(8) タワメの間とシコり | 無料治療会 患者役募集中@術伝流 鍼灸・操体実践講座

(8) タワメの間とシコり

1.はじめに

 前回は、 タワメの間で力がはたらく先に体が治したがっている
ところがある という話を書きました。

 今回は、 目標のシコりは、タワメの間でどのように変化するか
ということを書いていきます。

2.タワメの間で、シコりはどうなる?

 操体は、動かして診る動診が中心ですが、さわってシコりをみつけ
る触診でみていくこともあります。

 代表例は、膝裏です。まず膝裏をさぐって「いたた」というシコり
をみつけてから、爪先あげなどの操体をしていきますね。

 さて、膝裏のシコりをとる操体をしてタワメの間になったときに、
膝裏のシコりはどうなっているでしょう。

 さわって確かめたことがありますか?

 確かめた人なら、わかっているし、敏感な人なら、爪先あげなどの
操体をうけているときのタワメの間の膝裏の状態から気づいていると
思います。

タワメの間では、シコりは消えている

 タワメの間では、シコりは消えていて、押しても痛くありませんし、
押している指先にふくらみを感じることもありません。

 まだ確かめていない人は、確かめてみることをおすすめします。

 確かめるときには、普通の爪先あげでもよいのですが、つぎのやり
方をすると確かめやすいです。

膝裏痼シコりがタワメの間で消えることを確認

 膝裏のシコりをみつけたら、いちばん痛みの強いシコりに指をあて
たまま、反対側の手でその膝の延長の足首を反らせます。

 すると、カカトがあがっていきますから、足首を反らした状態をゆ
るめないように注意しながら、膝をもっとも少ない力で動く方向、い
いかえれば、受け手の体の抵抗のもっとも少ない方向に誘導していき
ます。

 これは、シコりを痛くして逃げる姿勢をすこし強調する操体、つま
り、いわゆる圧痛操法ですね。その膝裏シコり版です。


 すると、あるところに来ると、膝裏のシコりのふくらみが消え、す
こし強めに押しても痛くない状態になります。その状態のときがタワ
メの間であることがおおいです。

 おなかに目をうつしてみると、たいてい大きく動いていて、息が深
くなっているのがわかります。

 これは、抵抗の少ない方向に動かしながら、おなかをながめつづけ、
息が深くなった時点で、シコりをさぐってみるというやり方でも、確
認できます。

 しかし、息が深くなることの確認を先にした場合でも、操体をはじ
めたときから目標のシコりに手をふれていないと、わかりにくいと思
います。

 人によって、シコりの変化がわかりやすい人と、息の変化がわかり
やすい人がいるので、得意なほうで確認するとよいでしょう。

3.タワメの間では、体が治したがっているシコりがある

 定番の操体には、膝裏のシコり以外は、操体をはじめるまえにシコ
りを確認する習慣は、あまりないようです。

 『万病を治せる妙療法 操体法』には、首の操体のときのシコり、
めまいのときの背中のシコり、あお向け膝たおしのときの仙蝶関節の
シコり、カカトふみこみのときの大転子あたりのシコり、腹痛のとき
の背中のシコりなどが書いてあります。

 シコりの確認をとりながら操体していますか?

 そういう定番以外でも、ある特定のタワメの間になったときには、
体が治したがっているシコりが存在している可能性が非常に高いです。
かならずといってもよいほど。

タワメの間での操体の焦点にシコりがある

 タワメの間で体が治したがっているシコりは、先回書いたライン上
にあります。ラインが二つ以上あるときには、その二つのラインがま
じわる交点になります。

 もうすこし簡単にいうと、タワメの間で体の動きがほぼ止まった姿
勢をながめて、いちばん伸びようとしているライン、いちばん縮もう
としているライン上にあることがおおくなります。

 つぎに可能性があるのは、いちばん上のラインか、いちばん下のラ
イン、つまり、体重をもっとも受けないラインか、もっとも受けるラ
インです。

 そして、伸びているラインのなかでは、伸びているラインのなかの
いちばん伸びようとしているところが、その操体を利用して体が治そ
うとしているところになります。

 縮んでいるラインでは、そのなかのいちばん縮もうとしているとこ
ろが、体が治そうとしているところです。

4.シコりをみつけてから操体をしてみる

 さて、タワメの間になったら、その姿勢で、まずは、伸びようとし
ているラインで、いちばん伸びようとしているところをさがすと、そ
のタワメの間で、体が治したがっているところがみつかりやすいです。

