第3194回「ラヴクラフト全集、その29、魔女の家の夢、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第3194回「ラヴクラフト全集、その29、魔女の家の夢、ネタバレ」

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 第3194回は、「ラヴクラフト全集、その29、魔女の家の夢、ネタバレ」です。5月1日に祭られるのが、五月祭です。古代ローマに起源しています。そして、11月1日に祝われるのが、万聖節(諸聖人の日)です。それぞれに前夜祭があります。前者が"ヴァルキルプス"の夜であり、後者が日本人にも浸透しつつある"ハロウィーン"です・・・・。


 本編は、三人称で書かれています。主人公のギルマンは、学生です。舞台は、1920年代のアーカムです。既に、物理の時代は始っています。アインシュタインも、プランク、ハイゼルベルクもメジャーな存在になっています。ギルマンが興味を持ったのは、キザイア・メイスンです。17世紀後半の人物です。


 キザイアは、ある直線と曲線をもってすれば、異次元を通じて、宇宙のいかなるポイントへも移動できると豪語していました。自らの理論を実証するかのごとく、忽然と獄中から脱出しています。ギルマンは、キザイアがかつて住んでいた家に移り住みます。今では、下宿屋になっています。下宿屋の主人に頼み込み、キザイアの住んでいた部屋に住み込むことになったのですが・・・・。


 その下宿屋こそ、"魔女の家"と呼ばれている家です。ギルマンは、その日から、夜な夜な、摩訶不思議な夢を見ることになります。老婆と、巨大ねずみとも言うべき人面をした"ブラウン・ジェンキン"に関する夢です・・・・。ですが、ギルマンを襲った変異はそれだけには止まりません。夢遊病を、他の下宿人から指摘されたのです。その頃、街では子どもの誘拐事件が多発していました。


 ギルマンの症状(?)は、夢遊病だけに止まりません。夢と現実の区別がつかなくなり始めたのです。覚めている時も、老婆が見え始めたのです。さらに、天体の一点に魅かれていきます。海蛇座とアルゴ座の間です・・・・。混乱するギルマンの助けとなったのが、同宿のエルウッドです。


 このところナーヴァスになっているギルマンは、エルウッドの部屋で一緒に眠ることにします。最初の数日は安眠できたのですが、ついに破局を迎えることになります。夢の中で、ギルマンは、パジャマ姿のまま、老婆と巨大ネズミに導かれある家の前に行きます。そこには、黒人の大男がいました・・・・。


 このあたりで、エルウッドの夢は怪しくなります・・・・。そして、気付いた時、ギルマンは必死の叫びを上げます。ギルマンは、エルウッドの部屋ではなく、元の部屋に戻っていました。聞きつけた下宿の人々が、ギルマンの部屋に駆けつけます。部屋の周囲には、小麦粉がまかれていました。夢遊病を確認するためにギルマンが意図してまいていたものです。


 ですが、下宿人たちが入る前に、小麦粉に乱れはありませんでした。ギルマンは、不審死の状態で発見されます・・・・。密室殺人(?)です。街の噂では、老婆と黒人男とパジャマ姿の3人が目撃されています。この事件を契機に、下宿屋の主人は、下宿人を連れて、他の建物に引っ越します・・・・。


 時間が経過します。魔女の家は、急速に老朽化していきます。異臭も放っています。そして、倒壊の時を・・・・。壊れた建物の跡からは、魔道書などと共に、子どもたちの白骨死体が積み重なって、発見されました。


(補足) 写真は、ヴァルキルプスの夜を撮ったものです。ウィキペディアから引用しました。