こんにちは緑人です。


設定秘話もいよいよ大詰めに近付いてまいりました。

前回の設定秘話本文中で、初めて「緑人」という単語が出てきましたね。物語中において「緑人」は勿論正式名称ではありませんが、まあ大詰めだって事で一回ぐらいは緑人って書いてみようかなと…ああ、どうでもいいっすかね?

まあいいや。


では続きをドウゾ。


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やがてエルヴィーネの身柄はジョーが言った通り留置所へ移され、エルヴィーネはそこで数日過ごしました。

食事・寝床ともにとても質素でしたが、国家反逆罪の容疑者であると同時に重要参考人である為でしょうか。品質はどれも決して悪くはありませんでした。



一方ジョーはエルヴィーネが拘束されている間、主に司令室で部下に作らせた書類の校正に追われていました。


【GTM強化型人間21号漏えい事件に関する概要】


ジョーが手にしている書類の表紙にはこう銘打たれておりました。

ジョーは表紙をめくり、校正の為再び書類の内容に目を通し始めました。


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本資料は化学兵器グリーノイド・トリプタジエン・ミュータントガス(通称GTM)に関する初歩的な知識を記した資料である。



【概要】

GTMとは、今から20年前ドイツ軍が人間を戦闘用の強化型生物に変える為に開発した特殊ガスを指す。GTMによって強化型生物になった者をGTM強化型人間(Enhanced person by GTM、通称EPGTM)と呼ぶ。


人間をEPGTMにするには、普通の人間にGTMをわずかの間吸わせるだけでよい。

GTMを体内に吸収した人間は、まず肌が緑色になっていく。これは動物の体内には持ち得ない葉緑体が形成されていくからである。これにより日光を浴びるだけで栄養を補給する事が出来る様になり、食料を持ち歩く必要がなくなる。正確には日光の他に糖分などのエネルギーの摂取が若干必要になってくるが、通常行軍の時などに必要となる食料は俄然少なくて済む。


肌が緑色になると同時にEPGTMの身体は枯れ木の様に痩せ細っていくが、見た目の頼りなさとは裏腹に強靭な身体能力が備わる。



【能力】

被験者の個体差もあるが、EPGTMの具体的な身体能力は以下の通りになる。


・緑色の肌は銃弾を通さない。・緑色の肌はいかなる熱にも耐える。

・足腰のバネも飛躍的に強化され、100メートルを概ね平均7秒台で走るようになる。

・葉緑体を体内に持つので餓死をする事も基本的にない。・呼吸器系も水陸両用であると言っても差し支えない。つまり、水死する事はまず有り得ない。


【廃棄・処分方法について】

EPGTMを最も手っ取り早く殺す事が出来るのは、GTM中和用に開発された特殊薬物の注射である。薬物を肌が強化されていない粘膜に注射する事で、EPGTMはやっと絶命する。


つまりGTMは、洋の東西を問わず古代の権力者より模索されてきた不老不死に格段に近付いた禁断の素材だと言っても差し支えない。



しかしながらGTMは研究開発段階の域を脱していない。GTMを吸収すると、強靭な身体スペックを得るのと引き換えに脳細胞が著しく損傷し、知能が下等動物レベルに落ちてしまうという副作用がある。

これは急速に改善を進めていかねばならない課題である。


なお完全極秘事項だが、GTMに関する人体実験は自国の死刑囚もしくは敵国の捕虜に対して行うものとする。


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ジョーは数ページ読み終えたところで書類を机に置き、タバコをふかし始めました。


「あと2日か…このタイミングで政府の高官が交代してプレゼンする羽目になるとは、厄介な事だ…」



つづく

こんにちは緑人です。



すっかり秋ですが、年々暖かくなってますね。

気候が穏やかなのは結構な事ですが、やはり季節に相応しい気候でなければ不気味な感じがします。南米の古代文明によると今年の年末に地球が滅びるそうなんですが、果たして真相はどうなんでしょうか?



では設定秘話ドウゾ。


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かくしてエルヴィーネは、ジョーによる聴取を受ける事になりました。



質問の内容は主にウヴェに関する事と、フレッドは潜伏期間中どういった行動を取っていたかという事がほとんどでした。

大概は身を隠しているという事実以外は一般人の日常生活と変わらなかったという旨の回答をし、それに対しジョーは無言で微かにうなずくだけでしたが、やがてジョーは聴取の確信部であろう軍施設に連れて来られた時からエルヴィーネが予想していた質問を口にしました。


「フレッドは、最終的にどこに隠れていたんだ?」

「住所は分からない…ただ、軍がいくら大体の場所を特定出来ていたとしてもそう簡単には見つけられない。そんな場所だった…」


エルヴィーネは弱々しく答えました。

ミフネの隠れ家はたとえ軍でも簡単には見つけられない、と答えたのは高圧的なジョーへのせめてもの反抗の意味もありましたが、事実本当に外部の人間は誰も分からない様な場所にありました。


