第7538回「遊びの時間は終らない 都井邦彦原作 萩庭貞明監督 感想、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第7538回「遊びの時間は終らない 都井邦彦原作 萩庭貞明監督 感想、ストーリー、ネタバレ」




 第7538回は、「遊びの時間は終らない 都井邦彦原作 萩庭貞明監督 感想、ストーリー、ネタバレ」(1991年)です。


 抱腹絶倒の警察コメディです。銀行強盗とかコンビニ強盗に対する実地演習は、ローカル・テレビなどで時々報道されています。「バカヤロー、てめえ死にてえのか!」などと叫ぶ犯人役の警官が、簡単に捕縛されています。しかし、犯人役の警官が真剣に銀行強盗を働いたら・・・・。


 この映画は警察を皮肉っているだけでなく、マスコミもパロディの対象にしています。「マスコミは国民を代表している、恣意的なルール変更は正義のマスコミが許さない」と豪語します。騒動とイベントににつきものが、阪神タイガースのメガフォンとタコ焼きの屋台です。しっかり登場しています。


 舞台設定は、地方都市です。ストーリーの紹介にあたりましては、原作とは関係なく章とサブタイトルを付けさせていただきます。


「プロローグ 無銭飲食始末記」

 阪神タイガースの帽子をかぶった中年男性を連行していたのが、交番勤務の平田巡査(本木雅弘さん)でした。交番に連れて行き、調書を作成します。「ところで、身分証を見せてくれないかな」、無銭飲食男が取り出したのが、健康保険証でした。万札が出てきます・・・・(映像的には描かれていませんが、代金を支払い釈放されます)。


 平田巡査には重要な任務が課されていました。銀行強盗に対する実地演習において、犯人役に指名されていたのです。その夜、犯人役のリハーサルをしましすが、完全に陶酔していました。当日はいかなることになるやら、という展開です。


「第1章 銀行強盗事件発生!」

 今回の演習は、被害対象の信用金庫にも一切通知せずに行われました。平田巡査は、窓口にバッグを置き、通帳を開きます。「銃を持っている、黙ってバッグに金を詰めろ!」、女子行員は足元の非常用ボタンを押します。このボタンは店内では鳴り響かず、警察に直接つながるものでした。


 外で待機していた逃亡役の共犯者は、カーレースの末、3分弱で逮捕されますが・・・・。平田巡査は強(したた)かでした。速射モードに切りかえれば1分に700発連写できる機銃を所持していたのです。コートの下に隠し持っていたのです。


 バッグを持って逃走しようとした際、行く手に立ち塞がった客のひとりを射殺します。「バンっ!」、口で殺したことにします。外には、演習とはいえ警官隊が到着していました。平田巡査は逃亡をあきらめ、店内に立てこもることを決意します。


「第2章 信用金庫立てこもり事件に発展」

 行員と客には、「拘束済み」と印字された紙を首からぶら下げさせます。後ろ手に縛られているという設定です。殺した客役の刑事には「死亡」の紙を載せます。その客役を演じたのが、若きキャリア官僚の笠間毅(草薙幸二郎さん)でした。


 一方、慌(あわ)てたのが警察署長の鳥飼(石橋蓮司さん)でした。抜打ちの演習を指示したのが署長だったからです。「署長が・・・」と責任逃れをしようとする部下を叱責します。「わしの責任にするな!」、そん署長に冷静に話しかけるのが、部下の中野でした。今井雅之さんが助演男優賞ものの演技をしています。


 しかし、この騒動をかぎつけたのが、ハイエナのようなマスコミでした。信用金庫の上空には、テレビ会社のヘリが旋回しています。野次馬も集結していました。


「第3章 マスコミは国民の代表だ、ルール変更は許さん!」

 しゃしゃり出てきたのが、キャスターともディレクターとも言うべき柏崎(萩原流行さん)でした。マイク片手に吠えまくります。警察に信用金庫内に入れろと騒ぎたてます。平田巡査は了承します。考え出し方法が、マスコミ関係者を「空気」とすることでした。


