第3921回「名探偵ポワロ全集、第19巻、エッジウェア卿の死、その1、感想、壮大なアリバイ作り」 | 新稀少堂日記

第3921回「名探偵ポワロ全集、第19巻、エッジウェア卿の死、その1、感想、壮大なアリバイ作り」

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 第3921回は、「名探偵ポワロ全集、第19巻、エッジウェア卿の死、その1、感想、壮大なアリバイ作り」です。アガサ・クリスティの好きな作品です。主要登場人物の全員に、殺人にいたる動機と、アリバイがあります。ラスト、事件の真相が、ポワロの口からすべて明かされます・・・・。


 この作品では、多種多様なイギリス文化が登場します。ドラマのの冒頭に登場する舞台劇は、「マクベス」です。黒澤明監督は、「蜘蛛巣城」(※)として翻案映像化しました。そして、主要登場人物のふたりが、アリバイを証明することになったコベント・ガーデンでの「ドン・ジョヴァンニ」、ロイヤル・オペラによる公演です。。残念ながら、オペラ・シーンはありませんが・・・・。


 映画「キャバレー」の舞台は、1930年代のベルリンです。この時代は、キャバレーの全盛期でした。このドラマでも、2度ほど登場します。1度目は、ドラマが始まった早い段階です。ポワロと主要登場人物が顔合わせをしています。そして、2度目では、ポワロは全ての真実を暴きだします・・・・。


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 さらに、日本人に分かりづらいのが、イギリス国教会とカトリックとの関係です。最近では、ロイヤル・ウェディングが印象に残っています。結婚式会場は、もちろんウェストミンスター寺院(国教会系)です。エリザベス女王(1世)の御父君であるヘンリー8世の離婚問題に端を発して、イギリス国教会が誕生しました・・・・。当然、貴族といえどもカトリックの場合には、"ウェストミンスター大聖堂"となります。


 ポワロ・シリーズの面白さは、戦前のイギリス文化にあります。ドラマでは、クリスティの戦後作品も、早い段階での作品も、すべて1930年代に設定しなおしています。第2次世界大戦前夜とも言うべき時代なのですが、当時を生きた人たちには、決して暗い時代ではありませんでした。


 そんな状況で繰り広げられる推理ドラマです。この推理ドラマでは、大胆なアリバイ工作が行われています。「点と線」(※)のような、当時としては新しい交通機関を使った安易なトリックではありません。大胆です。それだけに、ひとりひとりのキャラクターが重要な役割を負っています・・・・。


 そして、犯人はエッジウェア卿を殺して何のメリットがあったのか、もうひとつの面白さを、クリスティは提示しています。別な意味での"劇場型犯罪"です。そして、それらの推理ドラマの背景として輝いているのが、1930年代のイギリス文化です・・・・。


 そして、恋するポワロも描かれています。クリスティ・ファンなら、是非とも読みたい一冊ですし、観てみたい一編です。次回、ストーリーについて書く予定です。


(補足) 2枚目の写真は、5月4日に書いたブログ「東日本大震災、それでも、日本も世界も動く」(ビン・ラディン処刑ほか)にアップしたものです。産経新聞から引用しました。興味がありましたら、アクセスしてください。

http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10881521689.html


(追記) ※印をつけた作品について書いたブログは、次のとおりです。

「蜘蛛巣城、原作マクベス」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10678660248.html

「蜘蛛巣城、ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10678943315.html

「点と線」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10212652805.html