第8177回「江戸川乱歩中短編 その35、疑惑 ストーリー、ネタバレ」(1925年) | 新稀少堂日記

第8177回「江戸川乱歩中短編 その35、疑惑 ストーリー、ネタバレ」(1925年)

 第8177回は、「江戸川乱歩中短編 その35、疑惑 ストーリー、ネタバレ」(1925年)です。父親が殺された次男が、友人に捜査状況を語って聞かせるという設定になっています。


「その35、疑惑」

『書かれざる事件当日』

 その一家は、両親、長男、次男(語り手)、長女の5人家族です。父親は普段から酒癖が悪く、妻を殴打していました。そんな父親に黙っていられなかったのが、長男でした。殴り合いのけんかに発展することも少なからずありました・・・・。もちろん、次男も長女も、父親を憎悪しています。


 そんな父親が、ある夜、自宅の庭先で撲殺されたのです。凶器は鉈(なた)とか斧とか鈍い刃を持つ道具だと推定されています。


『事件後2日目』

 次男は事件とその背景となる家族状況について、友人に詳しく語って聞かせます。「お兄さんが犯人ってことはないのか」、それが友人の率直な感想でした。


『事件後5日目』

 ふたたび、次男はその友人に話します。「たしかに君が言ったように、兄が怪しいように思える。事件翌日、死体発見直後に、兄は帯を落とすフリをして何かを拾い上げていた。証拠となる遺留品を隠したんじゃにいかな」


『事件後10日目』

 みたび、次男は友人に事件について語ります。「兄の母親を目にする視線が気になるんだ。まるで犯人を見つめるような目つきなんだ。兄が現場で拾ったのは母のくしではないだろうか。今では、母まで疑っているよ。ところで、家の2階から、裏の祠が見えるんだ。そこで、妹が何かをしていたんだ」


『事件後11日目』

 よたび、次男は同じ友人に事件について話します。「寝静まった頃、祠の周辺を掘り返すと、血痕のついた斧が埋められていたよ、すぐ埋戻したけどさ。今では、家族4人がお互いを疑いあってるよ。それに、容疑者も全員釈放されたそうだ。刑事もおれの家族を疑っているようだ」


 以下、結末まで書きますので、ネタバレになります。


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『事件後1か月』

 久しぶりに、次男は友人に会い、事件を報告します。「犯人は分かったよ、俺だったんだ。随分前に、植木の枝の間に斧を置いたんだ。すっかり忘れていたが、父親の頭に落ちるように無意識のうちに置いたんだと思うよ。フロイドの言うとおりだ。今から警察に出頭し、事情を説明するよ。俺はみんなを疑っていたが、みんなはおれをかばっていたんだ」


 友人は、「その程度では、きみを罰することなどできないさ」と答えます・・・・。


(追記) 「江戸川乱歩中短編」につきましては、順次ブログに取り上げていくつもりです。興味がありましたらお手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"乱歩中短編"と御入力ください。