第8174回「江戸川乱歩中短編 その34、一人二役 ストーリー、ネタバレ」(1925年) | 新稀少堂日記

第8174回「江戸川乱歩中短編 その34、一人二役 ストーリー、ネタバレ」(1925年)

 第8174回は、「江戸川乱歩中短編 その34、一人二役 ストーリー、ネタバレ」(1925年)です。十ページ余のコミカルな短編です。


「その34、一人二役」

 仲間内の雑談で出てきたのが、"T"という男の話題でした。いわゆる高等遊民です。退屈し切っています・・・・。美人の妻がいるのですが、女遊びに耽(ふけ)っています・・・・。そんなTが、新しい遊びを思いついたのです。


 アリバイを作り、付け髭を付けたうえ、顔を合さないようにして妻と一緒に寝たのです。朝早く立ち去ったTは、あとに別の人物のイニシャルの入ったシガレット・ケースを残しました。当然、妻には昨晩は家に帰っていないと話しています・・・・。二度目に残したのは、同じく他人のイニシャル入りのハンカチでした。


 そんなことが度重なります。しかし、当初の目論見から外れてしまいました、妻がその男のことを愛し始めたからです。そのことは気配で分かります。度重なるにつれ、妻の恋情は募っていきます。Tが考え出したのが、一人二役で演じていた人物のうち、本来の自分を抹殺することでした。


 一か月間の長旅を妻に告げ、旅に出ます。そして、旅先で亡くなったことにしたのです。そして、もうひとりの人物として、妻と暮し始めました。そのために、ひげを伸ばし整形までしました。さらに、かつての友人とのつきあいも止めています。


 そんなある日のことでした。妻と仲良く歩いているTとすれ違ったのは・・・・。事情を知っていますので、無視して通り過ぎようとします。


 あとわずかですが、以下結末まで書きますので、ネタバレになります。


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 ですが、Tの方から声をかけてきたのです。「はははっ、家内は最初から、お見通しだったんだ。単に私に合わせてくれてたんだ。女はこわいね、はははっ」、Tはそう話します・・・・。


(追記) 「江戸川乱歩中短編」につきましては、順次ブログに取り上げていくつもりです。興味がありましたらお手数ですが、ブログトップ左側にあります"ブログ内検索"欄に"乱歩中短編"と御入力ください。