイン役だった「恋文」での姿は神々しいまでの美しさだった。)。





CX 妹よ 連続 1.主演 松井ゆき子 2.唐沢寿明 3.(河原崎長一郎)(河内桃子)4.DVD


妹よ DVD BOX/渡辺克己
¥20,790
Amazon.co.jp


いわずと知れたヒロイン時代の名作。

ポストバブルの時代、「トレンディードラマ」から「ラブストーリーとホームドラマの融合」という新しいジャンルを開拓した和久井さんは、ある意味時代の先駆者であった。


もちろん岸谷、河原崎、河内といった自分の家族と、鶴田、神山繁ら恋人の家族が織り成すその対比もドラマの重要な要素である。


「トレンディー」にも似合う華がありながらこうした家族愛がテーマのドラマでの素朴で美しい心を持つヒロインを演じられるのも彼女の強みである。


名シーンは数え切れないが、個人的に印象深いのは、第1話のダンスパーティー、第8話 雅史の告白を受けての心情の吐露、最終話 雅史が迎えに来たときの最後の戸惑い である。


ダンスパーティーでのゆき子はほんとに綺麗で可愛くて気品に満ちている、お姫様そのものだった。


第8話のラスト、雅史の「好きだ」に対してのゆき子の「私はずっと」、「ずっとあなたに」、「あなたに逢いたくて」、「逢いたくてたまらなかった」という独特の低音で響く哀切な口調は涙なしには見られない。


兄に反対され、恋人の父からは「君には雅史を幸せにはできない」と釘を刺された中で、彼からの告白がやっと彼女の心情を露にした瞬間、ひとつのクライマックスである。


そしてラストシーン、雅史がこれからに」ついてゆき子に心構えを求め自分の決意を語る中でも、ゆき子にはひとつだけ気にかかることがあった。


「私はあなたを幸せにできる?」

「それは僕が決めることだ。僕がほんとに欲しいのは君だから。」


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自分の幸せは相手の幸せとともにある。


殆どの作品で和久井さんが演じてきた重要なテーマである。





1995年


TBS 家族 あなたは父を愛せますか 1.主演 杉田直子 2.松岡昌宏 3.橋爪功 いしだあゆみ 4.なし


酒と博打に来るって家族を置き去りに蒸発してしまった父を探す娘役。看護師でもあるヒロインと母がどうしようもなく戻ってきた父を受け入れる家庭を描いたヒューマンドラマ。付き合っていた恋人とはそれがもとで関係がぎくしゃくして・・・という内容だった。


相手役とは6歳の年齢差があったが、「就職戦線異状なし」や「虹の橋」のように、当時20代前半の若さで上下各5歳程度の年齢幅になれる演技力があったからまったく問題はなかった。


(ちょうど筆者は、人生を決めると言っていい資格試験の勉強のさなか。仕事帰りに学校へ、その帰りに見た記憶がある。


試験には翌月合格し、その後もその資格が仕事に役立った。)





1996年


CX ピュア 連続 1.主演 折原優香 2.堤真一 3.風吹ジュン 4.DVD


ピュア DVD BOX/篠原涼子
¥20,790
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改めて和久井映見という女優の凄さを実感した作品。


知的障害者をこれほどかわいくそして純粋な心を持つ女性として演じた女優を(多くの女優がそれまで演じてきたのだが)筆者は知らない。


さらに「愛しあってるかい」「すてきな片想い」「夏子の酒」「妹よ」・・・その他多くのどの役ともまったく違う個性をあれほど自然に演じぬけるのだから多くの後輩が敬愛してやまないのも理解できる。


共演の堤が、「こっちは仏頂面でほとんど感情を示さない、言葉のキャッチボールがほとんどないのに、いつもにこにこと笑ってくれる。これはほんとに難しいやろな?」と言っていたが、それは相手に対して役者個人の人格を通して接するのではなく、折原優香という役柄の女性として接しているから。





