本(まるほん)噂のストリッパー(1982) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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本(まるほん)噂のストリッパー

1982年 にっかつ

監督:森田芳光 主演:岡本かおり、宮脇康之、三崎奈美、森田日記、太田あや子


森田監督3作目はロマンポルノに舞台を移す。この頃、ロマンポルノの監督が一般映画に進出して注目されることは多々あったが、逆は結構めずらしい。それも若手が果敢に低予算のエロ映画に挑むわけだから興味はつきなかった。当時の本人の言葉では「いろんな映画を撮れますよといっておきたかった」という内容のコメントが残っているが、その部分では答えを出している。そして、この映画の注目はもうひとつ、ケンちゃんコト宮脇康之がポルノに出るという部分である。ここは、森田もあまりうまく使っているとは思えないが、当時はそこそこ興味ある内容ではあった。


浦安のストリップ劇場。踊る岡本の前で恋する宮脇がいた。劇場の人に名前を聞き、花束と手紙を持ってくる。舞台で、それを確認するが、踊り子は何もいわない。岡本は姉(三崎)と一緒に舞台を回っているが、本生はやらない踊り子だった。宮脇は配送のアルバイトをして、配送先の女(太田)に連れ込まれ関係を持つ。浦安から岡本がいなくなり思いを秘めたままなのだ。岡本は、浦安の舞台が終わりみんなとディスコに行く。そんな中、ディスコで踊る女の子(森田)をうらやましがったりもする。そして、本番をやるといいだす。そして代わりに10日の休みをくれとも・・。岡本が浦安に戻る。それを聞いた宮脇は果敢に本生のジャンケンに飛び出す。そして彼女に包んでもらうのだった。


話はロマンポルノとしてもあまりコクがない。SEXシーンはしっかり撮れてるので淡泊という感じではないのだが、どうもやはりPOPすぎるのだ。いまいち、臭いがしない。汚いトイレでのSEXでもなにか軽い感じなのは、やはり監督のテーストなのだろう。バックに流れる曲も、「真夏の出来事」から始まり「リンダ」だったりするので、そういう部分もそのテーストをバックアップしてしまっている(決して嫌いではないが・・・。)


まあ、舞台になるストリップシーンは、その場所を本当に知っている人が「なんだこれ?」というようなものではなく、まさしく本生である。まあ、80年代の初めまでは、こんなことがあったのだ。間違っても、こんなショーをやっているところは今はない。それほど、こんなところでやらなくても、風俗は氾濫している時代になった。


ここの劇場で「霧笛が俺を呼んでいる」のビデオがかかっているが、丁度ビデオが家庭に入って来たころである。同時にAV文化がなりたち、ロマンポルノもなくなり、ストリップのテーストも一遍させてしまった。エロ文化の移ろいは激しい。太田あや子が「レコード針を替えてくれ」といって、宮脇を部屋に入れるが、まだアナログ時代なのだ。


そして舞台になる浦安は、いかにも地方のたたずまいである。ディズニーランドが出来る前はこんな街だったんだよと考えると貴重なフィルムになってしまった。潮の香りとザーメンの香りが混ざっている感があるのが良い。


宮脇もそんな時代の波に流され、ここに難破してきたのだ。もう少し役者魂を見せてほしかった。演技はうまいのだが、それ以上の変化は感じさせない。この当り、宮脇が外で主演の岡本とからむような話だったら、もっと違う一面を見せられたのかもしれない。


監督的には、劇場だけの恋が行われ、最後に体の関係だけは結べるというコンセプトがあって、話を紡いでいったのだろう。問題は、宮脇の性格やバックグラウンドが単なるまじめな青年くらいしか見えない事である。もう少し人間関係を複雑化したら、話の幅は広がったと思うのだが。全く、ストリップとは関係ない太田や森田日記などを出す必要性が今一理解できない部分がある。


とはいえ、ストリップにかかわる人間たちはよく描かれている。岡本の姉の三崎やそのひもの金田明夫など、なかなかの好演である。本当に、私的には三崎奈美の体は、当時のロマンポルノの中では一番そそられる。ただ、この映画のもじゃもじゃ頭は今一だが・・・。


そして、この映画が傑作にならなかった要因は、主演の岡本かおりが綺麗に撮れていない事だろう。そう、森田監督、女優を美しく撮ることに関してはあまりひいでたものはないのだ。もう少し、普段着の彼女を明るく魅惑的に描けば、また違ったものになったかもしれない。デビュー作で堅いのと、妙に黒いのが目立つ。まあ、彼女もこの後は、にっかつのアイドル路線の一翼を担うようになるわけで、オールナイトフジなどにもでていたし、よかったよかったということにはなっているのだが・・。(彼女、ここにでる前にビニ本とかにもでていた。映画の中にもビニ本屋がでてきますね、そんなステップアップも許された時代なのです)


そんな80年代の暗い感覚を忍ばせたPOPな森田映画である。ある意味、この失敗を経験にして、次はロマンポルノ連投で、なかなかの明るい映画をかましてくれる。森田監督、まだ代謝がよかったのだ。


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