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……


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貴が私の家に大きな鞄を二つ持ってきた



疲れてるね?大丈夫?

 

貴は何日も寝ていないとだけ言って

ソファーに座って目をつぶった



瑠美になにが出来る?
 


私は貴の前でしゃがみこみ

貴の顔を見上げた…

貴は疲れた顔で私を見て笑いながら

そっと両手で私の顔を包み込み

そのまま手を首の後ろに回して私の顔を

自分自身の体に引き寄せた



今日はダメ…我慢できない



と私の耳元で囁いた


その瞬間…貴は私を強く抱き締めて

ソファーに倒れ込むように

私の上にゆっくりと覆い被さって

もう一度優しく貴は私を抱き締めた



俺…本気でお前好きだよ…



いつも見る貴ではなく男の顔をした貴に

私は少し動揺したけど…

私の指は貴の背中を抱き締め返していた



男の人に抱き締められるとも

男の人とこんなシーンを迎えることも

初めてじゃないくせに

私の心臓は恥ずかしくなるくらい

何度も何度も大きく鼓動を鳴らした



どんなときも私の側でいてくれた貴に

私はいつの間にか親近感を感じていた

いくら近い距離にいても決して

男と女になろうとしない貴が好きだった

 

以前、抱き締められて



俺のところにこいょ…



と言われてから結構な時間がたっている

男と女になろうとしない貴…

前の男を忘れられない私の気持ちを多分

貴はわかっていたんだと思う



でも今日の貴は違う

そんな感情や理性さえも抑えきれずに

自分自身の気持ちだけをぶつけてきていた



いつまで待てばいい…?

いつになったら俺を受け入れてくれる?

 

そう言いながら貴は私を抱き締めて

貴は私に初めてキスをした



このまますすんでもいいのかな…?



私の心の声が少しブレーキをかける


マサの顔が瞼の裏で笑っている

マサの声が耳の奥で囁いている

でも

マサの温もりだけが…思い出せない…



いま現実に私の体に伝わる温もりだけが

私の記憶に残る

たったひとつの温もりだった…


温かい貴の唇…

いつも側にある貴のシャツのにおい…

安心させてくれる貴のハスキーな声…

そして自分のことを必要としてくれている

貴の存在に自然と心が溶けていった



こんな女やけど…



私は胸が熱くなって言葉にならなかった

そんな姿を見て 



俺がお前を守るょ……



と、もう一度抱き締めてキスをした



私だけがもたれられる胸

私だけを抱き締めてくれる腕

私だけを見つめてくれる眼差し



ありがとう…



貴を抱き締め返し私も貴にキスをした…



カラカラに渇いた私の心に

きれいな水がタップリと注がれる

音が聞こえたような気がした…





































































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今から取りに行っていい…?



電話向こうの貴は少し疲れてるな…?

そう思いながらも声に出さずに耳を傾ける



貴はあの頃と全く変わらず

私の近くにいてくれる唯一の男だった



家に来る?



貴は車に乗ったのか…ナビの起動の音が

受話器の後ろで鳴っている



俺…サブくなってるゎ結構



らしくもなく落ち込んだ声で貴が話した



サブくなった?なんでぇ?



