第968回「そして誰もいなくなった その1」(本格ミステリ小説)
第968回は、「そして誰もいなくなった その1」(本格ミステリ小説)です。オール時代のベスト・ミステリが選定されますと、必ずと言っていいほどベストテンに顔を出す作品です。しかし、私は「ナイルに死す」の方が、クリスティのベスト作品と思っていますが・・・・。2月19日に、「ナイル殺人事件」(ミステリ映画)として書いています。http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10211102396.html
原作に忠実な映像化ですので、おすすめ映画です。
この「そして誰もいなくなった」も、何度か映画化されています。印象に残っていますのは、孤島ではなくアフリカを舞台としたものです。当然、交通が遮断され10人は孤立します。記憶ですが、つり橋が落とされたと思います。原作の雰囲気が失われた駄作でした。
動機にしろ、犯行方法にしろ、本書について何かを書きますと、全てネタバレになります。舞台はインディアン島、10人のゲストが招待されます。一人ずつ殺されていきます。あたかも、童謡のように一人ずつ消えていきます。
「十人のインディアンの少年が食事に出かけた
一人がのどをつまらせて、九人になった・・・・・
三人のインディアンの少年が動物園を歩いていた
大熊が一人を抱きしめ、二人になった
二人のインディアンの少年が日向に座った
一人が陽に焼かれて、一人になった
一人のインディアンの少年が後に残された
彼が首をくくり、後には誰もいなくなった」 (清水俊二氏訳)
童話にしろ、童謡にしろ、なにがしかの残酷性を秘めています。この童謡にも残酷性が秘められています。集められたゲストの職業は多種多様です。ローレンス・ウォーグレイヴ(高名な元判事)、ヴェラ・クレイソーン(秘書・家庭教師の娘)、フィリップ・ロンバート(元陸軍大尉)、エミリー・ブレント(信仰のあつい老婦人)、マーカーサー将軍(退役の老将軍)、アームストロング(医師)、アンソニー・マーストン(遊び好きの青年)、ブロア(元警部)、トーマス・ロジャース(オーエン家の執事)、エセル・ロジャーズ(トマスの妻、コック)です。カバー裏面の登場人物から引用していますので、殺された順ではありません。オーエン家とは、インディアン島の持ち主です。
厳密な意味では、本格推理とはいえないと思います。クリスティは禁じ手を使っています。しかし、上記の10人の中に犯人はいます。次回、動機と犯行方法について書きます。当然ネタバレとなります。