旅館について、そろそろ消灯時間。
でも生徒は廊下をぶらぶら。
「キルー明日、どうする?
私としてはルルスと行きたいんだけど?」
自由行動は2人1組。
キルはナナと一緒である。
そんなナナがルルスと行きたいと言ってるということは
ルルスにも相手がいる。
:・・・それって、ブルーガ君がいるペア
「どっちでもいいけど。」
キルとしてはイヤとは言えない言葉である。
「じゃ、ルルスに言ってくるよ!」
その時、ちょうどよくケイが登場した。
「あ、いたいた」
「あ。」
「ルルスが明日一緒に行動取らないかって。」
「あー、それ?今、話してたとこだよ?
キルもいいって!」
キルは照れながらもコクンとうなずいた。
「そっか!」
ケイはそういうと、口笛を吹きながら、嬉しそうに帰っていった。
:イジられる僕がいるのに、なんで?どうして?
それから、ナナと一緒に部屋に戻る。
「キルー、サクラも呼んだんだけど居なかったよ?」
:そういえば、昼間も・・・
もし、一緒に行動することになったら・・・
去年の鎌倉と一緒・・・仲良しな2人を見ることしか出来ない。
ズキン、ズキンと胸が痛くなる。
サクラは4組。別クラスである。
しかし、去年までは仲良く話してたのに
なんだか、サクラの様子がおかしくなっているみたいだった。
その頃、ケイはルルスと合流し、
自分の部屋へ戻って行く途中だった。
「明日が楽しみだな!」
「だなっ」
にやにや、にんまり、笑顔が止まらない、ケイ。
そんな表情を見て、友達思いのルルスも嬉しそうだった。
「あ、ケイ!」
マイが発見したようにケイに声をかける。
「明日、一緒に行かない?」
「あ・・・わりぃ、俺さ・・・・」
最後まで言いかけようとしたとたん、ルルスが
ガシっと肩に手を当てる。
「俺らさ、ナナペアと一緒に行くことにしたからさ」
「それって、ギルドがいるペア・・」
「そうだな」
「・・・やっぱり、ケイってギルドのこと好きなんだ。」
自分でそう言って、悲しくなるマイ。
:俺がキルのこと、好き?
ケイは少し、ごまかすように笑い、言い訳するようにこう言った。
「冗談だろ!誰があんなバカ女!!
俺がいなきゃ、何にも出来なくて、俺に頼るくせに
ちっとも気づいてねーじゃんか!?本当、ムカツク・・・っ!!」
「・・・にぶいのケイって?」
マイはケイに聞えないようにルルスにそう言った。
「ああ。」
ルルスは呆れるようにそう返す。
:それに、アイツには先輩がいる。彼氏がいる・・・・
だ、だから・・・この想いは違う、違うんだっ!
「好きって思ったって・・・アイツは・・・・っ!!
一生俺のモノにはならないっ!!」
歯を食いしばるように周りに居る皆に聞えるような
大声で叫んだせいか、ちょうど曲がり角を曲がり、
ケイの方へ歩いてくるキルがケイの眼に止まった。
しかし、キルの足はそのケイの声で立ち止まっていた。
「キ、キル・・・」
:・・・ブルーガ君、好きな人居たんだ
「いや、今のはその・・・あの・・・っ」
ケイは言い訳を探すようにするのだが、キルは
それをくつがえすように悲しく、こう言った。
「なんで、僕にそういうの?」
どうして、言い訳するような言葉を探そうとするの?
キルには理解が出来なかった。
「なっ・・・」
:叶わないのは自分が一番分かってる。
遠くから見てるだけで十分。それだけで満足だから・・・・
求めちゃいけないって分かってるから・・・
キルはケイの前を素通りし、売店へ向かっていった。
キルの姿が見えなくなった瞬間、周りに居たガヤが
騒ぎ出した。
「振られてやんの~、あのモテモテのケイがね~」
そんな声が飛び交う。
ケイはガヤの声にイラついて、つい怒鳴りあげる。
「告ってねーし!だから、振られてもねーしっ!!
そもそも好きじゃーー・・・」
「先輩に焼いてたくせに~。」
「・・・は?やくってなんだよ?」
ケイのその言葉に皆がドドっと倒れる。
:駄目だ、鈍すぎる・・・