 つぎは、縮めようとしているラインのいちばん縮めようとしている
ところなどです。

 膝裏シコりとりの操体以外でも、まずシコりをさがしてから、操体
をしてみてもおもしろいです。

 たとえば、五十肩などで動作制限があるときなどです。

可動域制限からシコりをみつける

 まず、制限のある動作を痛む直前までやってもらいます。

 その痛む直前の姿勢で、いちばん伸びようとしているラインと、縮
もうとしているラインを目をつけます。

 上腕部の動いていく軌跡の延長、つまり、上腕の延長ラインか、そ
れと直角の、上腕のねじれる力が伝わるラインか、そのどちらかにな
る可能性が高いです。

 すると、多くの場合、そのラインは皮膚表面上にくぼみになって出
てますから、そのくぼみをたどっていって、そのくぼみのなかで、い
ちばんヘコんだところを押してみます。

 すると、たいてい圧痛があり、ツボになっているのがわかります。
くわしく調べると、シコりが見つかります。

 服をぬいでもらえばわかりやすいですが、着たままでも服にできる
シワなどを参考にすれば、さがせます。

 ツボのあるラインが、皮膚表面上に、くぼみ(みぞ)になって見え
るのは、そのときの姿勢動作では、ほんらいは伸びるべき筋肉のなか
にシコりがあるので、表面の皮膚が、その部分だけ、シコりのあるほ
うに引っ張られるためのようです。

 ある動作制限のときに、どこにシコりがあって、その動作がしにく
いか、いくつか例をみていきましょう。

 腕を高く上げるときなど、腕の動作はある限度をすぎると、この場
合には、水平よりも上にあげるときには、肩胛骨が動いて動作してい
るので、ツボやシコりが肩胛骨のまわりに出ることがおおいです。

 また、腕を水平よりも下にしか上げられないときには、脇の下にシ
コりがあって、そこが伸びないので腕が上げられないこともおおいで
す。

 こういうときにも、痛い手前まで制限のある動作をすると、肩胛骨
まわりや、脇の下から上腕の手のひら側にみぞが見えますから、その
なかでいちばんヘコんだところをさがすと、ツボやシコりがみつかり
ます。

シコりに手をあてたまま、動きの操体をする

 さて、みつけたシコりに指先をあてたまま制限のある動作の逆モー
ションの動きをやってもらいます。

 受け手が自分ではうまく動かせないときには、伝え手があいている
ほう、つまり、シコりに指をあてていないほうの手で誘導してあげま
す。

 そのときには、いちばん少ない力で誘導できる方向をさがしながら
動かしていくのがコツです。

 そして、かるい力では動かせなくなったら、逆モーション運動をや
めます。

 そのあと、手首の捻転や体重移動をしたりしてみると、すこし余分
に逆モーション運動できると思います。

 手首捻転は、二つの方向に捻転してみて、ねじりやすいほうに捻転
してから、逆モーション運動がすこし余分にできないか、ためしてみ
ます。

 体重移動は、そのときの肩甲間部の背骨にどういう力が伝わってい
るか考え、それがやりやすい体重移動をしてみてから、逆モーション
運動がすこし余分にできないか、ためしてみます。

 基本的には、そのときに体重をうつしやすいほうにうつすと、逆モー
ション運動がすこし余分にできることがおおいです。

 以上の3つの動き、つまり、逆モーションと二つの強調、手首捻転
と体重移動をしてみたあとで、おなかの息の入り具合を観察しながら、
気持ちよい動きかどうか聞いてみたりします。

動きの操体をしてるあいだ、ずっとシコりを観察し続ける

 そういう操体をしているあいだ、ずっと、シコりにあてた指先で、
シコりの様子を観察し続けます。

 すこしの力で動く範囲でとめた瞬間か、手首捻転や体重移動でもう
すこし余分に動かした瞬間に、シコりが消えるのが観察できると思い
ます。

 この現象は、どんな操体でも、目標とするシコりに焦点があたるよ
うなタワメの間になったときには、かならずおきる現象のようです。

 シコりに気づいて、そのシコりを目標とする操体をしていくときは、
利用できると思います。

シコりが消えている姿勢を維持する

 そういうシコりが消えているタワメの間の姿勢を、しばらく維持し
ます。

 おなかの息が普通にもどったり、または、うつした体重をもどしたく
なったり、タワメの間の姿勢を変えたくなったり、あるいは、なんとな
くイイ感じがへってきたりするまで。

