やさぐれ刑事(1976) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

やさぐれ刑事

1976年 松竹

監督:渡辺祐介 主演;原田芳雄、高橋悦史、大谷直子、清水章吾、大滝秀治



原田主演の映画として代表作といっていいだろう。全編が原田という役者のテーストに染められた作品である。監督が新東宝出身の渡辺祐介ということもあり、少しエグミのある感じで大人の映画に仕上がっている。しかし、考えれば原田が復讐のため追いかける高橋も若くしてガンに散った俳優だ。そう考えると見ていて、ただ人生の空しささえ感じてしまった。


刑事の原田がつかまえた暴力団の男(高橋)が出所。空港で原田は対峙する。高橋は憎しみをもって復讐を仕掛けた。原田の妻(大谷)を誘拐し、北海道に逃げたのだ。原田は北海道に追い、刑事をやめて報復をすることにする。暴力団に銃の売買を仕掛けると、きた女は大谷だった。大谷を犯しなじり帰す。高橋が相馬に逃げたとの情報が入り、土地の組に潜入する。するとそこで大谷のでているブルーフィルムが流されていた。怒りの原田は組を爆破する。舞台は東京に移る。大谷は政治家(大滝)にあてがわれたコールガールになっていた。彼女の情報で原田は動き、麻薬取引するヤクザを射殺する。高橋は九州に逃げていた。原田は追って鹿児島に。高橋の女(赤座美代子)を犯し、情報を得て、高橋を追い詰め、原田は復讐の弾丸を高橋に撃つ。原田はつかまり、大谷は酒場で男を誘っていた。


藤本義一の原作だが、最近はこれだけ反社会的な原作も少なくなってきている気がする。ましてや、映画でここまでおぞましい世界は今の製作委員会制度の映画作りの中では絶対不可能であろう。しかし、私はそんな世界が好きだ。ある意味、こういう大人の映画を作るには原田のような俳優が不可欠というのがよくわかる。


全編をわたって、原田のぶっきらぼうな無頼性が映画のテーストになっている。復讐の相手の高橋の動向が緻密に描かれていないのが欠陥かもしれないが、憎しみの中で、北海道から九州まで、ロードムービー的な要素を持って、話が進むのは観ている方を高揚させる。


それに呼応するように、堕ちてゆく原田の妻を演じる大谷も熱演といっていいだろう。時代とはいえ、よくこの役を引き受けたという感じはするが、まあ、大谷直子という人は男っぽい人なので(私の感想)OKだったのだろう。昔から娼婦が演じられれば大女優という言葉もある。ここでは、娼婦どころか、ブルーフィルムに撮られた画などもあり、なまなましい。ただ、ラストで彼女が港町ブルースをバックに男を求めているシーンは今一、迫力に欠ける。


舞台は北海道から鹿児島までロケされているが、その中で福島の相馬がでてくる。今、原発で大変なところである。何か、そんなことが関係ない日常がここにでてきてドキッとした。この地で映画を再度撮れる日がくることを願わんばかりだ。


話がそれた。演出は先にも書いたように、新東宝出身で早撮りができる渡辺祐介。映画の作りとしては無駄がなくバランス感もある。ただ、原田の個性に合わせて、もう少し映像的に破壊的にしてもいいかとは思う。松竹製作の反社会性の強い映画としてはよくできているのだが、やはり深作欣二などが監督だったら、どんなになったかと思うと、ちょっと惜しい気はする。とはいえ、原田芳雄の独特の演技を堪能したい人には十分な作品である。


六日に渡って、原田芳雄の映画について書いてきた。彼が銀幕デビューした1968年は、もう映画の黄金時代は終わり、停滞期が訪れた時である。そして、角川などの他の資本が映画製作に参加しだし、製作委員会方式が中心の今に至る。この40年の中で最も映画色した俳優は誰かと考えたら原田芳雄といって過言ではないだろう。彼は、この時代の日本映画を支え続けたのだ。そして、彼が天に呼ばれた歳がこの2011年であることは決して偶然ではない気がする。映画も、新しい時代を迎えなければいけないと彼がメッセージを送ったのかもしれないと思えるのだ・・・。


私自身は、この40年間の映画を見続け、それらがとても好きである。だから原田芳雄の一挙手一動は私の人生観に大きな影響を与えてもいる。今、いえることは、本当にありがとうございましたということだけだ。再度、合掌・・・・。



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