第5541回「伊丹十三劇場、第五作、あげまん、ナヨコと鈴木主水 感想、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第5541回「伊丹十三劇場、第五作、あげまん、ナヨコと鈴木主水 感想、ストーリー、ネタバレ」

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 第5541回は、「伊丹十三劇場、第五作、あげまん、ナヨコと鈴木主水 感想、ストーリー、ネタバレ」(1990年)です。


 あげまん・さげまんとは、『 芸人などの隠語で、運気が上向くこと(「あげまん」)、または下降すること(「さげまん」)を指す。「まん」は「間」が転化したもので、運気・潮目・出会い・巡り合わせの意味(関西方言では「まん(間)がよい/わるい」という使い方もある)。・・・・ 』(ウィキペディア)のことですが、転じて下品な表現にも使われています…・。


 公開当時、「あげまん」は流行語ともなり、興業的には「マルサの女 二部作」に続いて成功を収めました。ただ、個人的にはつまらないラブ・ストーリーだというのが実感でしたが・・・・。


「長いプロローグ 芸者ナヨコの半生」

 生まれたばかりのナヨコは、稲荷神社に捨てられていました。彼女を拾って育てたのが、芸者置屋の女将でした。こうして、置屋の環境で育ったナヨコ(宮本信子さん)は芸者となります。18歳の時、彼女に転機が訪れました。僧侶・多聞院(金田龍之介)に水揚げされ、「囲い者(妾)」となったのです。


 その後、僧侶は、宗派の中で、異例の出世を遂げました。いつしか、ナヨコは"あげまん"の女と呼ばれるようになります・・・・。しかし、高齢の僧侶は脳溢血のため亡くなります。そこそこの資産を手に入れた21歳のナヨコは、第二の人生を歩き始めます・・・・。


「第1章 銀行員・鈴木主水との出会い」(10年後)

 10年後(ナヨコ31歳)、ナヨコは、銀行で頭取秘書として働いていました。主水(津川雅彦さん)との出会いは、電車の中での痴漢冤罪事件でした。同じ銀行に勤めていることを知ります。こうして、反発しあっていた二人が付き合うことになったのですが、ナヨコの"あげまん効果"は、次第に鈴木主水にも影響を及ぼし始めます。


 主水は、頭取(大滝秀治さん)の課した試練を見事に乗り切り、最年少の役員に抜擢されました・・・・。しかし、主水は頭取の奨めるまま、財界大物の娘・瑛子(MITSUKOさん)との結婚を了承したのです。ここまでが、映画の半ばです。


「第2章 政財界の黒幕・大倉善武の"あげまん"に」(数年後)

 失意のナヨコが向かったのが、かつてから彼女の"あげまん"の資質を買っていたフィクサーのもとでした。大倉(島田正吾さん)は、あげまん効果を満喫しますが、代償としてナヨコの希望をすべてかなえました。置屋を作り、ナヨコは芸者として再デビューさせたのです。


 大倉が画策していたのが、次期総理候補・鶴丸(北村和夫さん)を確実に総理にすることでした。そのためには、数十億の金が必要です。ターゲットになったのが、主水の勤める銀行でした。大倉は、頭取のゲイ趣味を恐喝材料にして、鶴丸に10億円を貸し付けさせます・・・・。


 この時、担当となったのが、主水でした。後に、かれを苦境に追い込みます・・・・。一方、主水は酒席でナヨコと再会します。しかし、ナヨコは自分を裏切った主水が許せません・・・・・。


「第3章 10億円を取り戻せ!」

 ナヨコを裏切ったのは主水だけではありませんでした、大倉も裏切ったのです。これには、裏がありました。総理候補の鶴丸が末期のがんに冒されていたのです。ただ、当人は知りませんでしたが・・・・。その事実を最初に掴んだのは、鶴丸の政敵であった犬飼(宝田明)でした。


 犬飼は、ナヨコを抱かせることを条件に、大倉に鶴丸の病状を教えます・・・・。一方、主水はナヨコが犬飼に抱かれたことを知りますが、それ以上に主水本人が追いつめられていました。鶴丸へ貸し付けた十億円の貸付担当者は彼だったのですから・・・・。


 いったんは軽蔑された恋人(主水)のために、ナヨコが立ち上がります。鶴丸に掛け合ったのです。「先生の余命はわずかです。十億円というはした金のために、政治家としての汚名を後世に残していいんですか」、鶴丸は瀕死の状態でパーティを開きます。


 その頃、主水は頭取から糾弾されていました。ですが、もはや主水に銀行への執着はありませんでした。すべてをバラすと反論する主水を、背任で刑事告訴すると頭取が喚きます・・・・。その時、頭取室にやってきたのが、ナヨコでした。十億円の入った袋を引きずりながら・・・・。


「エピローグ あんたぐらい、養うわよ」

 ナヨコと主水は、橋の欄干にもたれかかっていました。主水は銀行をくびにされました。ナヨコは元気に話しかけます。「あんたぐらい、私が養うわよ」、前にも言ったセリフです。


(蛇足) 大倉にとっては、あげまん効果はありませんでした。「あげまん効果」を観客に納得させることが、この作品の生命線だったのですが・・・・・。


(追記) 伊丹監督作品について書いたブログは、次のとおりです。

「お葬式、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11184021698.html

「お葬式、ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11184197527.html

「タンポポ、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11189588292.html

「タンポポ、ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11189788121.html

「マルサの女、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11217179199.html

「マルサの女、ストーリー」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11217207059.html

「マルサの女2、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11224263365.html

「マルサの女2、ストーリー」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11224613739.html


「ミンボーの女、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11262117989.html

「ミンボーの女、ストーリー」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11262180737.htm

「スーパーの女、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11309471587.html

「スーパーの女、ストーリー」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11309620305.html

「マルタイの女、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11303781876.html

「マルタイの女、ストーリー」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11303820987.html