私の眠たかった目がパッチリと開いた



売った事件もんの車で事件起こして

売った相手と一緒にその車も

 警察に持ってかれたって…

俺の指紋ガッツリでるゎ…



この頃の貴は兄貴分と一緒に

高級車だけを狙う窃盗団だった



毎日のように夜出掛けては

高級車だけを狙っていた



多い日なら1日2~3台を手に入れていた



手口は聞かなかったけど現場に

知らずについていったときは

ものの2~3分でパーキングから

スーーっと出てきたので



預けてある車を取りに行くから…



の言葉に疑う余地もなかった


私にもスカイラインの新型を

プレゼントしてくれていたし

鞄の中にナンバープレートが

沢山入っていたので私はスッカリ



俺…車屋してる



の言葉を信じていた


ナンバープレートを作る姿を見て

ナンバープレートも車屋さんが

作っていると思い込んでいた…


そんなブラックな世界を知らなかったし

そんなブラックな世界があることさえ


知らなかった



私の頭の中は真っ白と言うくらい

ブラックな世界に関して無知だった…






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私には三つ上の兄貴がいて

その兄貴は大阪西成でも1本で成り立つ

暴力団事務所の若頭をしていた



『喧嘩とクスリ』といわれるくらいで

大阪ではヤクザにも煙たがられるほどの

気の荒い男の人の集団だった



その組で『クスリのシマ』をまとめながら

揉め事があれば一番に道具を握って走り

面倒くさい程…ヤカラを飛ばす男が



私の実の兄貴…ノブだった




兄貴とは小学校の頃に両親の離婚で

離れ離れになりお互いに別々の場所で

お互いに自分なりに大人になった




中学校の頃に会ったのは数えるほどで

大人になってからも会う回数は

 変わらなかった



会わなかった?会いたくなかった?



それはよくわからない…

でも

なぜかわからないけど…私は兄貴が

誰よりも誰よりも苦手で仕方がなかった

 

出来るだけ会わないようにしよう…



電話にも出ないようにした

なのに…

兄貴は必要以上に私のする事なす事全てに

口を挟むので私にしたら本当に本当に…



面倒くさい兄貴でしかなかった



着る服…髪型…車の種類…仕事の事…


挙げ句のはてには…男の事にも口を挟んだ

なので私は男が出来ても

兄貴にはばれないように隠すようになった




ましてヤクザをしている男なんか…

絶対にバレる事が出来なかった…



ヤクザだとバレたら…きっと



その男の事務所に乗り込んで揉め事になる

そんな

光景が頭の中でながれるのさえ嫌だった



Sを始めてからは絶対に会うことは

自分の中で許せなかった…


その理由…?


兄貴の知り合いの人からSを

譲ってもらっていたから…

しかも同じ組織の売り子から…


バレたら殺されるな?

 

冷や冷やしながら西成の通りを歩いた…

兄貴の白のベンツS600ロリンザに

見つからないように
















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す国道26号線を堺からミナミ方向に走り

『花園』の交差点を曲がると

新今宮の駅やあいりんセンターがあり

その周りには日雇い作業員の人や

リアカーを押す人…地面に寝転んでいる人

が溢れている。

さ⭕らマンションや玉出を過ぎると




大きな交差点『太子』があった…




大きな交差点の周りには

作業服屋やパチンコ屋

ビジネスホテルが何件も所狭しと

寄せ合って立っていた



その『太子』の交差点を右折すると

ガヤガヤしている空気から

一瞬にして冷たい空気に変化した

そこにはメイン道路と呼ばれ

『立ちんぼ』と呼ばれる男の人が

数ヵ所に立って指を1本立てている姿が

日常のような風景だった








その『立ちンボ』の特徴は

ほとんどと言うほど

シャカシャカのスポーツウェアで

帽子を深くかぶって携帯を手に持っている



何も分からない私にでも

『立ちンボ』

の存在を感じ取れる雰囲気だった


少し怖いな…


当時の私は素直にそう思っていた



そして

この場所がこの先の

自分を受け入れてくれる街になるなんて

この頃の私には

気づくはずもなかった…


知らない街…

未来の自分を受け入れてくれる街…

それがここにあった…























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自分の部屋は換気せんの音しか

聞こえてこなかった…



一人の時間にも慣れてきて

寂しさも薄れつつあった…




机の上にある『キー』を見つめる



いれようかな…



私の腕には複数の紫色の斑点があった

体が重たくてなにもする気にならない…



机の袋にSの残りがあるのを見つけた




その瞬間…胃なのか腸なのか

とりあえずお腹の辺りに力が入る



どうなってもいいゃ…



そう思いながらも1か月以上が過ぎた



もぅ夜も昼もわからなくなっていたけど

私にはもぅ夜も昼も関係なかった



何もわかりたくない

何も思い出したくもない



Sだけが私のその思いを叶えてくれていた

Sだけが私の見方になってくれた



このまま死ねればいいのに…



鏡に映る私はもぅ昔の私ではなかった…































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帰ったとぉー?



