第4773回「はなれ瞽女おりん、その1、撮影:宮川一夫が魅せる大傑作映画」 | 新稀少堂日記

第4773回「はなれ瞽女おりん、その1、撮影:宮川一夫が魅せる大傑作映画」

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 第4773回は、「はなれ瞽女(ごぜ)おりん、その1、撮影:宮川一夫が魅せる大傑作映画」(1977年)です。日本映画専門チャンネルで、岩井俊二監督と篠田正浩監督が、1時間にわたり対談していました。この作品について、篠田監督が、自作解説するという企画です。


 主な内容を挙げますと、

1. 1960年代の後半から1970年代は、"映画難民"の時代だと解説します。アメリカでは、低予算の傑作、ニュー・シネマを生み出した時代です。世界的に、映画がテレビに圧倒された時代です。篠田監督は逆説的にチャンスだと語ります。


2. そのためもあって、世界的なカメラマンである宮川一夫氏(※)を、北陸の四季を追うために1年間拘束できたと豪語します。宮川さんが撮影したいうだけで観るに値する映画に仕上がっています。とかく、宮川さんに関しては、溝口健二監督、黒澤明監督作品に注目を浴びていますが、市川崑監督とか篠田監督作品も多数撮っています。


3. 瞽女(ごぜ)とはいかなる存在か、篠田監督はストレートに語ります。「盲目の芸人集団であった瞽女は、村人たちから崇敬される存在であり、一方で差別の対象でもあった。レイプなどもあったようである」 当時、家族を失った(あるいは捨てられた)視覚障害の女性が生き延びるためには、按摩か娼婦か瞽女しかなかったと・・・・。


4. 妻でもある主演女優の岩下志麻さんについては、「現場では、"おまえ"とか"志麻"とか呼ばずに、"岩下さん"と声を掛けていた」と答えています。あわせて、瞽女としては美人として描き過ぎたと反省の弁も述べています。ですが、ラスト、真の汚い瞽女が描かれています。さらに、原作では描かれていない"おりん"の最期も・・・・。


5. 無条件で誉めた俳優として、樹木希林さんの名前を出しています。映画の後半、おりんは、はなれ瞽女の"おたま"と共に門付け(かどづけ)します。その"おたま"役が希林でした。全盲ではなく、弱視として描かれています。おりんの最大の理解者です。


 最後になりましたが、"瞽女"について、ウィキペディアから引用します。

 『 「盲御前(めくらごぜん)」という敬称に由来する女性の盲人芸能者。近世までにはほぼ全国的に活躍し、20世紀には新潟県を中心に北陸地方などを転々としながら三味線、ときには胡弓を弾き唄い、門付巡業を主として生業とした旅芸人である。女盲目(おんなめくら)と呼ばれる場合もある。 』


 神と三々九度を重ね、男と交わらないことを掟としています。神が夫ということであり、阿弥陀仏を導き手として崇めています・・・・。座頭市の女版ともいうべき「ICHI 市」(※、綾瀬はるか主演)も、瞽女がヒロインです。


 観ていまして、実に辛い映画です。ですが、10年に一度とも言うべき傑作映画であることに間違いありません。次回、ストーリーについて書く予定です。


(追記1) 宮川一夫氏が撮影を担当した映画で既にブログに取り上げている映画は、次のとおりです。

「雨月物語」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10123019310.html

「羅生門、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10645672963.html

「羅生門、ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10645751741.html

「用心棒、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10740857441.html

「用心棒、ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10741310608.html

「炎上、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11261304166.html

「東京オリンピック、感想」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11269010352.html

「東京オリンピック、構成」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11269140896.html


(追記) 「ICHI 市」については、2回に分けてブログに取り上げました。

「感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10739053972.html

「ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10739755905.html