そして当日。
キルはまず、事務所へ足を運んだ。
王子はいつも通り社長室のすぐ隣で
のんびりとパソコンをイジくっていた。
「王子、これ・・・プロフィール見て、その・・・
クッキーなんだけど。」
「・・・これくれる為にいちいち事務所に来たわけ?」
そう、姫としての仕事は今日はないのだが、
王子の反応がなんだか変だった。
いつもなら喜ぶはずなのに・・・・
その反応にキルは少し戸惑った。
「と、友達だもん!!・・・じゃ!!」
キルはクッキーが入った袋を近くに置き、
そう言って、事務所を出た。
:昨日作ってた、クッキーか。
同じので済まそうって訳か・・・・っ
それから、数時間後。
空も暗くなった頃、ケイが家に帰って来た。
「で?おまえは何をくれるんだ?」
直球だ。ケイは楽しみにしていたのだが・・・
正直言うと、王子と同じなんじゃないのかって
ずっと思っていた。
:えっと・・・
「これ・・・」
キルがそう言いながら紙袋を渡す。
ケイはちらりとキルの顔を見ながら中を開ける。
そこにはフェルトで作られた猫のマスコットが入っていた。
王子にあげたクッキーではなく、まったく別物だった。
「ふーん・・・。」
反応が薄い。
「手作り?」
そのケイの言葉にキルはコクンと、うなづく。
間に間に、キルはちらりと時計を気にしていた。
ケイの誕生日=セイと約束の時間なのだ。
「ありがとな、キル。大切にする。」
ケイはニコリと微笑んだ。
そんな微笑にキルはすぐに蛸みたいに真っ赤になる。
「つーか・・・、お前さ、さっきから
時計気にしすぎじゃねーの・・・?」
「え!えっと・・・・
スターマジックのコンサート行くから。
アレク兄から貰った、アレ・・・」
「・・・誰と?」
そう目の前で渡されたのは記憶に新しい。
2枚あることは分かってるのだ。
しかし、彼女は無言だった。
その沈黙にケイはすぐに分かってしまう。
ーー・・・相手は先輩なのだと。
「おまえっ!さっさと行けよ!先輩のトコ!
嫌われてもしらねーからなっ!!」
怒鳴るような感じに言うケイにキルはビクついた。
おそる、おそる、キルはゆっくりと部屋から出てった。
:ブルーガ君、僕は君にだけは嫌われたくないよ・・・
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