初めて“あいつ”と出会った
大きな大きな木。

やっぱりあいつはその木の枝に
偉そうに座ってハートをビンに集めている。

「俺の邪魔ばかり、する」

「名前くらい教えてくれたって
いいじゃないっ!!」

上を見上げ空音がそう言うと
彼は立ち上がってトンッと枝を蹴り
空音の目の前へ一瞬で降りる。

「ひゃっ」

吃驚して、思わず後ずさりをしてしまう。

彼はふいっと後ろを向き背中を向け
木が植えられている幹へ歩いていく。

初めてまじかで見た気がする。

黒く怪しい服に青く冷めたような髪
まるで全てを拒否するかのような色だった。

「それに、そのハートだって…」

ビンに入ってるから、あの言葉は
通じるわけでもない。

彼は右手で幹にふと触る。

そして口が開いた。

「お前には…関係ない。」

その言葉を言った瞬間
遠くからまがまがしい気を感じ
振り向いてみると遠くで子供の男の子の
胸からハートが取り出されていく。

「あー、もう!!
どうして、そんな事するの!?」

恋なんて愛なんて…
なくなってしまえばいい…

一瞬だけど、あの男の子の姿を見ると
何か懐かしい感じに見えた。

男がクスリと笑った気がした。

「俺の名は朱音 しゅおん
昔、君に裏切られた男の名前だ。」

っ!?

裏切られ…た?
こいつが私に?

記憶がない…
だって、私は今の姿のこいつしか
知らない…なのに、こいつは私の
知らない記憶をもっている。

「汚れた心は俺の手の元へ…」

私が混乱してる間男の子から
盗んだ心を回収しようとしていた。

「そんなの…駄目っ」

佳奈と同じような事は起こしちゃ駄目。

愛とか恋とか必要な感情
失ってしまったら
ツライ時も悲しい時も嬉しい時もない。

無感情なんて許さない。

「朱音…って言ったよね、あんた
もしかして、心を盗もうとするのって」

こいつの心を癒やしてあげようとかの
以前に彼の心を傷つけたのは私で…
だから彼はっ

「私に止めて欲しいの?」

「うるさいっ!!」

彼の腕から黒くまがまがしい気が流れる。

ビンに入っていた、いくつもの心が
黒く染め上げりビンから飛び出る。

心は襲うように空音を追いかける。

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「この黒いハートは気をつけて
今までの心と桁違いの力よ。
それでもいいなら、心に叫びなさいっ」

頭の中に響く青い精霊ジュバの声と共に
空音はメイドチェンジした。

「貴方の心、私がご奉仕しますっ」

つづく