第2268回「パレード その1、総論 行定勲監督」(青春ミステリ) | 新稀少堂日記

第2268回「パレード その1、総論 行定勲監督」(青春ミステリ)

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 第2268回は、「パレード その1、総論 行定勲監督」(青春ミステリ)です。先入観なしに観た映画です。ちらしに書かれた「現代に潜む闇を切り取った、深遠なる衝撃の問題作」と、5人の俳優の名前と、演出が行定勲監督だということぐらいが、情報の全てでした。原作は読んでいません。


 行定監督は、「GО」を実質的なデビュー作とし、「北の零年」、「世界の中心で、愛をさけぶ」、「春の雪」など客を呼べる作品を撮る一方、独得な青春群像を撮り続けています。この映画も、マイナーな青春群像です。ですが、ヤングスターとも言うべき旬(しゅん)の俳優を起用し、その個性を引き出しています。


 舞台の多くは、賃貸マンションの1室です。2LDKのアパートに、男女4人がルーム・シェアリングしています。男2人が1室、女2人が1室を占拠し、リビング・バス・トイレは共有しています。帰り時間も各人のまちまちですので、一日顔を会わせないことも少なくありません。


 「呪怨」が使ったテクニックと同じく、登場人物の名前を章のタイトルに使っています。そのため、4章構成となっています。そして、同じく「呪怨」が使ったように、伏線が随所に張り巡らされています。上質なミステリとして、演出されています。


 章のタイトルを時系列で並べますと、

第1章 杉本良介 21歳・H大学経済学部(小出恵介さん)

 実家は長崎ですし屋を営んでいます。ですが、決して裕福な家庭ではありません。東京の大学に通えるのも父親の一言でした。「すし屋のオヤジになるより、すし屋の上客になれ」 さらに、「東京にいなければ作れないような友人を持て」 決して、大学生活に満足している訳ではありません。性格的には極楽とんぼ気質です。


第2章 大垣内琴美 23歳・無職(貫地谷しほりさん)

 ここで、タイトルがふたたび出てきましたので、映画の方向性が、やっと見えてきました。のんびりしたタイプです。性格的な悪さはありませんが、物事に無頓着な一面があります。トレーナー風の服が好きなようです。恋人との会話から判断すると、福岡の出身のようです。


第3章 相馬未来 24歳・イラストレーター兼雑貨屋店長(香里奈さん)

 へヴィ・スモーカーであり、酩酊することも少なくないようです。彼女の喫煙シーンが頻繁に登場しますので、上映中3度ほど、喫煙のため中座しました。個人的には、好きなキャラクターです。新宿2丁目のバーに入り浸っているようです。性格的には、白黒はっきりしています。


第4章 伊原直輝 28歳・独立系映画配給会社勤務(藤原竜也さん)

 4人の中では、年齢的にも、性格的にも大人だと言えます。会社から帰ると、ジョギングを日課としています。未来と同じく、歌舞伎町のゲイバーに出没していますが、恋人同伴で行っています。ゲイではないようです。


 そして、第5の居住者が現れます(記憶では、第2章あたりから)。

番外章 小窪サトル 自称18歳・男娼(林遣都さん)

 5人目の人物ですので、アパートでは、リビングのソファで寝起きしています。金髪に染めています。不可思議な行動を繰り返します。なぜ、アパートに現われのかも、ミステリの一つです(第3章で判明しますが)。ある意味、この映画で最も存在感を主張しているキャラクターです。


 これらのことは、全編を見終わった後に分ることです。舞台劇向きかもしれません。私自身、原作である吉田修一さんの同名小説を読んでいません。では、これから原作を読むかといいますと・・・・・・。次回、ストーリーを最後まで書く予定です。当然ネタバレとなります。


(蛇足) 写真は、宣伝用チラシをスキャンしたものです。タイトルである「パレード」の由来については、劇中で説明があったかもしれませんが、私の観ていた範囲では、セリフになかったと思います。ただ、3度ほど喫煙中座をしていますので、その間にあったかもしれません。最近珍しい、喫煙シーンの多い映画です。スモーカー向きの映画かもしれません。