数時間してからかかったマサからの電話に

耳を傾ける…



あんな喧嘩を聞かされて…

自分の情けなさに打ちのめされて

腹が立つのか悲しいのか

わからなくなっていた



マサの言葉に何て答えたらいいのかさえ

自分の頭の中ではもぅ考えられなかった



言ってやりたいことは山ほどあるけど

いまの気持ちを言ってしまったら…

きっと…



もぅ2度とマサの声が聞けなくなる



そう考えただけで

私の唇は動くことも開けることも

出来なくなっていた



お金…渡すの遅くなったごめん…




謝る必要なんて全くないのに

性格上…謝ってしまう自分に

ため息が出る…



寝転んで部屋の天井を見つめながら

タバコの煙を吐き目をつぶる…

ここで謝るから相手にドンドン

突っ込んでこられるって

わかっているのに…



でも…



喧嘩になるくらいなら自分が我慢して

何もなかったかのように

丸く収まってくれればその方が良い…



いつもと変わらない関係が保たれるなら

別に自分のプライドなんていらなかった



マサは一瞬戸惑ったような声で聞いてきた



怒ってるょね?



怒らないわけないでしょ…?

あの女はあんたの何で

何であんたの電話にでて

何であんたの横で寝てるわけ?




そんな言葉を頭のなかで吐き出しながら

私の口は気持ちと反対の事を話してた…




遊べる男の方が魅力的だょ(笑)

モテない男よりモテる方がいいょ

 


はぁーーーーー?

自分で言った言葉に思わず突っ込んだ



そんなわけないじゃん…?

自分だけの事を見てくれる男の方が

良いに決まってるじゃん…?



と心のなかで怒鳴りながら


顔で笑ってみた



瑠美のそういうところが好きっちゃ!



その言葉が



瑠美のそういう都合のいいところが

好きっちゃー…



にしか聞こえなかった…



都合のいい女なんて…やめなきゃ




お金を渡した瞬間に

初めてその気持ちが心を染めた…










































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福岡についたのは

 朝明るくなってからだった

博多へ向かうキヨくんのトラックを

見送りながら明るくなった空を見た


やっとついた…








何度も何度も来たかった街

会いたい人が生まれ育った街…

そして私が生きていきたかった街…

目に映るものすべてが愛しく思えた


この風景をマサは見て大きくなって

この空気を吸ってマサは生きてきた…


同じ景色を見て同じ空気を吸えるだけで

マサに近づけた気がして嬉しくなる


早く逢いたい…


そう思い鞄から携帯を取りだし発信の

一番上にある番号を確認して

発信ボタンを押した…

プルルルル…プルルルル…


コールはするけれどマサは出ない


マジで…?
 

切りボタンを押してもう一度

同じことを繰り返す

何度かコールした後ガチャっと

いう音とともに

女の人のかすれた声が聞こえた


もしもし…?


その声が聞こえた瞬間…私の鼓動は

息が吸いにくくなるくらいの激しさで

早く…そして大きく跳ね出した

顔が次第に赤く染まっていくことや

携帯を持つ手がガクガクと震えること

奥歯を噛み締める顎の筋肉の動きまでもが

手に取るように伝わる


大阪から電話だょ…変わってマサ


女の人が気だるそうに誰かに言った…


布団の擦れる音がして電話の向こうで

 『何でお前でてんの…?』と

小さく聞こえる…

『出ちゃダメなん?』と女の言い返す声…

『私ムカつくんだけど…』と続けて女

『もぅお前だまってろや…わかるやろ?』

と男…

『ハッキリ言ったら良いでしょ?』と女

『ちょっと待てや』と追いかける音…


永遠に続く言い争い…


ばつ悪いじゃん…


自分の惚れてる男と…その女の

言い合いを聞きながら私は電話を切った



























 









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どれくらいの時間眠ったんだろぅ…

景色は少し明るくなっていた…








久し振りに温かい空間に包まれて

穏やかな気持ちで目が覚めた…

誰かがそばにいてくれている

なんとも言えない空気が素直に嬉しかった



いつも淋しい気持ちで目覚める朝を

必死で思い出さないように…

もう一度深く深く目を閉じた…



起きたんか?

