薫子は
ピアニストとして音大を卒業し渡仏したが
そこで指を壊してしまい
演奏家としての夢が断たれてしまった
しかし 実績と人望を買われ
母校の音大で
講師として既に活躍していた
美人でまだ若く 教え方も上手いと評判で
TV番組での公開レッスンも任される程だった
そんな薫子の勤務する音大に
充が入学して来た
専攻はヴァイオリン
ピアノも充分
プロとして通用する腕前だったが
充が選んだのはヴァイオリンだった
入学するや否や
充は注目の存在だった
追っ掛けまで出現し
ファンクラブもどきの団体まで
出て来る始末だった
既にプロとしても少しずつ活動していたので
大学を休むことも有ったが
それでもスケジュールをどうやって調べるのか
充が登校する日には
朝からキャンパスが華やいでいた
薫子はもちろん 充を知っていた
しかし
充と自分は10歳違う訳だし
あくまでも 自分の充を見る目は
教師として以外の何者でも無い……
と 思っていた
充は
大学は特待生であったので授業料はいらず
少しずつではあるがプロ活動もしていたので
パトロンからの援助はもはや必要無かった
充は何度かパトロンが誰なのか調べてみたが
送られて来た
亡くなった父親名義のキャッシュカードに
お金が振り込まれていただけで
銀行に問い合わせてみても
何のパトロンに関する繋がりも
発見することは出来なかった
ただ この度
充が入学した大学の所在する街の支店から
何回か振り込まれており
この大学の関係者か
この街の住民か……
それもあって
数ある音大の中から
この大学への進学を決めたのだ
事実 充の通う大学からは
既に多くの芸術家を輩出しており
どの学科も活気に満ちている
とかく自分の学科以外の輩との交流は
疎遠になりがちだが
校内だけで無く あらゆる内外、大小演奏会で
共演し合う事で
音楽について話し合い
そして競い合い
技術を高め合い
大学自体が一つの楽団の様で
充も魅力を感じていたのだ
そんな大学の近くにいる人だから
こんな自分に援助をしてくれたのだろう
と、充は考えた
大学には大きく7つの演奏会がある
キャンパス内の大ホールでは
新入生歓迎
秋の学園祭
そして卒業演奏会
学外のホールでは 例えば
東京芸術劇場
新国立劇場
サントリーホール
ピアノ・声楽・オーケストラ・吹奏楽
それぞれの定期演奏会
そして小ホールでの
学科ごと 、サークルごと
他校とのコラボ演奏会などを含めると
毎日の様に何処かで演奏会が開かれている
音楽好きにはたまらない世界だ
充の様なヴァイオリン科では
最高学年の秋の学園祭に
オーケストラを従えての奏者に
選ばれる事になっている
コンチェルト(協奏曲)だ
画像と話の展開は一切関係ありません
団体・出演者の関係、実態等
全て作者の妄想です。悪しからず(`_´)ゞ
画像を拝借致しました(^^)サンクス