『ポイントの有効期限が3月末で切れます。お早めにご利用ください』

娘の携帯に、ちょくちょく某化粧品会社のメールが送られてきていた。
昨年3月が化粧品の購入 最後だったなぁ。
もう1年も経つのか…

他にもメルマガが来るのに、どういうわけだか『ポイントの有効期限』という言葉に引っかかり、娘が生きてきた日々の中で 娘の意思で貯めていたものが消えようとしている…というのがちょっと悲しかった。

でも もうメールは必要ないので、配信停止してもらう手続きをしたかった。

手続きは、パスワードのかかったページからしか出来ない。
どうしようかな…
かなりのポイントも貯まっている。
本人のフリをして、商品の交換をしちゃおうかな?そんなことも考えた。

それも、マイページにログインしないと出来ないことなので、パスワードが分からないから無理だし、やったらダメなんだろうな。


いづれにしても配信停止手続きをしてもらうために午前中に化粧品会社のカスタマーセンターへ問い合わせてみた。


そりゃ、そーだよね。
本人じゃないとポイント使えないことくらい分かってるよ。
でも、それ改めて言われると なんだかなぁ…
あの子がコツコツ貯めてきたポイントが、何にも交換することなく失効してしまうのが、何だか悲しかったな。



とても事務的に手続きが終わり、もう娘の携帯にはメールは届かなくなった。
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もう、お化粧をすることもないんだなぁ。
部屋には、まだ使っていないチークや口紅がたくさん残っているのに…



娘はいつでも私とショッピングに行きたがって、化粧品を買いに行く時もいつも私が一緒だった。

ちょうど一年前の最後のショッピングとなってしまった日に いつもの化粧品店に寄り、化粧水などを買った。

ふと顔をあげると、目の前に秋に販売となる『薬用美白フェースパウダー』の予約開始というポスターが貼られていて、それを見た娘が
「お母さん、これ、去年も欲しがってたよね?買ってあげようか?予約しようよ」と言ってくれた。
でも…その発売日は9月だった。

娘の余命があと1年もない…月単位だ、と言われて既に半年経っていた頃だった。

これを受け取る頃…娘は生きているのかな。
そんな事を店頭で考えてしまって…

娘には
「そうだ、その頃はお母さん手術する予定で、バタバタとしていそうだし…今年はやめておこうかな?」と言ってしまった。

今 思うと、買って貰えば良かったなぁ。
後悔だなぁ。

それから、あの日も店員さんが娘を見て
「本当にきめ細やかな、綺麗な肌ですよね。羨ましいです!指も長くて爪の形も綺麗で…モデルさんのような美しい手ですね」と、行くたびに大袈裟に褒めてくれるのが、親としては嬉しくて。
肌も手も私に似なくて、綺麗で…親の私が自慢したくなるような、本当に つるっつるのスベスベの肌だった。

ちょっと敏感肌なので、お値段の良い化粧水を使っていて、それを購入したんだよね。
だからポイントがどんどん貯まっていった…

でも、今日で そのポイントは失効。
お空では、ポイント必要ないもんね。
これで、良かったんだよね。


このお店に行ってから2ヶ月半後に 娘は旅立ってしまったのだけど、あんなに辛い治療をしていたのに、肌がスベスベだったんだな…って、その時の娘の肌の状態・表情も思い出せる。
肌診断までやったんだよね。
懐かしいな。


あの時のポイント、今日で失効させちゃったよ。
ごめんね。



いつも店頭で「お母さんもお肌の診断してもらって自分に合った化粧品買いなよ。このままシミとシワ増えたら嫌でしょ?」って言われて、そうだよねって言うばっかりで(笑)懐かしいね。

お母さん、これからは貴女に言われた通りにお肌のお手入れを頑張ってやるね。

貴女が、お空へいってから何も手につかなかったけど、今度会う時にシワシワのお母さんじゃ嫌だもんね。

楽しかったお買い物を思い出して、勇気を出してまた、あのお店に行ってみようかな。

今年の薬用美白フェースパウダー、予約して買ってみようかな?



春の訪れを、悲しんでばかりいたら 娘と会えない気がして…

娘に会える『その日』はいつか必ずやって来るのだから。
また会えるその時まで前見て顔をあげて…
『キレイなお母さん』でいなくちゃ、ね。