よう揺れるから寝られへんやろ?



そんなキヨくんの言葉を

私は聞こえない振りをした


この空間から離れるのが嫌だった…

私はまた静かに深く目を閉じた



常に体は横や縦に揺られていたけれど

全く不愉快な感じではなく

それ以上に誰かの温もりで

守られてるとい安心感で泣きそうになった



誰に会いにくいと思う…?



運転しながら缶コーヒーを飲む

キヨくんの顔は少しだけ疲れていた…
  


男やろ…?



顔は前を向いたままキヨくんは答えた



アウトー(笑)



私は親指を立てながら右目でウィンクして



私をフって…私をオモチャにして

おまけにカモにしてくれている

ひどいひどーーーい

昔の男に会いに行きまーす~(笑)

 

と自慢気に答えた…



この言葉は私の本心だった…


気づいているのに気づきたくない

本当の答え…

わかっててもわかっちゃいけない

本当の答え…


もう決していい方向にも進まない…

もぅ終わりが見えている関係だってことも



全部全部わかっている本当の答えを…

私は笑いながら声に出していた…
 


バカな女でしょ…(笑)




その言葉と裏腹に目から涙が

ポロポロポロ…とこぼれ落ちた



何でも聞いたるから話してみ?



キヨくんが私の目を見ながら笑いかけた


小さな頃…泣く私をそっと抱き上げ



お父さんおるから大丈夫やで瑠美…



と言って笑ってくれたお父さんの顔と

キヨくんの顔がダブって見えた…


何でこんなに流れるんだろうというくらい

大きな大きな涙が頬を

弾いては顎の先まで零れていった…




















































                                         
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足…気を付けやー足打つなよー?



トレーラーのお兄ちゃんは

優しい顔で笑いかけてくれた
 



襲わん自信はないでー知らんぞぉー?




と笑って言いながら左手でギアを倒すと

エンジンの音が低くなり

車体全体がゴゴゴゴゴ…っと唸り出した



ちゃんと座っとかな落ちるで~(笑)

怖わないか?いけるかー?



前を見たり私を見たりギアを触ったりと

キヨくんは本当に優しかった


その反面…私は緊張と少しの不安で

手のひらや足の膝の裏は

汗がながれているくらいの緊張感…


キヨくんにバレないように笑って見せるが




怖いんやったら初めから乗んなょアホ(笑)

後5年したら襲うけど

今日はなんもせんから安心せえゃボケ(笑)




とキヨくんは私に言いいながら



後5年したら今日のお礼ちゃんとしてや?




っと冗談ぽく笑った…



こんな優しい人もいてるんや…



と思い私がキヨくんの方を見ると

キヨくんは



何じっと見てんねん…食うてまうぞ(笑)



っと言いながら私にタバコの煙を吐いた…








安心と共にすこし眠気を感じた…






































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夜の街はいつもと変わらず

キラキラしていた





私は高速道路の入り口に向かっていた


バックミラーで前髪を直したり

アイラインやリップの乱れを

気にしながら慌ただしくしている…

 でも…なぜかいつもとは違う

少し緊張気味で紅潮した顔をした私


ヒッチハイクなんか出来るかな?


はじめての行動に不安がよぎる

なのにそんな不安の中…気持ちだけが

 九州に進むばかりだった


その前にこの車どこに止めよう…


捨てても良いくらいの

気持ちになりながらも

高速道路の入り口へ車を走らせた…


殺されたりしないよね…(笑)


そう強く自分に言い聞かせた…


























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