あの箱に入っていた美味しい美味しいチョコ。
有名スイーツ店。
社長に道を教えてもらい、キルは1人で探す。
たどり着いた先はスイーツフォルテ。
赤レンガ状の壁になんだか古そうな1軒や。
:ここかー・・・
カランコロン。
キルはゆっくりとドアを引く。
そこに居たのは
「いらっしゃーー・・・あ。」
あのセイだった。
「知り合いか?セイ?」
遠くでそんな声が聞える。ここの店長だろうか?
黒い瞳にオレンジ頭・・そしてきみょうな柄のバンダナをつけている。
「ああ。写真部後輩のギルドだよ。」
セイはキルを紹介するとニコリと笑った。
セイの言葉に店長は安心した様子で口にする。
「後輩なら安心だな。」
「それ、どういう意味だよ!ジジィ!」
彼はそう言うと深くため息をする。
「そのまんまだよ。ほら、他の席みてごらん?」
キルが周りを見てみると
そこは広いようで甘い香りがただよう店内。
:ーー・・僕以外、色ぽい年上女ばっかり。コレは一体?
そういえばナナが・・・「お金で抱いてるんだって」って言ってた。
ここにいる皆、そうなのかな?
「ほとんどセイ目当てなんだ。
有名になったのもセイの笑顔のおかげかな。」
:笑顔ーー・・・
キルはちらりとセイが居る客の方へ向く。
彼は部活の時と違う笑顔をしていた。
「ところでなにを食べるか決めたかい?」
:えっ
「チョコレイトケーキっ」
キルはチョコが大好きなのだ。
:んーー美味い♪幸せーv
その笑顔にセイはキルの方へ近づき、こう言った。
「ギルドも・・・チョコ好きなの?」
キルはこくりとうなずいた。するとセイは隣の席にすわった。
「姫も・・・なんだよね。」
:ギクッ
「プロフィールとか公開してないけどさ。」
そう・・・王子と姫はプロフィール非公開である。
年齢、誕生日、本名、過去ーー・・全てが分からない。
「ファースト写真集に書いてあったんだよね。
チョコ好きだってさ。本当、美味そうに食べてる所
姫そっくり。」
:うっ
「そーだ、ギルド。俺と同じ高校来ない?」
:はい?
「来れたらでいいけど。」
:でもーー・・僕。
それから数日後。また、風の噂を聞いた。
「ねぇ、聞いたー?ブルーグ先輩ってあのフォルテで働いてんだって」
「見に行こうー」
「って中学生バイト禁止じゃなかった?」
職員室前に居るとセイがそこから出てきた。
「たく・・・。」
:先輩!?
セイはキルに気づくとキルの方に歩いてきた。
「ギルド・・ちょっといいか?」
セイは話をした。なぜ、あのフォルテにいるのか・・・
「バイトじゃないんだ。ただの店の手伝い・・・・かな。
あの店の寮で暮らしてるしねーー・・。
いや、暮らさなきゃいけないんだ。俺・・・捨て子なんだから。
両親の顔なんて知らないんだ。」
:え・・?
「あの店の前にいてさ。あの店長に拾われたんだ。
・・・このリボンさ。そのかごの中に入っててさ。
父親と思ってたヤツが・・・育ての親だぜ?笑っちゃうよな」
左だけ黒い髪と黄色い髪の間にしばってあった赤いリボン。
それだけがたよりだった。
「・・・先輩。」
キルはそんな話を聞いて、ついしゃべりたくなった。
「僕も母親居ないから。」
「え?」
「僕をかばって死んだんだ・・・。」
幼稚だったあの頃ーー・・まだなにもわかってないあの頃。
キルの母ミレイはキルを追いかけ、かばい死んでしまった。
:顔を知らない俺よりも・・・・
「・・・・そ、そうなんだ。」
:目の前で死なれたほうが何倍も辛いよな・・・