笑顔を教えてくれたのは王子だった

いつまでも悲しい顔の姫に王子は
僕を笑顔にする為、自分から笑うんだ。

笑わない王子が笑うようになったのは
姫のおかげだって何度もなく
スタッフに聞かされていた。

僕は何にもない力なのに
王子は僕が近くにいるだけで喜び
嬉しそうに笑う。

それでも、僕は王子ではなく
彼に恋をしたんだーー…

彼が僕が笑うのを喜んでくれるなら…
姫として笑えば…それは作り笑いじゃない
好きな人への嬉しい笑顔になる。

彼は僕の肩に手を回し
左でこ当たりに顔が触れるくらいまで
近づき、タイマーで写真を取った。

「キル…」

彼はそう言いながら眼鏡をかけなおすと
泣くような仕草で顔を手で隠す。
笑った事に恥ずかしくて、声も出ない事を
よそに一旦離れた彼だが
また顔が近づいてくるのだ。

「笑ってくれたご褒美やるっ」

え?

彼がそう言うと左目あたりにぷるんとした
柔らかいものが当たる感触がした。
ーーキスだ。

「俺の猫ピン、キルにやるよ。」

猫ピンとは学ランでいう第2ボタン。
黒猫中学はネクタイであり
そのネクタイの根元に学校の紋章である
猫ピンをつける義務があるのだ。

だから彼から猫ピンを貰った時吃驚した。
サクラじゃなくて、僕に?

それから姫の撮影の為事務所に行くけれど
ぽえーとキスされた事が頭に残り回らない

「キルっ、卒業おめでと」

スタッフに聞こえないように
王子が耳元で囁く。

「やっぱ、お祝い何かやんねーとな?」

「お祝い?なんの?」

「なんのって?キルの年齢知ってんの
俺だけだぜ?決まってんじゃん」

椅子に座る僕に王子はそう言いながら
満面の笑みで近づき…

「中学卒業のお祝い」

右目当たりにキスをした。

$闇を照らす月夜に導かれて-卒業記念

け、ケイ君と逆ー!?

いつも、いろんなとこにキスしてくる
けど、今日はなんだか特別のような
気分だった。

つづく