第1672回「シャーロック・ホームズ、その31 美しい自転車乗り」(推理・古典) | 新稀少堂日記

第1672回「シャーロック・ホームズ、その31 美しい自転車乗り」(推理・古典)

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 第1672回は、「シャーロック・ホームズ、その31 美しい自転車乗り」(推理・古典)です。原題は、「孤独なサイクリスト」ですが、レトロな感覚を残す「美しい自転車乗り」が一般的でしょうか。阿部知二氏訳の「あやしい自転車乗り」は、いかがなものでしょうか。そのため、巻末に意訳である旨が表示されています。


 主要な事件関係者は、5人です。

① ヴァイオレット・スミス・・・・父親を亡くし、生活のために音楽教師をしている。大変な美人、婚約者がいる。

② カラザーズ・・・・南アフリカからの帰国者。ヴァイオレットの雇い主であり、紳士的な中年男性。

③ ウッドリー・・・・南アフリカからの帰国者。ヴァイオレットとの結婚を強行に進めようとしている粗暴な男。

④ あやしい自転車乗り・・・・ヴァイオレットの後をつける謎の男、ストーカー?

⑤ ウィリアムスン・・・・牧師(?) 最近、チャーリントン屋敷に引っ越してきた人物。


 ヴァイオレット譲は、伯父の近親者を捜しているとの新聞広告を目に留め、カラザースとウッドリーに会います。。伯父は南アフリカで貧窮の中、亡くなったと聞かされます。カラザースは、南アフリカのよしみで、好条件で音楽教師として雇ってくれると言うのです。父親が亡くなっていますので、ありがたい申し出です。平日は泊り込み、週末は母親の元に帰り、月曜に戻ってくるという勤務形態です。駅までの移動は、自転車を使っています。


 ホームズへの相談は、駅までの行き帰りに、尾行者がいるという事です。ものさびしいチャーリントン屋敷の辺りで、毎回この尾行者が現われるです。距離をとっており、悪さをする意図はないようですが、若い女性にとって気味が悪いのも事実です。


 事態に大きな動きがあれば連絡するようにと告げて、娘を返します。その後、娘は辞めると連絡してきます。ウッドリーも、カラザースも、ヴァイオレットに求婚したというのです。ウッドリーは乱暴に、カラザースは紳士的に求婚したのですが、もはや仕事を続ける訳にはいきません。


 気になったホームズは、現地に向かいします。しかし、いつもより早く家を出た娘は、誘拐されたのです・・・・・。以下、最後まで書きますので、ネタバレとなります。


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 ホームズは、謎の自転車乗りと出会います。カラザースです。彼は、ウッドリーの暴走を恐れ、ヴァイオレット嬢を守るために、彼女の後をつけていたのです。ホームズたちは、チャーリントン屋敷に向かいます。悲鳴が聞こえます。牧師ウィリアムスンのもとで、無理矢理結婚式を挙げていたのです。


 当然、無効です。かなり無理な設定です。その時、カラザースが、ウッドリーを撃ちます・・・・・・。ウッドリーは一命を取り留めます。ヴァイオレットの伯父は、実は資産家だったのです。カラザースとウッドリーは、共謀してヴァイオレットが相続する財産を狙っていたのです。そのための結婚ですが、カラザースは途中から良心に目覚めたという次第です。


 ウッドリー10年、ウィリアムスン7年、カラザース数ヶ月の懲役が言い渡されます。「ぶなの木荘」も、若い女性がらみの事件でした。いずれも、導入部には優れたものがあります。当時の家庭教師の年俸は、100ポンドでも高かったようです。現在価値に換算する時、1万倍から2万倍と推定していますが、それでも安いように思えます。