1997年


CX バージンロード 連続 1.主演 桜井和美 2.反町隆史 3.武田鉄矢 4.DVD


バージンロード DVD BOX/北原雅樹
¥20,790
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ジュエリーデザイナーを目指して本場アメリカでの修行中知り合ったその道の大御所と付き合うも不倫と知らされ失意の帰国(父危篤という電報もあったが)、その機内で隣り合った青年に向けて嘔吐(妊娠していた)。


(実は筆者、小1のとき隣の女子にそうされたことが50年後の今もトラウマで「うわっ」と避けたくなったが、)その後の人物描写が実に巧みであって、また和久井さん演じる和美のシングルマザーとして自立を誓う芯の強さ、そしてそれを見守る二人の男(反町と御曹司役の寺脇康文)、そして娘の幸せを一心に願う血のつながらない父(武田)と弟。


そしてその身の上を知ってしまう和美の深い悲しみと寂寥感、母亡き今、自分の肉親が実は誰もいない、このシーンはじーんときた。


それが父なき子を生もうとしている自分の姿、生まれる子にまでリンクしている。


もうひとつの発見は、和久井さんはやはりウエストが細くスタイルがとても美しいこと、それをまったく武器とはしてこなかったことだ。


表情や声、そしてしぐさで微妙な感情を表現して心を揺さぶる演技をする役者、和久井さんはその最後の世代なのかも知れない。





1998年


TBS カミさんなんかこわくない 単発 1.ヒロイン 小田切ハナ 2.田村正和 3.なし 4.TBSオンデマンド


https://tod.tbs.co.jp/episode/4585  単話で購入のこと。



田村、橋爪功、角野卓三というおっさんたちのむさーい3人暮らしのマンション、しかも道路工事の「ガーー」から始まるのには正直引いたが、それもつかの間、歯医者のシーンでは冷たい感じの看護師さんに続いて優しい声の可愛い和久井さん。


和久井さんの技術指導にあたった歯科関係の人によると監督が歯科衛生士役の人に「事務的な冷たい態度で」で演じるよう指導していたとか、それが功を奏して和久井さんの役が、まさに砂漠の泉のように引き立ったことは言うまでもない。


歯科の院長は、10年前の「夏の嵐」で真理子の預け先だった和尚役の今福正雄氏、この人もすでに故人であることに20年の時の流れの重さを感じる。


毎回ゲストヒロインが変わるこの作品、当時のトップ女優たちを集めたゲストたちだったが、和久井さんの回は、初回のご祝儀相場であった小泉今日子に僅差の2位、それだけ和久井映見さんは人気があったということだ。


ラストは「第三の男」を模したようなシーン、男たちが道の脇で見ている中、和久井さんは「恋文」で、将一に最初に会いに行ったときのようないでたちで颯爽と歩いていき、やがて男たちと追っかけっこになるw


田村と二人のシーン、どうみても田村が和久井さんのことを(女優としてだろうが)気に入っていたように見える。この10年後、「忠臣蔵 音無しの剣」で、27歳という年齢差にも関わらず和久井さんをヒロインにキャスティングしたのは田村の側からの指名だったのでは?と思うほどに。


「忠臣蔵 音無しの剣」も全体に調和が取れていて、志保(和久井さん)と慶之助(田村)の関係も生き生きと描かれたイイ作品だった。




TBS 二十六夜参り 単発 1.主演 海江田みずき/前園君代(二役) 2.東貴博/木村一八 3.なし 4.横浜 放送ライブラリーで視聴可能


http://www.bpcj.or.jp/search/show_detail.php?program=129186


武田鉄矢が立案した企画による作品。

和久井さんの演技にほれ込んだ彼がヒロインに指名したらしい。




CX 殴る女 連続 1.主演 芳村香 2.吹越満 3.渡辺哲 4.フジテレビオンデマンド


http://fod.fujitv.co.jp/s/psearch/?keyword=%e5%92%8c%e4%b9%85%e4%ba%95%e6%98%a0%e8%a6%8b&page=2




