第6726回「夏の庭 The Friends 感想、ストーリー、ネタバレ 湯本香樹実原作」 | 新稀少堂日記

第6726回「夏の庭 The Friends 感想、ストーリー、ネタバレ 湯本香樹実原作」

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 第6726回は、「夏の庭 The Friends 感想、ストーリー、ネタバレ 湯本香樹実原作 相米慎二監督」(1994年)です。


 湯本香樹実さんの同名児童文学が原作ですが、この作品につきましては、未読です。なお、ストーリーの紹介にあたっては、便宜上、部とサブタイトルを付けさせていただきます。


 映画版は、相米節炸裂の内容になっています。映画としての魅力を増しているのが、神戸弁で通していることです。その語感が、「死」を優しく包んでいます・・・・。


「プロローグ じじい、もうすぐ死ぬそうやで」

 豪雨の中、少年サッカーの試合が行われています。ファウルが連続し、乱闘騒ぎになりますが・・・・。場面は変わり、小学生たちが登校しています。「デブ、ばあちゃん死んだんやって?3日も休むて長すぎや」、木山と河辺が口々に言います。ですが、夏休みはもうすぐです。3人は、山下(デブ)の祖母の死で盛り上がります。


 木山と山下を呼び出しのが、河辺でした。「死ぬって、どういうことやろ?ごっつう興味があるねん、知りたいと思わんか。通り道のあの荒れた庭の家にひとりで住んどるじじい(三國連太郎さん)、もうすぐ死ぬって噂や。人が死ぬところ、見とうないか?」


 ここで、3人の少年を紹介しておきます。便宜上、姓ではなく特徴で呼ぶことにします。

① 河辺(メガネ)・・・・ 好奇心旺盛な少年です。じじいとの関与を最初に主張したのも彼です。父親に関して、創作癖があります。父親は、彼の幼時に既に亡くなっているのですが・・・・。


② 木山(便宜上、ノッポ)・・・・ 少女から最もモテますが、普通の常識的な少年です。


③ 山下(デブ)・・・・ 魚屋のせがれです。そのため、包丁の扱いに関しては自信があります。マイ・ペースな少年です。後に、老人からは「関取」と呼ばれるようになります。


「第一部 最初は好奇心から」

 3人の日課は、じじいウォッチングに終始します。少年サッカー・チーム「KAZE」の練習もおざなりになります。チーム・メイトから「じじいの家、のぞきよる。母ちゃんに言いつけたる」と言われますが、じじいの庭には、毎日出かけます。


 そして、じじいが3日に一度、スーパーに買い出しに行くことを突き止めます。この頃には、老人にも分かっていました、3人の少年が付きまとっていることを・・・・。夏休みに入りましたので、少年たちの行動も大胆になります。露骨に尾け始めたのです。


 いったん見失ったときに、ちょっとした事件が起きました。手分けして探したのですが、病院を担当したのは、ノッポでした。迷宮のような病院内で、霊安室に踏み込みます・・・・。場面は変わり、老人からは、「しっ!しっ!」と追い払われますが、メゲない3人組でした。根負けしたのでしょうか、老人は3人を呼び寄せ、洗濯物を干すのを手伝わせます。


 こうなりますと、少年たちは積極的でした。庭の草抜きにチャレンジしたのです。3日かかったのですが、庭は広くなりました。秋にそなえ、コスモスの種を植えます・・・・。さらに、障子の張替、屋根のペンキ塗りなど、積極的に手伝い始めます。少年たちにとっては楽しい日々でした・・・・。


「幕間 嵐の夜」

 台風が接近した夜、ノッポはコスモスが気になり、老人の家に行きます。既に、メガネとデブも来ていました。老人に「嫁さんは?」と訊(き)きますと、別れたと答えます。「古香(ここう)弥生という名前や。戦後すぐに別れた」と字を説明しながら話します。そして、聞かれるままに戦争体験についても・・・・。


 「戦争いうても、わしはジャングルを徘徊しただけや。隊行動をしてる時、偶然、小さな家を見つけたんや、住んどったのは老人と女子供だけや。皆殺しにした、逃したら通報されるけに。わしも銃で女を殺した、大きな腹をしとった、触るとドキン、ドキンと大きく動いとった・・・・」、後は言葉になりません。


「第二部 弥生を探せ、そして、老人の突然の死」

 少年たちは、老人に別れた妻と会わせることを決意します。しかし、分かっているのは、古香弥生という名前だけでした。しかし、見つけ出したのです。弥生(淡島千景さん)は養護老人ホームにいました。認知症のようです・・・・。ホームを訪ねると、部屋から出てきたのは近藤先生(戸田菜穂さん)でした。


 近藤先生は、少年たちが老人のお手伝いをしていることを知っていました。そして、古くなって読めなかった表札に書かれた名前を教えてくれたのです。「傳法喜八」だと・・・・。しかも、弥生が祖母であり、喜八が祖父であることも話します。しかし、当の弥生は「夫は戦死いたしました」と答えるだけでした・・・・。


 近藤先生は、喜八宅を訪ねます。しかし、喜八は祖父であることを否定します。しかし、一方的に近藤先生は語り続けたのです。「傳法さんが出征した時には、祖母は既に妊娠していました。そうして生まれたのが母でした。しかし、そんな母も交通事故で亡くなりました」、喜八はただ近藤先生の言葉に耳を傾けます・・・・。


 子どもたちが、喜八の家に顔をだします。「明日、弥生に会いに行こうと思っている。きみたちは?」と喜八は聞きますが、少年たちにはサッカーの試合が入っていました。翌朝、喜八は出かけます。子どもたちもサッカーの試合に行きます。勝敗は描かれていませんが、子どもたちには笑顔があふれていました。


 試合が終わると、喜八の家に直行します・・・・・。しかし、眠るように喜八は亡くなっていました。何度も何度もノッポは心臓マッサージをしますが・・・・。場面は変わり、葬儀会場に移ります。3人の少年に、唯一の肉親だと称する伯父が現れます。結構な金額に上る遺産は、すべて弥生に遺したようです・・・・。


 少年たちは、友人として火葬場まで同行します。そこに現れたのが、近藤先生と弥生でした。葬儀屋の反対を押し切り、弥生に喜八の死に顔を見せます。最初は戸惑っていた弥生は、床に正座します。「お帰りなさいまし」と言い、深々と頭を下げます。


「エピローグ コスモス畑の中の井戸」

 3人は、喜八の庭にいました。コスモスの花が一面に咲いていました。帰ろうとした3人は、ふと蝶の死骸に気づきます。「葬ってやろう」、誰が言ったわけでもなく、井戸の蓋を開けます。


 その時、小さな奇跡が起こりました。井戸から多種多様な蝶が舞いあがり、再び井戸の中に戻ったのです。のぞくと、ホタルも点滅していました。「じいちゃんや!見送ってやろう」


 3人が手入れした家と庭は、住む者もなく、そのまま放置されています。屋根瓦も崩れ落ちています、あれから10年以上経過したのでしょうか・・・・。