第4212回「家族ゲーム、その2、ストーリー、ネタバレ、森田芳光監督、松田優作主演」 | 新稀少堂日記

第4212回「家族ゲーム、その2、ストーリー、ネタバレ、森田芳光監督、松田優作主演」

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 第4212回は、「家族ゲーム、その2、ストーリー、ネタバレ、森田芳光監督、松田優作主演」です。作品の紹介にあたり、便宜上、章とサブタイトルを付けさせていただきます。


「プロローグ 沼田家の朝食」

 臨海工業地帯に、約10階建ての団地があります。その一室に住まう四人家族が沼田家です。あわただしく、そして、騒々しく朝食を摂ります。マイクは、ズルズル、ガツガツ、ガッチャンと、マナーに欠ける沼田家の音声を拾います・・・・。


 ここで、四人家族を紹介しておきます。一家揃って摂る夕食では、画面向って左側から一列に並びます・・・・。

① 沼田千賀子(由紀さおりさん)・・・・ 専業主婦であり、子どもの教育に悩んでいる普通のお母さんです。夫が、息子ふたりの教育を押し付けてくることに不満を感じています。


② 沼田孝助(伊丹十三さん)・・・・ 沼田家の主人、職業は明らかにされていません。息子ふたりの教育は、妻任せにしています。一方で、次男に家庭教師を付けることを決めたのも孝助です。彼が安らげるのは、自動車の中だけです。


③ 沼田慎一(辻田順一さん)・・・・ 沼田家の長男、現在西武高校1年です。折角、進学校に合格したのですが、学校には、あまり出ていないようです。天体観測が趣味です。


④ 沼田茂之(宮川一朗太さん)・・・・ 沼田家の次男、現在中学3年生、彼のために、家庭教師が付けられることになるのですが・・・・。学校では、幼なじみの土屋から、イジメられています。ある意味、この映画は、茂之の再生の物語です。趣味は、ジェット・コースターの模型作りです。成績は、クラスの下から9番です。


「第1章 家庭教師登場」

 沼田家に家庭教師として、吉本勝が雇われます。彼が沼田家への移動手段として使うのは、何故か常にシーバスです。

⑤ 吉本勝(松田優作さん)・・・・ 三流私学の城南大学7年生、沼田家の父親である孝助から、順位がひとつ上がるごとに、1万円の成功報酬を支払うとの約束を取り付けます・・・・。彼は、いかなる教育方針で、茂之の成績を上げることができるのでしょうか、映画の見所のひとつです。


 最初に教えたのは、"古文"でした。教科書で現在習っているのは、「奥の細道」でした。吉本は、分からない古語について、すべてノートに書き付けるように指示します。吉本は、その間、植物図鑑を見続けます・・・・。茂之は、ひたすら「夕暮れ」と書き続けてました、数百字以上書いたのではないでしょうか。


 「おまえ、俺をなめてるのか?」、後頭部を殴られた茂之は、顔面を机にぶつけ鼻血を出します・・・・。もちろん、母親の千賀子は、ひたすらオロオロするだけです・・・・。


「第2章 吉本の教育方針」

 この映画は、35ミリ・スタンダードで撮られています。アップで、吉本と茂之が撮られているのですが、ふたりの距離も極めて近いのです。「きみ、かわいいね」、吉本は茂之の頬にキスをします・・・・。最初の暴力が利いたのでしょうか、次第に、茂之も真剣に勉強し始めます・・・・。


 一方、茂之はイジメられながらも、挑発行為を繰り返しています。当然、イジメもエスカレートしていきます。ついに、土屋たち5人に殴られます・・・・。その日も、吉本の授業は続けられます。勉強の終わった後、団地の屋上で、吉本はケンカの仕方を教えます。


「第3章 茂之の進路決定」

 この間にも、沼田家の夕食光景が、何度か描かれています。座る順序は一切変わりません。ただ、家庭教師の吉本はセンターの位置に座ります・・・・。


 茂之は、担当から進路決定を聞かれ、マイナーな高校の名前を上げます。兄が通っている西武高校の合格ラインに達しているのですが・・・・。当然、両親は不満です。息子の教育を任されている母親は、進路変更を吉本に頼みます。


 何とか理由をつけて応じようとしない担任教師の目前に、茂之を呼び出した吉本は、茂之の口から進路について語らせます・・・・、「西武高校です」。一方、同級生の土屋は、いつもの河川敷で茂之と対決します。ですが、吉本から格闘技の基本を習った茂之は、簡単に土屋を倒します。


「第4章 受験の行方、吉本の行方」

 そして、受験が始ります。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。


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 吉本は、ある意味、教育の天才かもしれません。自分の勉学は別にして・・・・。予定調和のうちに、茂之は合格します。もちろん、母親の千賀子は、喜びます。家庭とは距離を置く父親の孝助も、それなりに満足しています。家庭で、お祝いをすることになったのですが・・・・。


「第5章 最後の晩餐」

 沼田家の4人と吉本が、いつものように、横一列に座り、食事を取ります。細長いテーブルの前には、キャスターのついたワゴンが置かれています。各人は、それぞれワゴンを引き寄せ、料理を取り分けます・・・・。父親の前には、ワインも置かれています。


 最初は、お祝い気分で始まったのですが、次第に座が乱れていきます。決定的になったのは、長男の慎一の進学問題が出てきてからです。父親は、三流私学の吉本には、家庭教師は任せられないと言い切ります。吉本は、次々とワインのグラスを空けます・・・・。ですが、酔わずにいつもの吉本です。


 ですが、吉本は、慎一と茂之とじゃれあいながらも、料理を皿の上にぶちまけ始めたのです。さすがに、家族も吉本の異常に気付きます。立ち上がった吉本は、長テーブルの一方を持ち上げ、一挙に料理を床に落とします・・・・。


 家族4人は、茫然としながら、片づけをします。


「エピローグ その後」

 いかようにも解釈可能なエピソードが、エンディング・ロールのタイトルバックとして使われています。慎一と茂之は、部屋で眠っていました。母親の千賀子は、息子二人が眠っているのを確認しますが、起こそうとはしません。外では、ヘリが飛び回っています。「事件でもあったのかしら」


(追記) 感想につきましては、"その1"に書きました。

http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-11121885905.html