最初はずいぶんなタイトルだと思ったが、内容はなかなか面白い。

コメディタッチというのもあるが、逃げ腰で早く辞めようとしていた香がボクシングの魅力、そしてやりたいことに全てを捨てて取り組むことに目覚めて最後は、無風状態で「なんとなく」になっていた婚約まで解消してしまう話。


最初は先輩トレーナーの言葉にしたがっていた香が、次第に沢田(吹越)の闘志を掻き立てる方向に導くようになり、遂には無理と言われたタイトルマッチにまでこぎつけることになる。


結婚式から抜け出してタイトルマッチの会場へ(セコンドとして)向かう姿は、まさに映画「卒業」の逆パターンである、しかもこちらは婚約者の了解済みだ。




2000年


TBS Friennds 連続 1.ヒロイン 日浦理紗 2.浜田雅功 3.なし 4.なし


「殴る女」の発展系のような話。こちらは「誰かを支えよう」ではなく、同じ志を持つ仲間と切磋琢磨し時には助け合いながらプロとして成長して行こうという話。


いずれ詳しくレビューする。




2001年


TBS 世界で一番熱い夏 連続 1.ヒロイン 神来未子 2.岸谷五朗 3.なし 4.VHS


いずれ詳しくレビューする。





2002年 


TBS First Love 連続 1.準主役 江沢朋子 2.渡部篤郎 3.小野武彦 大森暁美 4.DVD


First Love DVD-BOX/和久井映見
¥21,492
Amazon.co.jp





初のトメクレジットの作品、幼いころ両親をなくした里子で、里親に愛されずに育ったと思い込み問題行動を起こす女性を熱演し説得力があった。

和久井さん唯一といえる悪役だった。





NHK 抱きしめたい 単発 1.主演 沢田未来子 2.西島秀俊 3.竜雷太 いしだあゆみ 4.NHK放送センターで視聴可能


いずれ詳しくレビューする。





2003年


NHK 武蔵(大河ドラマ) 連続 1.脇役(柳生宗矩の妻 りん) 2.中井貴一 3.なし 4.なし




落ち着いた印象がある武家の妻という風格のある役柄。

史実では息子の柳生十兵衛らを産み、その幼いうちに若くして他界した人。

いずれ詳しくレビューする。





ANB 動物のお医者さん 連続 1.ヒロイン 菱沼聖子 2.なし 3.なし 4.DVD


動物のお医者さん DVD-BOX/草刈正雄
¥22,572
Amazon.co.jp


和久井映見さん その31 ← こちらで詳しくレビューしている。


コミカルで可愛い菱沼さんはやはり和久井さんでなければできない役だと実感した。





TBS 恋文~私たちが愛した男~ 連続 1.ヒロイン 田島江津子 2.渡部篤郎 3.なし 4.なし




女優 和久井映見さん その8 ← こちらで詳しくレビューしている。


この作品の田島江津子役で悲劇のヒロイン像を極めた。


と同時にこのドラマのアナザーストーリーとして12年後の「お義父さんと呼ばせて」を見るとさらに面白くなる。




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この「恋文」で、和久井さんの「若きヒロイン」時代は区切りがつき、翌年からは主役から脇役、母役まで何でもできる万能演技者としての時代が始まっていく。


シリアスからコメディ、ラブストーリーから母親役までしっかりとこなす作り手にとってはありがたい存在に。


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横浜 放送ライブラリーで視聴できるドラマで、DVD等存在しないのは、


1989年 春までの祭 (端役)


1991年 赤頭巾快刀乱麻 第1話


1992年 みなと未来・ヨコハマ


1998年 二十六夜参り


そしてナレーション作品


NNNドキュメント’03 おばあちゃんは小学生 ~小さな島の友情日記~


である。


http://www.bpcj.or.jp/search/show_detail.php?program=138129


今後も視聴できる和久井映見作品を増やしていただきたい。


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次回・・・ドラマ編 第三部 2004年~2010年 主役から脇役までこなすユーティリティープレイヤー

に続く。