ゆっくりと目を開けるないなや
キルは目を大きく開け、吃驚していた。
それは、そうである。
今にも自分の口にケイの口が吸い込まれそうに
彼の顔がどんどん近づくのである。
それに伴い、自分の心臓音も大きくなる。
近づいてくる彼を無言で見つめるしかないのだ。

その時、ハッと彼がキルが目を開けていることに
気がつく。
恥ずかしさが混じりつい、大声で言ってしまう。

「お前…起きてるなら、言えよ!!」

そして目線から離れるように
そっぽ向きこう言う。
彼女も体を起こす。

「す、寸前でお、起きるとはな!
めちゃくちゃ水飲んでたくせに…」

顔を見せないようにしてる彼。
さっきまでの彼の目をつむった顔が
今でも頭の中に残る。

もし、あのまま気づかなかったら…

なんて恥ずかしいっ。頭を抱えブルブルと
左右に揺らす。

「じゃあ、キルでいいよな。」

「え?」

「…いや、だから。日本人も居るかも
知れないから姫って呼んだ方がいいかって。」

そうだ、今、僕とケイ君は海のそばにある
お店で休憩中なんだった。
ケイ君は王子と間違うくらい似てる。
王子もケイ君と同じくらいーー…
だから、今は姫と王子。そう呼ぶの。

「じゃ決まりな。俺のこともー……」

彼はニコリと笑顔で言うが言い切る前に
キルの表情が可笑しい。
俺の後ろから誰かが来たらしく
俺も気になり、向いてみると

「王子。私のこと、覚えてる?」

「お前はー…」

彼女の姿に俺は唖然とした。
彼女の姿はまるで、あの葬式で見た
俺は一目ぼれした子と同じ姿。
肩まである髪に両側に白いリボン

「私はヒメカ。
あの時からずっと、好きだったの…」

そして彼女はケイの肩に手を乗せる。
胸騒ぎが止まらない。
あの日、あの時の女の子はキルじゃない?
ずっとあの子を追って来たからこそ
俺はどうすればーー
ケイが悩む間もなくヒメカはケイにキスをした。
ーーキルがいる目の前で

つづく
自画自賛漫画「僕の世界」7巻34話より