 4つ書いた、そういう状態になるまで、タワメの間の姿勢を維持し続
けます。

 すると、その姿勢をやめて、ラクな姿勢にもどってから、シコりを観
察してみると、操体をするまえには、その姿勢でははっきり指で確かめ
られたシコりが消えています。

 つまり、その操体をするまえには、シコりがあって、押すと痛かった
姿勢でも、シコりが消えた状態になっているということです。

5.逆モーションをやりすぎていることがかなりある

 この方法で、肩まわりの動作制限に対する操体をしてみると、普段し
ている逆モーションよりもすくない動きでシコりが消えることに気づく
ことがよくあります。

 ようするに、普段はやりすぎというか、逆モーションを意識しすぎ
て、また、抵抗を感じるまで動かそうとしすぎて、実際には、タワメ
の間となる姿勢をとおりこしていたり、逆モーションの軌道からはず
れて動かしたりしていることがかなりおおいということ。

 肩関節は自由度が大きく、いろいろな方向にいろいろな動かし方が
できるので、肩まわりの可動域制限の操体は、操体のなかではむずか
しいと言われたりします。

 その理由の一つは、いま書いたように、ちょっと動かしすぎて、タ
ワメの間にちょうどよい姿勢をとおりこしていたり、逆モーションの
軌道からはずれたところで操体していたりする可能性あるかもしれな
いなと思います。

6.シコりにふれながら操体いろいろ

 このシコりにさわりながら操体してみる方法は、前に書いた、反対
側の手で同じ動作をしてみることをキッカケにする操体でも使えます
し、ぞのほかの操体にも使えます。

シコりにふれながら、反対側の動きの操体

 動作制限のある患側の患部のシコりに指をあてながら、反対側の健
側の手で制限のある動作と同じ動きをしてもらいます。

 すると、やはり、適度に動かしたところで、シコりが消え、おなか
に目をうつすと、息が深くなっていて、タワメの間になっているのが
観察できると思います。

 もちろん、手首の捻転や体重移動を付け加えると、その瞬間にシコ
りが消えることがあるというのも、患側の手で逆モーションの動きを
やってみたときと同じです。

シコりから逃げる操体でも、シコりを観察し続ける

 動作制限からシコりをさがしたりしなくても、シコりが先にみつけ
られたときには、操体でよくするように、そのシコりをすこし痛くし
て逃げる動きをキッカケにする、いわゆる圧痛操法をしてもよいです。

 そのシコりに指をふれたまま、キッカケにした動きをいちばん少な
い力で誘導できる方向に誘導していき、シコりが消えた瞬間の姿勢が
タワメの間であることがおおくなります。

 シコりが消えるまえに、かるい力では動かせなくなったときには、
動かしている手足の手首足首をねじりやすいほうに捻転したり、体重
をうつしやすいほうにうつしてもらうと、そのシコりが消え、その瞬
間におなかの息が深くなることがおおいようです。

 足首は、捻転を意識してもらうよりも、爪先あげで、とくに親指側
を爪先あげしたり、とくに小指側を爪先あげしたりしてもらうほうが
うまくいくこともおおいです。受け手がうまくできるほうをします。

 また、手首足首の捻転や体重移動でうまくいかないときには、首を
気持ちよいほうに動かしてもらったりしてもよいです。

同じラインの近くのシコりを痛くしてみる

 シコりを痛くすることをキッカケにするやり方で、シコりが痛まな
い姿勢にはなったけれど、おなかへの息の入り具合や気持ち良さがい
まいちのときも、あります。

 そういうときには、そのシコりがある筋肉のみぞやくぼみをたどり
つぎにヘコんだところを押してみると圧痛があることがあります。

 圧痛点が、はじめの圧痛店をはさんで、くぼみの両側にあるときは、
圧痛の強いほうをえらびます。

 新しくえらんだシコりから逃げる動作をキッカケにすると、はじめ
のシコりよりも、おなかへ息がより深くはいり、気持ち良さも深いタ
ワメの間がみつかることがよくあります。

 こういうことがおこるのは、はじめにキッカケにしたシコりが、そ
のときの体にとっては、いちばんなくしたいシコりではなかったから
かなと思っています。

 やったことがなかったら、ヤジウマしてみてください。

7.おわりに

 今回は、 {タワメの間では、その操体で目標のシコりは消える}
という話を書きました。

 次回は、 {目標のシコりにふさわしいタワメの間を予測する}
という話を書きます。

 今回の内容と先回の内容の組み合わせです。

 つまり、先回は、 タワメの間で力が働くところを体は治したい
と書きました。

 それを応用すると、その日の体でポイントになっていそうなシコり
がみつかったときに、手足を動かす操体では、上腕・大腿部の向きに
注目すると、タワメの間の姿勢がみつけやすくなるという話です。

 そして、上腕大腿の向きから見つけたタワメの間の姿勢を利用した、
目的のシコりに皮膚の操体をしながら、両手首・両足首と首を、その
シコりに焦点を合わせて操作する操体を紹介します。

 この操体は、5~6人で一人の受け手に操体しますので、極楽だぁ
と言われたことがあります。


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