第6257回「北野武駄作?劇場 第7作 HANA-BI/ハナビ 感想、ネタバレ 岸本加世子」 | 新稀少堂日記

第6257回「北野武駄作?劇場 第7作 HANA-BI/ハナビ 感想、ネタバレ 岸本加世子」

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 第6257回は、「北野武駄作?劇場 第7作 HANA-BI/ハナビ 感想、ストーリー、ネタバレ 岸本加世子」(1997年)です。


 北野さんのバイク事故が色濃く反映されている作品です。主役は3人です。元刑事の西(北野武さん)と、下半身不随のやはり元刑事の堀部(大杉漣さん)と、画家としての北野武さん本人です。堀部が描いたとされる絵が映画の重要なモチーフになっています。


 そして、久石譲氏の再起用(「キッズリターン」)と、撮影は山本英夫さんです。この映画を語る上では、このふたりを抜きにしては不可能かと思います。


 オープニングタイトルのバックに、北野画伯の絵が映されます。冒頭30分ほどは、西(北野武さん)と堀部(大杉漣さん)の現在と過去が交錯して描かれています。ふたりとも、かつては刑事でした。当時、西の家庭の事情を知り尽くしている堀部は、張り込みを買って出ます。


 一方、西は妻の入院先で医師から、「奥さんの余命はわずかです。自宅で過ごすのがベスト、旅行もいいですよ」と告げられます。寡黙な西は、妻(岸本加世子さん)の病室にいても黙して語りません・・・・。そんな時に、堀部が銃撃されたとの連絡が入ったのです。


 西は、駅の構内で強引に犯人の身柄を確保しようとします。悲劇はその時に起きました。若い刑事と中村刑事(寺島進さん)が撃たれたのです。若い刑事は命を落とします。犯人に投げ飛ばされていた西は、犯人を一発で仕留めます。さらに、死体に向かって全弾撃ちこんだのです・・・・。


 映画では直接的には描かれていませんが、西は懲戒解雇処分を受けたものと思われます。しかも、ヤクザから多額の借金をしています・・・・。一方、銃撃された堀部は、下半身不随になっていました。以降、妻子にも去られ車椅子生活を続けています。「絵でも描けば」と去り際に妻が言ったそうです。


 そんな堀部に、西は画材一式を発送します・・・・。一方、西はアウトローの生活に徹していました。チンピラとかヤクザには容赦しませんでした。この映画では、北野さんにほとんどセリフはありません(あっても極めて短いものです)。チックの症状を意図的に演出しています。


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 そんな西に、ヤクザが揺さぶりを掛けます。「元刑事と言っても、今じゃただの人じゃないか。利息だけでも払いなよ」、即座に西は反撃します・・・・。西に医師の言葉が蘇ります。「奥さんと好きに暮らしてください。旅行もいいですよ」


 西が企てたのが、銀行強盗でした。アウトローな西を応援したのが、愉快な自動車修理工の親父(渡辺哲さん)でした。西は彼から安く仕入れた盗難タクシーを、パトカーに改装します。さらに、モデルガンも改造します・・・・。


 警官の制服姿で銀行に乗り込んだ西は、なにも言わずにひとりの女子行員に銃を突きつけ、袋を渡します・・・・。誰にも気づかれない状況で現金を奪取しました。ヤクザからの借金を完済した西と妻は、旅に出ます・・・・。


 この間の堀部と西の心象風景は、堀部が描いた絵によって描写されています。翼のある聖人、デフォルメされた花、そしてバイク事故前後の北野さんの心の闇・・・・。


 西と妻の旅行は、自動車での移動を考えていました。多分に西が妻の体調を気遣ったからだと思われます。先ずは鎌倉でした。夫婦で記念写真を撮ろうとしましたが、前を自動車が横切ります・・・・(芸人らしいサービスです)。石庭で砂を乱したこと、いたずらで寺の鐘を突いたこと、妻にとっては貴重な思い出になります。


 さらに移動します、狭い道路の両側には、雪が降り積もっていました。"大沢館"にとまります。妻は、遺影のつもりでしょうか、ひとりで写真を撮ります。移動の間に妻が繰り返していたのが、木製のパズルでした。木のピースで、図形を作る遊びです。一方、堀部の描く絵は、次第に暗さを増していきます・・・・。


 この旅では、かつて西が金を借りていたヤクザが追っていました。一度は西に殴り倒されたのですが、銀行強盗が西の仕業たと分かってからは、金を強奪しようと考えていたのです。しかし、返り討ちにあいました。3人が殺されます・・・・。


 ここまで事態が進みますと、さすがに警察もかばいきれません。中村刑事が西を追っていました。日本海に面した砂浜で、西を追いつめます。「ちょっと、待ってくれ」、砂浜では、少女が凧上げをしていました。黙って、西は妻が座っている場所に腰掛けます。妻も分かっていました。「ありがとう」


 画面は、日本海を映し出します。銃声が一発、しばらくしてまた一発・・・・。少女に驚愕の表情が浮かびます。久石氏の音楽に乗って、静かにエンディング・ロールが流れます。


(補足) 2枚目の写真は、"AllMovie(英語版)"から引用しました。


(追記) 北野作品につきましては、日本映画専門チャンネルの放映に合わせて、順次ブログに取り上げる予定です。既に書いているブログに興味がありましたら、お手数ですが、ブログ・トップ左側にあります"ブログ内検索"欄に、"北野"と御入力下さい。