第8099回「江戸川乱歩中短編 その6、人間椅子 ストーリー、ネタバレ」(1925年) | 新稀少堂日記

第8099回「江戸川乱歩中短編 その6、人間椅子 ストーリー、ネタバレ」(1925年)

 第8099回は、「江戸川乱歩中短編 その6、人間椅子 ストーリー、ネタバレ」(1925年)です。デビューから3年目の1925年は、多数の短編を発表しています。ミステリから出発した江戸川乱歩は次第に耽美世界にのめり込んでいきます・・・・。


「その6、人間椅子」

 外交官夫人でもある閨秀作家・佳子の元には多数の原稿が送られてきます。キリがありませんので、ほとんど目を通すことはありません。しかし、今回送られてきた原稿には、タイトルがなく、いきなり「奥様」と宛名から始まっていたのです。お気に入りの椅子に腰かけ、読み始めます・・・・。


 原稿は、椅子職人の一人称"私"で書かれています。腕のいい職人の"私"に、大手ホテルから注文が入りました。腕によりをかけて製作したのですが、いたずら心が働きます。椅子の中に潜める構造にしたのです。食べ物を置く棚とか、排尿のための袋を置くスペースも拵(こしら)えます。


 "私"の目的は、あくまでホテル内で貴重品を物色することでした。寝静まった時間に椅子から抜け出し、窃盗行為を働き大いに稼ぎました。しかし、椅子の中で暮らすことには、副次的な効果があったのです。女性が"私"の上に座ると異様な快楽を感じるようになったのです。


 ですが、その喜びも長くは続きませんでした。その大手ホテルが新規参入業者にホテルを売却したのです。新しいホテルは、豪華さが売りではありませんでした。そのため、"私"の入った椅子だけでなく豪華家具はすべて中古店に売却されました。この時が、世間に戻る最大のチャンスだったかもしれません。


 以下、結末まで書きますので、ネタバレになります。


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 "私"を入れた椅子を買ったのは外交官でした。そして、椅子は居間に置かれました。この椅子に常時腰かけられたのが、外交官の妻であり作家の奥様でした。"私"は、生まれつき醜い男でございます。ですが、椅子の皮を通じて、奥様に恋しました。ひとめ会ってはいただけないでしょうか・・・・。


 原稿はそこで終わっていました。あわてて佳子は椅子から離れます。その時でした、次なる手紙が届いたのは・・・・。


 「私は先生の御本の愛読者です。先に送った原稿はお読みになったでしょうか、御批評を賜れば幸いです。なお、タイトルは『人間椅子』です」(要旨)


(追記) 「江戸川乱歩中短編」につきましては順次ブログに取り上げていくつもりです。興味がありましたらお手数ですが、「乱歩中短編」と御入力ください。