第5885回「CURE/キュア 黒沢清監督 その2、ストーリー、ネタバレ 役所広司、中川安奈」 | 新稀少堂日記

第5885回「CURE/キュア 黒沢清監督 その2、ストーリー、ネタバレ 役所広司、中川安奈」

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 第5885回は、「CURE/キュア 黒沢清監督 その2、ストーリー、ネタバレ 役所広司、中川安奈」です。


 映画は、カウンセリングのシーンから始まります。女性(中川安奈さん)は精神科医に語ります。「この本(青髭※)のラスト、知っています。女が青髭を殺すんですね」


 場面は変り、ラブ・ホテルに移ります。一室で娼婦が殺されていました。喉には「×」印が、死後刻まれていました。犯人の身柄は確保されます・・・・。


 その頃、記憶障害の青年(萩原聖人さん)が、海岸を彷徨していました。そんな青年を放置できなかったのが、小学校教師でした。自宅に連れ帰ります。その青年は、教師に妻への不信を植え込みます・・・・。翌日、教師は、妻殺しの罪で逮捕されます。死体には×の刻印が刻まれていました。


 一連の事件の捜査を担当したのが高部刑事(役所広司さん)でした。既に何件も同種の事件が発生していたのです。マスコミに遺体の状況を公表していませんので、模倣犯ではありません。では、何故、期を一にして、同種の事件が発生したのでしょうか。


 高部刑事には、仕事以外にも悩みがありました。妻の文江が心を病んでいたのです。うつ病というより、統合失調症(精神分裂症)に近いかもしれません。そんな中での捜査です・・・・。そして、事件は続きます。記憶障害の青年は、定年間近の巡査に保護されていました。そして、ライターの灯を使い、暗示を掛けます・・・・。


 翌日、その老巡査は、同僚を射殺します。さらに、青年は風邪のため、内科を受診していました。担当した若い女医にも、こぼれた水を使って暗示を掛けます・・・・。女医は、男子用の公衆トイレで男を切り裂きます。巡査も、女医も、死体に×印を残していました。


 最近二件の殺人事件は、青年へとつながっていきます。尋問したのは、高部刑事でした。親友の精神科医である佐久間(うじきつよしさん)も捜査に協力することになります・・・・。高部は佐久間に、催眠術で殺人を実行させることは可能かと聞きます。「催眠で、倫理観を変えることはできない。人殺しをさせるなど、不可能だ」、佐久間は簡潔に答えます。


 青年の姓は、間宮だと判明します。かつて医学部に所属し、催眠療法の講義も受講していました。しかし、当人は、一切憶えていないと答えるだけです。捜査陣をわざと怒らせるような挑発行為に出ることもしばしばです。


 そんな中、高部刑事が自宅に帰ると、テーブルに夕食が用意されていました。ステーキだったのですが、肉は焼かれていませんでした・・・・。高部は、事件が解決するまで、妻を精神病院に預かってもらうことにします・・・・。


 病院を去ろうとする高部に、担当の医師が声を掛けます。「働きすぎは禁物ですよ。私には、あなたの方が患っているように見えます」


  東京に帰った高部は、佐久間から短い映像を見せられます。初老の女性が映されていました。「村川スズという女だ。1898年に息子を殺し、喉に×を刻んだ」、その後、スズは精神病院に収容されたようです。合わせて、佐久間は間宮を「伝道師だ」と評しますが、あわてて取り消します・・・・。残りは20分ほどです。説明のないまま、多数のカットで物語は進みます。


 佐久間は、廃棄された精神病院とおぼしき建物を訪れます・・・・(スズが入院していた病院?)。数日後、佐久間は死体で発見されました。自ら刃物で自殺したようです。喉には×印が・・・・。片手は、手錠でつながれていたようです。高部刑事には思い当たることがありました。佐久間の部屋の壁には、大きく×が書かれていたのです。


 高部刑事は、病院から間宮を逃します。高部も、精神病院と思われる廃屋を訪ねます。間宮がいました。軽口を叩く間宮に、全弾を撃ちこみます。「憶い出したか?」 妻の入院している精神病院であわただしく死体らしきものが、ストレッチャーで運ばれていました・・・・。


 高部刑事は何度か来ているファミリー・レストランで食事をしていました。これまでは、ほとんど食べ残していたのですが、今夜は完食です。ウェートレスがサラを下げ、「コーヒーをお持ちします」と言います。カメラは遠景でウェートレスを追います。同僚に慰められ、そのあと、何か(包丁?)を握り、決然とした態度で歩き始めます・・・・。


 ここで夕日をバックにエンディング・ロールが流れます。"goo映画"では、もっと突っ込んだ記述になっています。ラスト部分を引用します。


 『・・・・ 高部は、本当の自分に出会いたい人間は必ずここにやって来ると間宮が言う、森の中の廃屋で間宮と再会し、そして彼を殺害した。すべては終わったかのように思われたが、病院では文江がX字に切り裂かれて殺され、高部のいるレストランでは、ウエイトレスが店長に包丁を向けていた。』


 高部は新たな伝道師となったのか、ウェートレスに殺意を暗示したのは高部か、妻は何者かに殺されたのか、・・・・。いかようにも解釈できるエンディングです。


(追記) 感想につきましては、その1に書きました。