SO WHAT
1988年 松竹(製作:CCJ)
監督:山川直人 主演:南渕一輝、東幹久、川岸晋也、矢野泰二、安原麗子
山川直人という人は最近どこにいったのだろうと、ネットで調べると、昨年、作品を公開していたりした。まあ、同世代の人間としては頑張ってほしい。その監督の商業映画としての代表作といってもいいだろう。そして、東幹久のデビュー作である。田舎の高校生のロック映画である。バブルの頃、まだ都会と田舎の文化の差は激しかった。ある意味、バブルを期に中途半端な田舎の都会化が始まったと言っていいだろう。この映画が撮られた舞台は千葉である。まだ、東京に遠くはないが、すごい田舎という空気がでている。この映画、当時も結構、「好きだ」というものはいたが、私は田舎者の映画は好きではないので受け付けなかった。今、見てもテースト自体にはちっとも好感は持てなかった。だが、山川監督の演出手腕は結構いけてるではないかと思った。最後の田舎者映画といってもいいかもしれない。
農家で金がある南渕は楽器を買ってもらい、仲間を集めてバンドを組んでいた。しかし弟が受験だからといって抜ける。ドラムがいないところに、東京から転校生(東)がきて文化祭に。川岸は安原にぞっこんだった。しかし、相手にしてもらえず、かつ安原は誰とでもつきあうという噂もあった。文化祭は自分たちは盛り上がるが客はバラバラで盛り上がらず。しかし、南渕が「好きだ」と後輩(北岡夢子)に告白される。南淵は「勉強しろ」といわれながらも親のカラオケにいく運転手をさせられたりしていた。東はいつのまにかいきつけの店のママ(室井滋)にかわいがられていた。矢野は妹に恋人ができあわてたり、今ひとつパッとしない。南渕も北岡を抱くことに失敗。そして、なにかやろうとコンサートを開くことにする。室井の協力もあり、畑の真ん中にそれなりに客を集めるが電源が切られる。学校の教師が邪魔しに来たのだ。せつない中、再びつまらぬ教室に。そして、南渕は「早退します」と教室をでて、東京に向かうのだった。
まあ、バブルの頃の田舎の高校生はこんなだったといえば、説明ができる映画なのかもしれない。牛のウンコを踏んだり、農業高校の生徒と喧嘩したりと、ありがちなスクールライフが描きつづられる。
とはいえ、この映画の救いは南渕がボーカルをつとめるバンドの完成度が高いことである。結構、聞かせるのである。そういう点では文化祭で演劇に客を取られる話はちょっといただけない。今では考えられないが、煙草吸い放題、酒飲み放題の時代である。ちゃんと、文化祭の打ち上げも出てくる。このへんは自分の高校時代とダブるのでほほえましい!
最近の若者たちが柔いのは、こういうハメはずしを元から断たれたためであろう。去勢された若者は誰が作ったのかという議論は、もっとするべきではないか?(まあ、カンニングで逮捕される時代だものね、悲しいよ、オジサンは)
とはいえ、問題はこの若者たちがみんな「SO WHAT」なのである。高校生のベクトルが見えない事を映画にしてしまっては、見ている方は結構つらい。ラストで、だから旅立つんだと電車に乗られても、今一ピンとはこないのだ。ラストクレジットには、高校生の自主映画のようにベタに渡辺美里の「マイレボリュ-ション」が流れる。私は、劇場で見て、ここで完全にこけたのを覚えている。だから、山川直人はビッグな映画監督にはなれなかったのだ。
東幹久は、やはり黒い。どちらかといえば無口な都会人をしっかりと演じてはいる。しかし、彼の家庭環境もでてこないし、彼が何ものか最後までよくわからないのはちょっと不満だし、いつのまにか田舎者に同化しているのも、何なのだ?と思ってしまう。デビュー作ではあるが、この映画があって今の彼がいるわけではないのだ。
当時、山川作品には欠くことのできなかった室井はバーのママとして存在感がある。彼女もメジャーに露出し始めた頃の作品である。(まだ、ロマンポルノもでていたかもしれない・・。)
脇の坊主の役で竹中直人がでてくる。アクションは今と同じだが、何か映画の中ですべっているし、なんか存在感が薄い。あまりアップにさえしてもらえないのは、ただ賑やかしで使われたということである。彼も、初めから、現在のような演技ができたわけではないことがよくわかる。
ラストシーンの駅は「国吉駅」である。Wikipediaで調べると風景は変わっていた。こんな田舎町も何か変に綺麗になってしまっている。失われた20年の間に作ったものって、何か無理やりな感じがあるのは私だけだろうか?(この映画のままだったら、観光スポットにもなれたのにということです)
クレジットにかぶって歌に合わせ、黒板に「夢を追いかけるなら たやすく泣いちゃだめさ」と書かれたのがアップになる。何か、体が痒くなるのだ。山川直人ってこんなの撮っちゃうんだと、当時、私は悲しみを覚えた記憶がまた甦った。まあ、「この映画が好き」だという方はわからないでもないのですけどね・・・。
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