五月雨は緑色
悲しくさせたよ一人の午後は恋をして淋しくて
届かぬ想いを暖めていた
好きだよと言えずに 初恋は
ふりこ細工の心
放課後の校庭を 走る君がいた
遠くで僕はいつでも君を探してた
浅い夢だから 胸をはなれない
夕映えはあんず色
帰り道一人口笛吹いて
名前さえ呼べなくて
とらわれた心見つめていたよ
村下孝蔵 「初恋」より
一年の女子は
校庭で体育の授業を受けていた
茜は学年1、2を争うチビだから
遠目でも 直ぐにわかる
茜は希望通りホルンの担当になり
毎日 休むことなく 部活を頑張っている
小さい身体で
小さいとは言えない楽器を抱え
ある意味滑稽な姿だが
なんで 選りに選って
ホルンなんだろう
昌はクラリネットを吹いている
勿論 ソロ 兼 1st（ファースト）だ
部長でコンマス（コンサートマスター）だから
責任も大きい
クラリネットにはE♭クラと言う
特殊な種類の楽器がある
高音部を担う楽器で
かなりの技術を要する
これを 昌と同学年の親友 司 が吹いている
部員の男女比は若干女子が多いが
他校に比べたら断然 男子も多い
トランペット・トロンボーン・ホルン
ユーフォニアム・チューバ等 金管楽器と
ストリングベースを合わせ
22人中 女子は 茜を入れて4人
その代わり
フルート・ピッコロ・オーボエ・
クラリネット・サックス・ファゴット等
木管楽器26人中 男子が5人
パーカッションは
6人中 男子が2人
部員54人中 男子は25人もいる
ほぼ 半々だ
男女 特別仲がいい訳ではないが
部員54人で
一つの曲を練習していく訳だから
喧嘩をしていては始まらない
茜の兄 聡や昌の様に
部長で 技術的にも秀でた男子には
生意気ざかりの女子も 一目置いてるし
その代わり
練習しないばかりか
輪を乱す態度をとる子は
男女に関わらず
皆からの冷たい視線を浴びることになる
顧問は男性の音楽の教師で
しかし
この年頃の男女を纏めようとなれば
最早 風紀指導の体育教師以上の風格を持つ
年齢43歳
丁度 生徒達の父親世代である
中学３年間の成長の速度は
目まぐるしい物がある
茜達一年生からしてみれば
三年生は もう 立派な大人だ
ゴールデンウィーク直前に全校生徒を集めて
予算委員会が行われた
各クラブ、委員会の代表者が
全校生徒・教師の前で
あらかじめ算出していた予算を
全校生徒の承認を得ることにより
少しでも多く獲得出来るよう
演説・公開討論会をするのだ
毎年 予算委員会は
成績が良く 部員数、遠征も多い
サッカー、野球
吹奏楽部 三部間の予算獲得の争いで
楽器・楽譜の購入、修理等に
多額の経費を必要とする吹奏楽部にとって
なんとしても負けられない委員会である
こんな大事な事を中学生に討論させ
決議させる
活気に溢れた学校だ
茜の兄 聡の時は
そのカリスマ性から来る見事なスピーチで
全校生徒のハートを掴み
希望予算の90%を勝ち取る事が出来た
今年は昌である
皆んな本気で攻撃して来る
2、3年生は昨年の攻防戦を知っている訳だから 今年はどんな戦いが繰り広げられるのか 皆 期待に胸を膨らませている
〝何で毎年
そんなに高い経費が必要なんですか〟
「楽器も消耗品ですから 毎日練習していると どんなに大切に使っていても 例えばネジとかコルクとか磨耗して来て、大体は修理で何とかなりますが、10年以上使用して行くうちに買い替えが必要となって来るのです」
〝個人が使うんですから 個人で買ったらどうですかぁ〟
「入学式・卒業式・体育祭 その他 学校行事に必要不可欠なクラブなので、楽器そのものが学校の備品であって 何ら問題無いかと思われます ってか、皆さんに良い演奏を聴いて頂く為にも必要な経費です」
こんな事を早口でまくし立てるので
最早 炎上寸前だ
何かと槍玉に遭いがちな吹奏楽部だが
その必要性は生徒達の殆んどが理解してくれているので、揉めても 結局 多数決を取れば
多少の減額はあっても 吹奏楽部の予算の殆んどが承認されることになる
茜は
矢継ぎ早に出される質問に
的確に返答する昌に
〝私達の部長って凄いんだぁ～～〟と
尊敬の眼差しを送っていた
そんなこんなで
今年も無事
予算の殆んどの承認を得ることができた
無事 予算委員会を終え
仲間たちと談笑しながら帰る昌を
茜達 一年生は
尊敬の表情で見送っていた
画像と話の展開は一切関係ありません
団体・出演者の関係、実態等
全て作者の妄想です。悪しからず
画像を拝借致しました(｀_´)ゞサンクス