 マスコミは、行員のプロフィールを紹介していきます。「桑名ゆり子さん、大変な美人です」、ゆり子は喜びで顔を輝かします。カメラはひとりずつ紹介していきます。当初はローカル・ニュースで2分ほどの放送予定だったのですが、ライブ放送に切り替えられました。


 しかし、突然、死んだはずの笠間毅が平田巡査を取り押さえたのです。「確か頭部を撃つったはずだ」、違和感を感じた平田巡査は監視カメラのビデオを全員チェックすることにします。やはり頭部を撃っていました。演習は続行です・・・・。


「第4章 狙撃部隊出動」

 信用金庫の向かいのビルの屋上に、狙撃部隊が待機します。平田巡査はシャッター越しに外部の動向を窺(うかが)っていました。野次馬たちは、平田コールを連呼しています。そんな中でも平田は冷静でした。しっかりと狙撃部隊の存在を確認していたのです。


 向井の屋上からは、シャッター越しに平田巡査の着ているコートが確認できます。「撃て!」、隊長の合図とともに、数人の隊員が一斉に狙撃します。「演習終了!」、しかし、シャッターの傍に立っていたのは、平田のコートを着ていた行員でした。


 「マスコミは国民の代表だ、勝手なルール変更は許さん」、柏崎が吠えます。野次馬から大歓声が上がります・・・・。その頃、マスコミは平田の実家にも押しかけていました。「あんなまじめな子が大それたことを・・・・」、そう語る父親の傍では母親は泣き崩れていました。野次馬は両親の演技に拍手喝采します・・・・。


「第5章 立てこもりは長期戦に」

 既に日は暮れていました。これまで頼りない署長に代り指揮を執っていたのは県警本部次長の深川(原田大二郎さん)でした。死体役の深川の父親であり、彼もキャリアでした。ところが、息子の深川がテレビカメラの前で大失態を犯したのです。


 尿意に耐えかねた深川が、平田巡査に罵声を浴びせます。「おまえら下っ端のノンキャリアは、キャリアである俺の言うことを聞いていりゃいいんだ。クズのノンキャリを使っているのは俺たちだ」、演習のライブ中継は地方局だけでなく、全国中継されていました。巨人・阪神戦に切り替えて・・・・。


 急遽設定されたのが、警察庁長官の謝罪会見でした。「カメラの前での警察官僚の不適切な発言に対し、国民に対し率直に謝罪したい」、もう終りだとつぶやいたのが、キャリアの両深川でした。次長には任せられないと出てきたのが、県警本部長でした。


「第6章 県警本部長銃殺騒動」

 平田巡査の腹は空腹のために鳴っています。平田巡査は、警察にヘリを寄こすように要求しています。陣頭指揮すべく駆け付けてきたのが、県警本部長です。「平田くん、中に入れてくれ。話し合おうじゃないか」とハンドマイクで呼びかけます。


 カメラの前で柏崎が吠えます。「今年限りで引退する予定の本部長は、衆院選に出馬が予定されています。人質になってもいいという覚悟で、犯人との対話に臨もうとしています」、しかし、その本部長があっさり「バンっ!」と射殺されたのです。唖然としたのが、本部長でした。


 演習とは言え、警察トップの県警本部長が殉職したのです。野次馬がまたもや大歓声を上げます。一度逮捕されたはずの共犯者が、自動車で駆け付けてきます。ふたりの女子行員を人質に自動車に乗り込みます。


 その時、狙撃部隊の隊長がキレたのです。信用金庫に一発、二発と実弾を撃ちこんだのです。野次馬がパニック状態になり、散り散りになります。その隙を突いて自動車を発進させます。向かったのが、ヘリが待機する空き地でした。


「最終章 最終地はチベット?」

 ヘリを止めていた空き地にも、機動隊だけでなく野次馬が集まっていました。平田巡査は、着くまでに女子行員ふたりに語っています。「ヘリで空港まで行き、旅客機を提供させる。その場で5億円を要求し、向かう先はチベットだ。そこで解放する」


 女子行員ふたりを人質に、平田巡査と共犯者は空に舞い上がります。野次馬が歓声を上げます・・・・。「終」


(蛇足) 平田と共犯者は5億円を手に入れ、チベットに脱出することを暗示する結末になっています。