第9118回「光文社版鉄腕アトム その1、アトム誕生の巻 その2、アトム大使の巻、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第9118回「光文社版鉄腕アトム その1、アトム誕生の巻 その2、アトム大使の巻、ネタバレ」





 第9118回は、「光文社版鉄腕アトム その1、アトム誕生の巻 その2、アトム大使の巻、ストーリー、ネタバレ」です。講談社文庫では全15巻でこのシリーズを刊行しました。欠本があるため、現在手元に残っているのは8巻のみです。それでも大体の構成は分かると思います。2話ずつ、随時取り上げていきたいと思っています。


 福島原発事故からさほど立っていない時期に書いたブログの冒頭部分を再掲することにします。御面倒でしたら読み飛ばしてください。


 ≪  第3452回は、「週刊ニュース新書、昨日、内閣不信任を拒絶した谷垣総裁」です。今日のゲストは、立花隆さんでした。今日のテーマは、福島原発事故についてです。


 立花さんは、鉄腕アトムを持ち出します。「ぼくたちの世代は、鉄腕アトムで育ちました。アトムといい、妹のウランにしろ、原子力推進を裏付けたものだったが、ぼくたちは、そのような事情を知らずに喜んで読んでいた」と話しています。


 「鉄腕アトム」の欺瞞性については、既にブログに書いています。アトムが掲載されていた時代、私は汚いハナを垂らした田舎のガキでしたが、それでも、アトムの不自然さについては、気がついていました。一昨年(2009年)10月6日に書いたブログから、一部再掲します。


 『 鉄腕アトムにつきましては、昨年11月のブログ「8マン(エイトマン)」で、少し触れています。『・・・・(エイトマンは、)後の「巨人の星」や「明日のジヨー」よりも好きな作品です。「鉄腕アトム」よりも好きです。アトムの最大の欠陥は、偽善ヒューマニズムとも言うべき作風にあったと思えたからです。いまでも、そう思っていますが・・・・。』


 「鉄人28号」とか「鉄腕アトム」は、月刊誌であった「少年」に同時期に掲載されていました。"鉄人28号"は軍事産業から生まれたものですが、"鉄腕アトム"は子どもを失った父親の哀しみが生み出したものです。前者は完全なエンターテインメント作品であり、後者は子供心にも説教臭さが感じられました。 』・・・・  ≫


 原発事故があったから、アトムが偽ヒューマニズムだと書いたわけではありません。子どもだからこそ、大人の偽善が直観できたと考えています。ある意味、「鉄腕アトム」は一般的な親とか、マスコミが子どもたちに読んでもらいたいと思った漫画でした。漫画は好ましくないが、同じ読むなら「鉄腕アトム」をと・・・・。


 アトムは原子力エンジンを搭載し、街中で闘います。それはエイトマンも同じです。ですが、エイトマンはサイボーグとなった悲しみに耐え、一方、アトムは学校でいじめられるから、両親が欲しいと言い出します。普通の子どもであれば、アトムの矛盾には気づいたはずです。


 原発事故後も、マスコミはアトムが原発推進大使だったことを無視し続けます、そして、自らが煽(あお)り続けたことも・・・・。



「その1、アトム誕生の巻」

 この版では、冒頭部分に手塚治虫によって自作解題的な画が書き加えられています。アトム誕生編では、架空のロボット史がカラーで書き加えられています。


1974年 原子力による極小マイクロチップの開発。

1978年 ワークッチャ博士が、人類初の電子脳を開発。

1982年 日本の猿間根(さるまね)博士が、初めてロボットに電子脳を搭載。

同時期  ジェームズ・ダルトン博士が人工皮膚を開発。


 これらの基礎研究を踏まえ、一挙にロボットの開発が進むことになりました。そして、2003年4月7日(公式設定)、アトムは誕生します・・・・。


 トビオ(飛雄)少年がスポーツ・カーで街中を疾走していました。すでに車輪のない自動車が開発されていたのです。トビオ少年の乗る自動車はトラックと激突します・・・・。息子の死を嘆き悲しんだ父親の天馬博士は、科学省長官の職権を乱用し、トビオそっくりのロボットを作ることにしました。


 こうして、アトムは誕生しました。しかし、アトムの電子脳は空白です。しかも、ロボットですので身体が成長することはありません。失望した天馬博士は、興業主にアトムを売り払います。見世物としてサーカスに出演していたアトムを買い取ったのが、鼻のでかいお茶の水博士でした。


 短いエピソードです。


「その2、アトム大使の巻」

 このエピソードは70ページほどの中編です。リライトされアトム物語になりました。「アトム誕生の巻」とあわせ、誕生編となっています。現在であれば、SF設定を多次元宇宙にしたのではないでしょうか。天馬博士も、お茶の水博士も、ひげおやじも、自分とうりふたつの人物が登場します・・・・。


 宇宙空間を宇宙船「日本艇」が飛翔していました。かれらが捜していたのが、第二の地球でした。彼らが旅立った地球が壊滅したからです。ケンちゃんという少年を通じて、彼らの生活が短く描かれています。当然、アメリカ艇もフランス艇も多数の移民を乗せて驀進していました・・・・。


 一方、われらの地球では、アトムが開発されていました、そして、サーカスに売られます・・・・。ここからは、マメオという少年の視点で物語は進みます。日本艇を飛び出したマメオは、興業主に家出少年と間違えられ、サーカス会場に連れて行かれます。そこでアトムと闘わされます。


 しかし、直前に第二地球のマスオと入れ替わっていたのです。アトムとは、計算能力、積み木で争いますが、一勝一敗でした。最後の競技は格闘技でしたが、その時点でマメオは会場にいる両親を見つけ家に帰ることができました・・・・。


 このエピソードを通じて、うりふたつの人物が、第一地球と第二地球にそれぞれいることが判明します。ここで問題となったのが、食糧問題でした。宇宙食は極めてまずく、第一地球人も地上食を食べ始めたのです。第二地球人の間で、ナショナリズムが高まります。


 ここで重要な役割を果たしたのが、天馬博士が開発した新薬でした。動物をゴミ同然の大きさにできるのです、実際、新薬を浴びせられた人間はゴミとして亡くなります・・・・。その先鋭部隊として暗躍したのが、赤シャツ隊でした。


 こうなりますと、第一地球と第二地球が交戦するのも時間の問題です。そこで第二地球の代表の元に遣わされたのが、アトムでした(日本艇ではアトムは開発されていません)。和平案は、金星または火星への移住に際し、第一地球と第二地球の移住者を同数にすることでした。


 和平案は相互に承認されました。この騒動を通じて、いずれの天馬博士もゴミとなって消え失せています・・・・。


(蛇足) 交渉の間、アトムは人質として自分の頭部を預けています。その間、通常どおり活動していますので、頭部以外にも、アトムには電子脳とか電子眼が搭載されていることになります。