「ウヴェという名前の緑人は、当初は違う名前で呼ばれていたんだな?」

「ええ…確かトーマスという名前だった。フレッドが兄を引き取った際につけた愛称だと言ってたわ。でも私が兄と再会してフレッドに事情を説明したら、本来のウヴェという名前で呼ぶ様になった」

「ウヴェが夜中殺され死体が解体されている時、フレッドとミフネはどんな会話をしていた?」

「私を殺し、隠れ家から逃げようと…ミフネはその時フレッドの事をケヴィンと呼んでいたし、会話の中に軍隊の包囲網という言葉が出てきた。その時私は、自分達が狙われているのが以前から聞かされていた闇組織からではなく、軍隊だという事に初めて勘付いた…」



エルヴィーネは涙声で搾り出す様に答えました。



「…まあいいだろう。今日の聴取はこのぐらいにしておく。数日のうちにお前に対する処分が下るが、それまで留置所に入ってもらう事になる」

「留置所に入るのも、処刑されるのも構わない…ただ、私は真相を知りたい。フレッドとは何者なのか、彼は何故兄と一緒にいたのか、そして …」

「ふん…」


ジョーは鼻で笑い、タバコに火をつけました。


「確かに犯罪者にも事件の概要及び背景を知る権利も弁護士を呼ぶ権利もあるが、軍の機密も絡んでくるので全てを教える事は出来ない。一連の概要は、軍の規約により改めて文書にて回答する」



事情を知り同情したのか、ジョーの口調は最初の時よりもいくらか和らいでおりましたが、それでもまだ十分に高圧的かつ事務的でした。


つづく

こんにちは緑人です。


もう8月も終わりますね。

個人的に今月はちょっと金をあまり使えない状況だったので、今年の夏は意外と質素なもんでした。もっとこう、突発的に旅行とか行きたかったな。



では設定秘話、続きをドウゾ。


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やがてエルヴィーネが運び込まれた病院に、軍用のジープがやって来ました。

ジープに乗っていたのは、数年前『フレッドの館』に乗り込んできた時と同じ軍人のジョー・パーキンズでした。


「お待ちしておりました。どうぞ、こちらになります」

「うむ、御苦労」


ジョーは出迎えた医者に素っ気なく答えると、『フレッドの館』の時と同じく2名の部下を従えて医者の案内に従い、黙々と院内を歩いていきました。



程なくしてジョーは、エルヴィーネがいる部屋に着きました。


「失礼する…私は陸軍第一特殊部隊大佐ジョー・パーキンズ。話は担当医から伺っているか?とある軍の機密事項に関して、君には重要参考人としてこれから御同行頂く」

「陸軍…」


エルヴィーネは呟きました。

フレッドとミフネの会話の中で「ドイツ軍」という単語が出てきていた時点で、真相を突き止める為には軍関係者との接触は必然である事は何となく予想はしていましたが、まさかこんなに早くその時が来るとは思いませんでした。しかも重要参考人として同行とは、願ってもない急展開。


エルヴィーネは二つ返事でジープに乗り、病院を後にしました。



やがてエルヴィーネを乗せたジープは軍施設に到着し、彼女は簡素な石造りの部屋に案内されました。

その部屋はどう見ても、応接室と言うより独房の様な雰囲気でした。


「さて…エルヴィーネといったな。我々が知りたがっている事実関係はこれからの聴取で確認していくが、一応最初に断っておこう。事情がどうあれ君は今国家反逆罪の疑いがかけられている身であり、処刑も辞さない状況に置かれているという事を」

「えっ、反逆罪…?」


エルヴィーネは一瞬肝を潰しましたが、冷静に考えるとフレッドとミフネが軍に関わる犯罪を犯したのだとしたらそういう扱いになるのは当然だと悟りました。

二人とは数年間一緒に暮らしており、それはつまり場合によっては犯罪者を幇助した事になりかねないのですから。


「教えて…フレッドとは何者なの!?何故兄を殺したの!?」

「質問をするのは我々の方だ!!」


エルヴィーネはヒステリックに叫びましたが、ジョーはそれよりも更に大きな声で遮る様に言い放ちました。


「いいか、頭に叩き込んでおけ。どんな辛い目にあったのか知らんが、今のお前は悲劇のヒロインでも何でもない…ただの一容疑者にすぎない。よって聴取の意図から外れる勝手な言動は一切許されないんだ。分かったな!」


エルヴィーネは今までに経験した事のない軍人による高圧的な姿勢に恐怖を感じ、黙り込んでしまいました。




つづく