第2731回「キサラギ、その2、"5人のオタク"、ストーリー、ネタバレ」(密室推理劇映画)
第2731回は、「キサラギ、その2、"5人のオタク"、ストーリー、ネタバレ」(密室推理劇映画)です。前回を読んでからの方が解りやすいと思います。http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10694423157.html
ハンドル・ネーム"家元"(小栗旬さん、写真中央)は、ホーム・パーティの準備を進めています。彼は、アイドル"如月ミキ"のスレッドを立ち上げていたのですが、キサラギの一周忌を、オフ会として楽しもうと考えていたのです。はっきり言って、"オタク"です。自慢のコレクターズ・アイテムを展示します。
家元は、如月ミキに200通のファン・レターを送ったほどの熱烈なファンでした。ミキからの返信ももらっています。「ファン・レターは、私の励ましとなりました。芸能界で何とかやってこれたのも、あなたのファン・レターのおかげです。これらのファン・レターは、私の宝物です」(要旨) もちろん、直筆のキサラギの手紙は、家元の宝物です。
出席予定者は、家元を含めて5人です。全員初顔合わせです。最初にやってきたのは、ハンドル・ネーム"安男"(塚地武雅さん、写真右端)です。本名も安男です。農業を仕事としています。ラフな格好です。家元も普段着です、一周忌をネタに、オフ会として楽しもうという主旨だからです。安男は、家元のコレクションを見ようとしますが、メンバーが揃うのを待ちます。
次に入ってきた"スネーク"(小出恵介さん、写真右側から2番目)は、一周忌ということで、一応喪服(黒服)を着ています。ですが、主催者である家元の趣旨に賛同し、楽しもうという考えに変わりますが・・・・・。"オダ・ユージ"(ユースケ・サンタマリアさん、写真左側から2番目)の登場と共に、スネークは、ころりと考えを変えます・・・・・。
オダ・ユージは、いやしくも一周忌である以上、粛然たる服装が必要だと話し始めたのです。家元は、なんとでもなるのですが、困ったのは安男です。喪服は持ってきていません。片道6時間、電車にやってきたのです。ですが、オダ・ユージの剣幕の前に、買ってくると言います。いったん、安男は退場します。
家元も着替えのため、一度出た後、カチューシャをした見知らぬ人物が入ってきます。残っているオダ・ユージとスネークは、大家だろうと思うのですが・・・・・。家元が戻った段階で、大騒ぎになります。大家ではなく、最後の人物、イチゴ娘(香川照之さん、写真左端)だったのです。
そして、安男が黒服に着がえて戻ってきます。これでオタク5人が揃ったのですが、安男は、自分で作ったパイにあたったのです。トイレに駆け込みます・・・・(安男退場)。最初は、家元のレアなコレクションで盛り上っていたのですが、オダ・ユージは、「ミキの死は、自殺ではない。殺人だ」と弾劾し始めます。
これまでの会話の一言一言が、伏線になっています。上質なミステリー劇です。以下、ネタバレとなります。
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オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリアさん)は、詳細に書き込まれた手帳に基づき、事件を再現していきます。自殺とされた最大の根拠は、火災の前にかけられた電話によるメッセージです。マネージャーは、「もう疲れました」と聞いています。そして、如月ミキは焼死しています。それを覆そうというのです。マネージャーは、茶髪でデブでした。ファンの間では、"チャデブ"と呼ばれ、嫌悪されていた人物です。
オダ・ユージと家元(小栗旬さん)が、激しいトーク・バトルを繰り広げます。この議論の中で、公務員だと言っていた家元は、警察官であると、身分を明かします。詳細に警察資料を調べ尽くしたと断言します。一方、オダ・ユージの発言は、一人のストーカーをあぶりだします。
キサラギの不在時、彼女のアパートに何者かが侵入し、布団とか衣類をきちんと整理整頓したというのです・・・・・。ここで変態っぽいイチゴ娘(香川照之さん)に視線が集中します。彼女がストーカーでした。生々しい会話が展開されます。笑えます。カチューシャは、その時、記念に盗ってきたものです。しかし、キサラギの死には関係していないと断言し、ひとりのモヒカン男がキサラギの部屋に入ったのを目撃したと言い出します。
雑貨店に勤めていたというスネーク(小出恵介さん)が、雑貨のデリバリー・サービスをしていたのです。今とは異なり、事件当時はモヒカンでした。しかも、その髪は赤く染められていました。その時、スネークは、キサラギの求めに応じて、洗剤とか、サラダ・オイルなどを専用の容器に入れたと証言します。
さらに、スネークは証言します。部屋に入ったとき、キサラギはゴキブリの出現のために、パニック状態になっていたとも話します。スネークは、ゴキブリには洗剤が有効だと話します。名残惜しみながらも、スネークは、そのまま出て行きます・・・・。
議論と証言の中、ついにオダ・ユージの正体が暴かれます。あの横暴なマネージャー"チャデブ"だったのです。今では痩せていますが、かつてはデブであったと告白します。下痢のため中座していた安男(塚地武雅さん)が戻ってきます。安男は、如月ミキが、幼なじみであったことを告白します。
一方、オダ・ユージに非難が集中します。如月ミキ自殺の原因がヘアー写真集にあったという話題が出たのです。いやがるキサラギに、マネージャーであったチャデブのオダ・ユージがヌードを強要したと・・・・・。ですが、数々の証言の中、如月ミキはヘアー・ヌードを積極的に考えていたことが判明します。
こうなると、キサラギと直接関係のなかった"ただのファン"は、家元一人になります。家元はいじけます。ここから、キサラギ事件は、一挙に解決に向かいます。キサラギはアロマ・キャンドルを愛用していました。そのキャンドルが出火原因になりました。逃げようとしたキサラギは、自分の宝物を取りに戻ります。その宝物とは、家元が出した200通にのぼるファン・レターです。
5人は、それぞれに、この解決に納得します。気を取り直した家元は、撮影禁止であったライブ(営業?)のビデオを見せるといいます。プロジェクターで映し出されます。部屋は、AKB48劇場になります。5人のオタクが、映し出された映像と共に踊り始めます・・・・。
ここで初めて如月ミキが映し出されます。マイナーなアイドルです、歌も下手です。振付も、ベタです・・・・・。演出上は、ミキの顔に、わざとらしくモザイクをかけてもよかったのではないでしょうか。そして、映像の中の司会者(宍戸錠さん)が、部屋に入ってきます・・・・。「キサラギは事故死などではない。殺人だ」 余計なエピソードです。
ですが、全編、会話の面白さが貫かれています。オタクとか、ミステリー・ファンならずとも必見の一作です。安男さん役の塚地さんが、最もオタクっぽいキャラになっています。
(追記) 一本の映画を、頭の中で再構成することが次第に困難になってきています。加齢現象でしょうか。若干時系列的に入れ替えている部分があります。