第5913回「さびしんぼう 大林宣彦監督 その1、感想 日本映画マイ・ベストテンの一作」
第5913回は、「さびしんぼう 大林宣彦監督 その1、感想 日本映画マイ・ベストテンの一作」(1985年)です。
テーマとモチーフが明確に打ち出されている映画です。「人を恋(こ)うる人は、みんなさびしんぼう」というテーゼが提出されています・・・・。モチーフは、ショパンの「別れの曲」です。本来のピアノ曲だけでなく、管弦楽、ハミングなど、全編を通じて随所で流されています。当然、別れがあります・・・・。
私が劇場で観た際には、前半部分で15分ほど居眠りしました。ありふれた学園コメディと思えたのと、当時は常に三合ほど飲んでから劇場に入っていたことが原因かと思います。しかし、目覚めた時、すごい映画に立ち会っているという感動に包まれました・・・・。
同じことが、黒澤監督のプロ意識を刺激したのではないでしょうか。『 黒澤明はこの作品を大変気に入り、自分のチーム“黒澤組”のスタッフにも見るように指示したというエピソードもある。 』(ウィキペディア) このことは、公開後早い段階から映画好きの知人から教えられました。ただ、教えた当人は、このような映画を好まない人物なのですが・・・・。
一昨年(2011年6月)に書いたブログでこう書きました。
『 日本映画のベストテンを選ぶとしましたら、私なら躊躇(ちゅうちょ)なく、この作品(「愛を乞うひと」)を挙げます。順不同で列挙するとすれば、
① 東京物語(小津安二郎監督、1953年)
② 七人の侍(黒澤明監督、1954年)
③ ゴジラ(円谷英二特撮監督、1954年)
④ さびしんぼう(大林宣彦監督、1985年)
⑤ 愛を乞うひと(平山秀幸監督、1998年)
⑥ 下妻物語(中島哲也監督2004年)
・・・・
あとの4作は、正直、気分次第で変ると思います。また、今後公開される作品によっても変ってくると思います・・・・。このブログでは、映画以外も取り上げていますので、せめて5000回を超えた段階で、残りの4作品について触れようと考えています。 』
ほぼマイ・ベストテンの選定は終えているのですが、ブログに取り上げるのは今しばらく待ちたいと思います。ところで、奇(く)しくも「愛を乞うひと」も一人二役でした。虐待し続けた母親と長じた娘を、原田三枝子さんが演じていました・・・・。「さびしんぼう」では、"さびしんぼう"と"変てこなの"の二役を、富田靖子さんが演じています。
大林演出は、黒澤監督が激賞したように「映画教本」のような完成度を見せています。次回、ストーリーについて書く予定です。