第969回「そして誰もいなくなった その2、ネタバレ」(本格ミステリ小説) | 新稀少堂日記

第969回「そして誰もいなくなった その2、ネタバレ」(本格ミステリ小説)

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 第969回は、「そして誰もいなくなった その2、ネタバレ」(本格ミステリ小説)です。  


 10人が島にやってきます。そして、そろって食事をとっているとき、姿なき声が流れます。「諸君はそれぞれ、次にのべる罪状で殺人の嫌疑を受けている。

 エドワード・ジョージ・アームストロング、汝は一九二五年三月十四日、ルイザ・メアリー・クリースをしに至らしめる原因をつくった。エミリー・カロライン・ブレント、汝は・・・・・。」(清水俊二氏訳) 全員の罪状が読み上げられます。そして、「被告たちに申し開きのかどがあるか。」


 そして、次の順序で殺されていきます。①アンソニー・マーストン(遊び好きの青年)、②エセル・ロジャーズ(トマスの妻、コック)、③マーサーカー将軍(退役の老将軍)、④トーマス・ロジャース(オーエン家の執事)、⑤エミリー・ブレント(信仰のあつい老婦人)、⑥ローレンス・ウォーグレイヴ(高名な元判事)、⑦ブロア(元警部)、⑧アームストロング(医師)、⑨フィリップ・ロンバート(元陸軍大尉)、最後に⑩ヴェラ・クレイソーン(秘書・家庭教師の娘)です。そして、誰もいなくなった・・・・・。


 当然、連続殺人が実行された段階で、生存者たちは島中の捜査を実施しています。結論は、ゲストたちだけしか、いません。犯人は間違いなくゲストの中にいます。順当に考えれば、最後に殺されたヴェラ・クレイソーンです。しかし、事件は思いがけない方法で解決されます。


 ゲスト以外の犯人は考えられませんので、死んだフリをした人が犯人です。


(以下、完全にネタバレです)

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 瓶につめら海に流された告白書により、動機と犯行方法が明示されています。それは、偶然にも回収されます。告白書には署名があります。ローレンス・ウォーグレイヴと。動機が書かれています。「殺人に興味があること、そして、偶然聞いた法が裁けない事件が少なくないこと。」(要旨)


 彼は、過去の犯罪をチェックし、10名の候補者を選定します。インディアン島に来る以前に、一人"処刑"しているのです。あくまで、10人にこだわったのです。現在の日本でも、このような殺人が起きても不思議でない状態が生まれています。「復讐するは我にあり」 我とは、あくまで神ですが・・・・。


 そして、次々と殺害方法を記していきます。自分が7番目に殺されたことについては、医師アームストロングの協力があったことを書いています。しかし、本文では、生存者が死体を移動したことが記されています。本書の弱点ではないでしょうか。疑心暗鬼に陥っている生存者たちに疑念が生じなかったのでしょうか。初読の際、死んだフリをした人がおり、その人が犯人だと思いましたが、特定はできませんでした。


 ついに連続殺人を完成させます。そして、自らも裁きます・・・・。泡坂妻夫氏の「乱れからくり」(※)も、一種の「そして誰もいなくなった」のバリエーションです。利害関係者のうち、ただひとりのみ生き残ります。当然生き残った者が犯人と思われますが。泡坂氏のトリックが光った一作です。


(補足)  7月29日のブログに書いています。ネタバレですが、興味のある方はアクセスしてください。

「乱れからくり ストーリー」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10309894187.html

「乱れからくり ネタバレ編」http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10310373641.html#main